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第3章  暗躍と毒女たちとの戦い

第11話 男尊女卑

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 玄関前では馬車がとまっていて、馭者ぎょしゃとびらを開けて丁重ていちょうに頭を下げている。
公爵様が馬車に乗る順番を、私を1番先にとすすめてきたのを丁重にお断りをした。

「公爵夫人をお先に、ドレスの関係で1番先の方が宜しいですわ」

プリムローズは公爵夫人のドレスを見ると、公爵夫妻はその気遣いに感謝して微笑む。

『そろそろ、仕掛けて来るわ』

彼女は殺気さっきを感じて、気配けはいを読もうとしていた。
3人の男たちが、私たちに剣を持って向かってくるのを察知さっちする。

私が一番遠い者に、お手製胡椒爆弾こしょうばくだんを投げつけた。

「メリー、そちらをお願い!」

次は、小麦粉爆弾を投げる。

「ギルも、あちらをヨロシク!」

最後に近づいて来た男を、剣で右手を叩き剣を落とさせた。
よろけたすき
ヨシ、最後にもう1回!
振りかぶろうとした瞬間に、スクード公爵が男の左肩を切ってしまった。

無礼者ぶれいものめ!
東の将軍のわしを、襲うとは許せぬ~!!」

『あぁ~、1番美味しいところを持っていかれたわ』

プリムローズがそう思っていたら、間者かんじゃはお縄になり事なきを得た。

「ギルとメリー、後は頼んだわよ。
私は、ちょくら王宮に行ってくるね」

そう言って、プリムローズは公爵と馬車に乗り込んだ。

「あーっ!
そういえば俺、護衛じゃなかったっけ?」

ギルは、頭をきながらプリムローズたちの乗る馬車を見送った。

「旦那様、プリムローズ嬢。
外で、何かありましたか?
馬車の扉が、いきなり閉まるので驚きましたわ」

夫人は生粋きっすいのご令嬢なのか、おっとりと言ってきて思わず笑いがこみ上げてきた。

「大丈夫だ、案ずるな。
変な男どもが居たので、捕まえただけだ」

『フフフ、変なね!』

ぴったりな言い方をされて、彼女はまた笑いそうになった。

「スクード公爵。
もう、傍観ぼうかんは出来ませんことよ。
夫人にも、これからは危害が及ぶ可能性があります。
隠さず、話すことにしましたら?」

スクード公爵夫人ニーナは、隣に座る夫を見つめた。

「他国の方には、首を突っ込んで欲しくは無かったが…。
それにしても、プリムローズ嬢はなかなかお強い。
グレゴリー殿のお孫さまだけありますな。
その歳で、もしや人を殺めた事はおありかな?!」

いきなり奇妙な質問を、真顔で言われてしまう。

「半殺とまでは言えませんが、幾度かございますわよ。
獣なら、おおかみ5頭とウサギ10匹なら仕留めました。
殺されるなら、私は迷いなく人だろうが殺せますわ」

公爵夫人ニーナは真っ青な顔をして、プリムローズの顔を目がこれ以上開かない大きな瞳をして見ていた。

「なるほど、男子なら将軍にもなれましのになぁ。
実にー、惜しい!!」

「あら?!将軍になりたいなら、なればいいのでは?
祖父グレゴリーは、私に宰相さいしょうと公爵になりたくないかと聞きましたわ」

「それは…、なかなかの言えぬ女性には言葉だ」

公爵は幼い彼女の話に驚いて、つい言葉が出た。

「祖国では、文官試験にも受かりました。
ヘイズは、お考えが古いんでなくって?!」

スクード公爵夫妻は、プリムローズが平然と話した内容に驚いた。  

「女性が、将軍に宰相ですか?
ヘイズでは、淑女しゅくじょになるのが女性の憧れです。
そして、良家に嫁ぐのが夢ですわ」
 
前に座る公爵夫人が、プリムローズに独り言を言う感じで話す。

「能力があれば、男女は関係ないと思いますよ。
戦場で戦うのは、兵士たちです。
上手く使って、勝てれば問題ないでしょう?!
男尊女卑だんそんじょひ】の思考が、ヘイズは他の国よりおありなのでは?」

古い思考だとけなすかのように、前にいるヘイズの公爵夫妻に持論を述べた。

スクード公爵も、その意見には賛同だ。

この国は、考えが固執こしつしすぎている。 
これでは、国の発展の妨げになるかも知れん!

「それよりスクード公爵様は、この件を王様にお聞かせするんですか?
相手は、王族の害になる方々になる可能性はありますわ!」

公爵が難しい表情になった時に、馬車が立ち止まった。

話している間に、王宮に着いたようだ。

馬車から降り立つと、案内人の方々が私たちを出迎えた。
どこの城も同じだと思ったが、少しだけ印象が違って見えた。

幾何学模様きかがくもようの床を見て、アルゴラ王妃が夢中になっている布地ぬのじを思い浮かぶ。

ヘイズには、この文化が取り入れられていたのか!

海のはる彼方かなたの国の模様を、海賊から渡って教えられたのかも知れない。
私も海賊になって、その国に行ってみたいわ。

無理なのは分かるけど、憧れてしまう。

ヘイズに留学しに来て、まだ2ヶ月にして飽きていた彼女。
そんな胸中で、災厄の根源のヘイズの王族に拝謁はいえつする。

一人では開けられない程に大きな扉が開かれると、前には数段の段差がある場所に王と王妃が座っておられた。

あの方々が、ヘイズの最高権力者か!
王族には慣れすぎているのか、子供の癖に平然としていた。
かえって、側にいる公爵夫妻が緊張した面持ちでいた。
普通の臣下は、これが当たり前の態度なのね。 

「今日はよく来てくれた。
エテルネル国のクラレンス公爵令嬢。
そして、スクード公爵夫妻よ!」

下を向きプリムローズたちは、王の有難いお言葉を拝聴した。

儀礼に沿った挨拶が終わると、そこからは気さくな感じに変わる。
違う部屋に通されると、そこは室内庭園を思わせる場所であった。
大きな窓を開けてあり、それが庭と部屋の垣根なく開放感が味わえる。
明るく解放感があり、穏やかな気持ちになっていく。
5人は大きな丸テーブルに座ると、女官たちがお茶やお菓子等用意を始めた。

本番は、ここから始まる。
プリムローズは、謎多きヘイズのことをこの王からどう聞き出すか。
頭の回転を、フルに生かすのだった。









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