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第4章  未来への道

第7話 ピンクのアマリリス

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 文官研修の話をした次の日に、祖母ヴィクトリアは孫娘と二人で外出する事にする。
自分の友人のポレット夫人が働いている屋敷、フルールを訪れていた。

「ヴィクトリア様にプリムローズ様。
ようこそ、フルールへー」

夫人はいつもと変わらずに、春の陽だまりのような優しい笑顔を向けて下さった。

「ポレット夫人、お久しぶりです。
試験も合格して、落ち着きましたと言いたいけどー」

プリムローズは、思わず研修を思い出し言葉をにごしてしまう。
横で孫がちょっと暗い表情を見せてるのを眺めて、ヴィクトリアは孫から友人に視線を動かして話す。

「ポレット、それで今日は貴女にお願いがあって来たのです。
この子に文官研修に着ていく服を、貴女に見立てて用意して欲しいですわ」

祖母ヴィクトリアは孫娘のために、フルールの店長である友に依頼する。

「噂はピンクのアマリリス様から、詳しく伺っておりますわ。
彼女も、自分の子息の服を依頼してきましたのよ」

ヴィクトリアはアマリリスの名を伺い、少しだけ驚きと納得する様子を見せて質問する。

「そうですか。
ピンクのアマリリスが此方こちらに参りましたか。
この子のこと、何か申していましたか?」

「いいえ。彼女はプリムローズ様より、王妃キャロライン様にご立腹でしたわ。フフフ」

さっきから、ピンクのアマリリスって何を言っているの。

どういう意味?

彼女は二人の顔をのぞきながら、アマリリスって花のアマリリス?!
そんな想像して、疑問だらけになっているのだった。

  
    ポレット夫人は、2階にある客人と査定さていや打ち合わせする部屋に二人を案内する。
間もなくして、従業員がお茶やお茶菓子を運んできた。
もちろん、私たちが経営しているセパヌイールとカリスの品であった。

彼女は、先に服の打ち合わせを終わらせようと考えていた。
それから、先程の謎の言葉。
ピンクのアマリリスを伺おうとひえかに思いをめぐらしている。

「では、落ち着いた感じのお色に致しましょう。
紺と茶系や、あぁ緑色もよろしいですわね。
プリムローズ様なら、何でもお似合いになりますわ!」

ポレット夫人は、下僕げぼくではなく従業員に服を持ってくるように命じる。
そこから数着を選び、仕立て直してもらうことにしたら今日の目的は達成。

プリムローズは、早速本題に入りたいのかソワソワしていた。

「どうしたのです?
プリム、貴女落ち着きがないわね。
花摘はなつみみに行きたいの?」

「違いますわ、お祖母。
確かに、花は花ね」

お花摘みは、お手洗いの意味ですわ。
お祖母様ったら、勘違いしたみたい。
おかしくなって、つい笑いだしてしまった。

祖母とポレット夫人は、彼女の意味深な発言が気になるようだった。

「ご無礼を致しました。
先程、お二人が話された内容です。
ピンクのアマリリスとは、どういう意味なのでしょうか?!
気になって仕方ありませんの。
お教え下さいませ!」

あらそれねって、顔を二人はされてから黙ってしまった。

「ポレットはどう思いますか。
プリムは、子息とは顔見知りになったようです。
話しても良いかしらね?」

「私はヴィクトリア様がそう判断されたなら、何もご意見はございません。
彼女は、どうも誤解されています。
キチンと、人となりは説明をした方が宜しいわ」

二人の意見は同意したようだ。
ヴィクトリアは孫娘にあくまでも、自分らの考察こうさつなのであれこれ他人にしゃべらない事を約束させた。

「プリムローズ様。
ピンクのアマリリスは、私たち夫人たちが彼女に与えた。
あだ名なのですよ」

ポレット夫人は微笑ほほえんで、テーブルの上に飾られた花瓶かびんに差してあるオールドローズを眺めて話された。

「ポレットはそう話すけど、実際にアマリリスではないの。
彼女の名前は、アマリリス・コリーニ伯爵夫人よ」

その名前をうかがった彼女は、まだ幼さがある甲高かんだかいソプラノ歌手の様に歌うように話す。

「あ~!かの有名なー!
歩く噂夫人ですの~!!」

「いきなり高い声を出さないでおくれ。
プリム、貴女勉強のし過ぎて頭がおかしくなったの?」 

祖母は驚き指摘してきすると、ポレット夫人は胸を抑えていた。

「私も突然で驚き、心臓がドキドキしたわ。
やめてくれまし、まだ天国に行きとうありません」

「申し訳ございませんでした。今度友人たちと、孤児院訪問で演劇しようという話になってまして。
つい驚き方の練習を…」

年寄りを殺しにかかったのかと、二人は彼女を思わずにらんだ。

「でも歩く噂好き伯爵夫人が、そんな可愛らしい名前でしたのね。
予想外ですわ」

「ふふっ、プリムローズ様はどんな印象をあの方に持たれていらっしゃいますの?!」

ポレット夫人は、コリーニ伯爵夫人を頭に浮かべて質問を彼女にする。

「失礼ながら、太っちょでアヒルみたいにガァーガァーして話されている印象かなぁ!エヘヘッ」

そうプリムローズが二人に伝えると、祖母たちは転げる様に笑い出す。
 
訳の分からない彼女は、おさまるまで笑い声を聞いていたのだった。

コリーニ伯爵夫人、歩く噂好き夫人には過去があるみたい。
その訳を聞きたくて仕方ない、プリムローズであった。
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