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第4章 光と闇が混ざる時
第5話 青天の霹靂
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沈黙が長く続いた頃、エリアスはプリムローズの方を向くと本心を語りだしてくる。
「お嬢様の気持ちはわかります。
私を心から案じてるのも、ですが身代わりになっている方が気になって…。
それが、その方のお仕事なのは理解してます。
私は自分の存在が、ないのが嫌でたまりません」
エリアスの本心にプリムローズは、自分の考えをエリアスに押し付けていたのを知った。
彼は危険にさらされても、影に隠れたくないのだ。
「ごめんなさい。
エリアスの気持ちを考えなしで、強要してしまったようね。
これから、公爵様が話するけど王宮は安全ではないの。
それを聞いても貴方が王宮へ行きたいなら、私はなにも言わないわ」
プリムローズの意味深な発言に、王や王妃は怪訝な顔つきになる。
その後にパーレン伯爵令嬢とプリムローズのいざこざから、伯爵が公爵家に謝罪に出向いてからの話を全てした。
「侍従長が敵の陣営だった…。
ヴェント侯爵夫人が、ベルナドッテの娘。
すっかり、前侍従長の伯爵の娘御と思っていたのだ」
「裏で、そんな繋がりがあると誰が思うでしょう。
生まれたての赤子なら、それなりの物を出せば教会でうまく処理するのは可能です」
王妃は、自分に薬を盛られていた。
侍従長なら簡単に薬を渡すのも可能で、証拠も消すのもお手のもの。
「こんなにも長い間、余たちは騙されておったのか…」
信じ切っていた忠臣に、裏切られた衝撃は大きかった。
「エリアス、君をまだ王宮にあげるわけにはいかなくなった。
この国の闇が深い。
侍従長に、これからどんな顔を向ければよいのか。
今まで通りに、もう出来そうもない!」
「陛下、敵を欺かなくてはなりませんぞ。
あちらは、儂らがこのような話をしているのは存じません」
「ですが、パーレン伯爵は本当に私たちの味方になる気持ちがおありなのでしょうか?!」
プリムローズは、この先は一人でも味方が多い方が当たり前だが有利と思っていた。
「クラレンス公爵令嬢、兄上なら信用できる。
何故、罪を犯したのかは伺っておった。
エリアスの父と母が亡くなり、息子であるそなたが行方不明になった時も密かに会っていたのだ。
余はこの闇が明けた暁には、兄を許そうと思っている」
ヘイズ王は日差しを眩しそうに見つめ、苦悩と希望の入り交じるような眼差しをしておられた。
エリアスは、あれから黙りこくってしまっていた。
無理もない、いきなり王族だと次期ヘイズ王になるかもと言われれば頭の中が常人なら混乱する。
私は自分を失わない姿は立派だと感じ、彼には王になる素質を持っていると確信した。
公爵の屋敷に戻るなり、メリーが玄関先で大声を出した。
「おー、おー!
お嬢様、大変でございます!!
大旦那さまと大奥様とル、ブライアン様がヘイズに着きました。
2日後に、此方のヴァロの公爵邸に到着してしまいます」
「ヘッ、今はまだ12月末ではないわよ!?
冬休みまで半月以上あるわ!
現在は、ギリギリ12月前よ?!」
プリムローズは、メリーの報告に驚きながら近づく。
「これは、お嬢様宛のお手紙でございます」
急ぎメリーが渡すと、プリムローズは礼儀に無視して封をその場で切った。
目を左右横に下に、忙しそうに動かす。
読み終えると、大きなため息が後ろで置いていかれた4人にも聞こえていた。
「メリー、エテルネル国の未来は大丈夫かしら?
いくら嬉しいからといって、休みを2ヶ月間にする?!
通常は3週間よ。
こんなの、あり得ないわ」
メリーとプリムローズの話しに割って入ってきたギルが、ゲラゲラ笑って言うのだ。
「いいんじゃね。
それだけ、エテルネルは平和なんだ。
親父さまに困り事を相談すれば、きっと助言して頂けるぜ!」
呑気すぎるギルに、プリムローズは困り顔で諭す。
「何を言ってんのよ!
祖父母が知ったら、アルゴラから軍隊を借りて動かすわよ!
あの国は、戦いをしたくてウズウズしている。
好戦的な国民性なのよ」
プリムローズは額に手をあてて、天に向かい話すのである。
「【青天の霹靂】ですな。
来るとはわかっていたが、これは早い!
やはり、戦の神は凡人とはひと味違いますな!」
「青天の霹靂って…。
なんですか、教えて下さい」
スクード公爵の言葉に飛び付いた。
エリアスは、言葉の意味を知らず首を傾げる。
「晴天は青く晴れ渡った空で、霹靂は雷鳴のことよ。
よく晴れていた空に、突然雷鳴が生じる。
突然の事で驚く出来事の喩え言葉なの」
公爵夫人ニーナは、エリアスに目線を一緒に合わせて詳しく説明する。
「教えて下さり、有り難うございました。
いろんな言葉があるんですね。
船に乗っていた時も、経験がありました。
晴れていたと思ったら、突然雷が鳴り響いて嵐になりましたよ。
思い出すと、なんか懐かしいなぁ」
そう話すエリアスには、あの船の暮らしがずっと昔に思えた。
彼って側にいるだけで、癒される雰囲気の持ち主よね。
プリムローズの心は、先程の霹靂から晴天に彼によって変わるのであった。
「お嬢様の気持ちはわかります。
私を心から案じてるのも、ですが身代わりになっている方が気になって…。
それが、その方のお仕事なのは理解してます。
私は自分の存在が、ないのが嫌でたまりません」
エリアスの本心にプリムローズは、自分の考えをエリアスに押し付けていたのを知った。
彼は危険にさらされても、影に隠れたくないのだ。
「ごめんなさい。
エリアスの気持ちを考えなしで、強要してしまったようね。
これから、公爵様が話するけど王宮は安全ではないの。
それを聞いても貴方が王宮へ行きたいなら、私はなにも言わないわ」
プリムローズの意味深な発言に、王や王妃は怪訝な顔つきになる。
その後にパーレン伯爵令嬢とプリムローズのいざこざから、伯爵が公爵家に謝罪に出向いてからの話を全てした。
「侍従長が敵の陣営だった…。
ヴェント侯爵夫人が、ベルナドッテの娘。
すっかり、前侍従長の伯爵の娘御と思っていたのだ」
「裏で、そんな繋がりがあると誰が思うでしょう。
生まれたての赤子なら、それなりの物を出せば教会でうまく処理するのは可能です」
王妃は、自分に薬を盛られていた。
侍従長なら簡単に薬を渡すのも可能で、証拠も消すのもお手のもの。
「こんなにも長い間、余たちは騙されておったのか…」
信じ切っていた忠臣に、裏切られた衝撃は大きかった。
「エリアス、君をまだ王宮にあげるわけにはいかなくなった。
この国の闇が深い。
侍従長に、これからどんな顔を向ければよいのか。
今まで通りに、もう出来そうもない!」
「陛下、敵を欺かなくてはなりませんぞ。
あちらは、儂らがこのような話をしているのは存じません」
「ですが、パーレン伯爵は本当に私たちの味方になる気持ちがおありなのでしょうか?!」
プリムローズは、この先は一人でも味方が多い方が当たり前だが有利と思っていた。
「クラレンス公爵令嬢、兄上なら信用できる。
何故、罪を犯したのかは伺っておった。
エリアスの父と母が亡くなり、息子であるそなたが行方不明になった時も密かに会っていたのだ。
余はこの闇が明けた暁には、兄を許そうと思っている」
ヘイズ王は日差しを眩しそうに見つめ、苦悩と希望の入り交じるような眼差しをしておられた。
エリアスは、あれから黙りこくってしまっていた。
無理もない、いきなり王族だと次期ヘイズ王になるかもと言われれば頭の中が常人なら混乱する。
私は自分を失わない姿は立派だと感じ、彼には王になる素質を持っていると確信した。
公爵の屋敷に戻るなり、メリーが玄関先で大声を出した。
「おー、おー!
お嬢様、大変でございます!!
大旦那さまと大奥様とル、ブライアン様がヘイズに着きました。
2日後に、此方のヴァロの公爵邸に到着してしまいます」
「ヘッ、今はまだ12月末ではないわよ!?
冬休みまで半月以上あるわ!
現在は、ギリギリ12月前よ?!」
プリムローズは、メリーの報告に驚きながら近づく。
「これは、お嬢様宛のお手紙でございます」
急ぎメリーが渡すと、プリムローズは礼儀に無視して封をその場で切った。
目を左右横に下に、忙しそうに動かす。
読み終えると、大きなため息が後ろで置いていかれた4人にも聞こえていた。
「メリー、エテルネル国の未来は大丈夫かしら?
いくら嬉しいからといって、休みを2ヶ月間にする?!
通常は3週間よ。
こんなの、あり得ないわ」
メリーとプリムローズの話しに割って入ってきたギルが、ゲラゲラ笑って言うのだ。
「いいんじゃね。
それだけ、エテルネルは平和なんだ。
親父さまに困り事を相談すれば、きっと助言して頂けるぜ!」
呑気すぎるギルに、プリムローズは困り顔で諭す。
「何を言ってんのよ!
祖父母が知ったら、アルゴラから軍隊を借りて動かすわよ!
あの国は、戦いをしたくてウズウズしている。
好戦的な国民性なのよ」
プリムローズは額に手をあてて、天に向かい話すのである。
「【青天の霹靂】ですな。
来るとはわかっていたが、これは早い!
やはり、戦の神は凡人とはひと味違いますな!」
「青天の霹靂って…。
なんですか、教えて下さい」
スクード公爵の言葉に飛び付いた。
エリアスは、言葉の意味を知らず首を傾げる。
「晴天は青く晴れ渡った空で、霹靂は雷鳴のことよ。
よく晴れていた空に、突然雷鳴が生じる。
突然の事で驚く出来事の喩え言葉なの」
公爵夫人ニーナは、エリアスに目線を一緒に合わせて詳しく説明する。
「教えて下さり、有り難うございました。
いろんな言葉があるんですね。
船に乗っていた時も、経験がありました。
晴れていたと思ったら、突然雷が鳴り響いて嵐になりましたよ。
思い出すと、なんか懐かしいなぁ」
そう話すエリアスには、あの船の暮らしがずっと昔に思えた。
彼って側にいるだけで、癒される雰囲気の持ち主よね。
プリムローズの心は、先程の霹靂から晴天に彼によって変わるのであった。
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