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第1章  奇跡の巡り合わせ

第7話 犬馬の心

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 涙と潮風があいまってのぐちゃぐちゃの顔を見て、タルモは綺麗なハンカチを渡す。
ギルはプリムローズの小さな頭を、乱暴に撫でながらピーちゃんの鳥かごを持ってきてくれた。

部屋に戻り4人と一羽は、メリーの入れたお茶とお菓子で落ち着きを取り戻した。

「ピーちゃんが、ケガなくて宜しかったですわね。
お嬢様のお顔は酷いですが…」

メリーは苦笑して、ピーちゃんの鳥籠にもお水を入れてあげる。

「恥ずかしいけど、ピーちゃんが甲板かんぱんに降りたったら安心して涙が止めどなく出ましたわ。はぁ~!」

プリムローズは安堵あんどしたのか、クッキーをパクパクと食べて嬉しそうに笑う。

「ピ、ピッ!」と、鳥籠のピーちゃんは辺りを見て落ち着かない様子。

「どうしたんだ、ピー!
お前、何をキョロキョロと探しているんだ?!」

ギルがピーちゃんの異常行動を見て、変に感じ腕組みながら考える。

「ピー、ピー!」と、寂しげな鳴き声に何故か心が打たれるのだ。

鳴き続けるピーちゃんを観察していると、思い出したかの様に突如とつじょ手を叩いた。

「あーっ、ヴァンブラン!!
ピーちゃんは、ヴァンブランを心配しているのね?!
そうなんでしょう?!」

鳥籠に近づいていて、籠に手をあてる。
そして、目の前でピーちゃんに対し質問する。

「ピィー!!」

そうだと、返事しているように皆は感じ取った。

「ヴァンブランですか?」

タルモは首をかしげて、その名をつぶやく。

「お嬢がエテルネルから連れてきた白馬だ。
連れてきたというより、無理やり付いてきたが正しいか」

またまた変な話に不思議がるタルモに、ギルは出発時のことを詳しく話すのであった。

「ほぉ~、そんな不思議なことがあるものなのですね。
犬馬けんばの心】ならぬ。
鷹馬の心ですな。
主に対する美しい忠誠心です。
心が洗われる思いがします」

タルモはギルの話に感動したのか、思わず胸に手を当てる。

「どうしよう……。
朝は船着き場で船員に頼んだけど、私が直接船に連れ込めば良かった。
ヴァンブランは、ちゃんと船に乗っているかしら?!
もう、薄情はくじょうな飼い主なの!」

ピーちゃんの鳥籠の前で、崩れるようになげき倒れ座るプリムローズ。

「ピィ~。ピ、ピ~!」

鷹になぐさめられる姿に、3人はどう返事し声をかけたらと悩み考えるのである。

「今から確かめに行きます!
あの子は、とっても繊細なのよ。
ギル、馬って何処どこに乗せているの?」

立ち上がると、ギルを鋭い目で見るプリムローズ。

「たぶん、下の方だと思いますぜぇ。
荷物扱いにされてますから…」

ギルは歯切れ悪く、主人に教える。

「なん、何ですってー!!
私の愛馬を荷物とは、これは許せませんわ!
ヴァンブランの所へ参ります」

プリムローズが勢いよく部屋を出るのを、ギルはヘーイ~と呑気のんきな声を出す。
鼻息が荒い主の後ろ姿に、ヤレヤレと付いて行くのだった。

「私たちは、お茶でもしてお待ちしましょう。
本当に騒がしくて申し訳ございません」

「メリー嬢?メリー夫人?
あの、もしかしてギル殿とは婚姻されてますか?!」

タルモは気をかせ、メリーの呼び方に悩んでいた。

「馬鹿なこと言わないで下さい!
あ……、誰が~!!
あんな男の妻な訳がございませんわよ!!
メリーさんと、そう呼んで下さいませ!
あーっ、嫌よー!
気分悪い、寒気が~!!」

両腕をさすって首を左右に振ると、誤解した彼をにらんでいた。

「これは失礼した、メリーさん!」

タルモが彼女の表情で、顔を下に向けて直ぐ謝る。

「ピィ~!」

余計な事を言ってしまった彼を、はげます様な鳴き声が鳥籠からする。
タルモはメリーの怒りが治まるまで、ひたすら謝り続けるのだった。

 
  彼女は近くにいた船員を捕まえると、愛馬ヴァンブランが乗っている場所に案内させる。

「あの美しい白馬は、お嬢様の馬でしたか!
いやーっ、あんな見事な毛並みは今だかって見たことありませんよ」

ドレスを着ているせいか、立派なご令嬢そのものに見えるのであった。

「こちらでございますよ!
場所はイマイチですが、よい飼い葉を与えております」

「有り難う、貴方はココでもういいわ。
これでお茶でもしてね!」

プリムローズが、チップを渡しあげるとお儀して去っていく。

ここにいるのねと思っていたら、先にギルが中に入っていくのだった。

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