上 下
20 / 75
第2章  愛と希望とそして秘密

第2話 荒れ地と彼らは

しおりを挟む
 気になるとどうしても聞きたがる性格、プリムローズ。

帰宅するとメイドのメリーから、家族がそろってお茶をしていると聞く。

急いでメリーに着替えを手伝ってもらい、大急ぎ居間いまへ向かった。

「プリムや、お帰り。
なんじゃ、あわてるが何かあったんか?」

祖父が急ぎ足でこちらに来る。
プリムローズを気にしていた。

「お祖父様、突然ですが!
元王族たちと追いやった家族たちは、その後生きてますの?!」

彼女は気があせっていたのか、思いっきり生存確認をしてしまった。

「い、生きとるぞぉー!
人知れず様子を見るよう頼み報告させてる。
最初は荒れ地の生活に慣れず。
毎日、いがみ合っておったそうじゃ。
やっと慣れてきたようで、畑をたがやしておるぞ!
あやつらも、強くなったもんだな。ワハハハ」

祖父は笑いながら、荒れ地の家族たちの近況きんきょうを話してくれた。

お祖父様だって、父は実の息子だ。
あんな風に話しているが、気にしているに違いない。
そんな素振りを出さなかっただけと知り、後悔を始めるプリムローズ。

「信じられないわ。
手を汚すのが嫌いな、あの方たちがー。
あの母と姉がー!
たくましくなりましたのね」

しみじみと3人の家族に対して、感想を述べるのであった。

「話では臣下になった王と愚息ぐそくも、領民たちと一緒に耕しているそうよ。
段々と荒れ地からは、まだ少しだけど出来ていると伺ったわ」

祖母も話している姿が、少しうるんで目が光っているように見えた。

「なぁ、プリムローズ!
私と一緒に会いに行こう!
王都といた時とは、違う関係になれるかも知れないよ。
あちらでは、手に入らない物を持参じさんしようではないか」

兄ブライアンは妹に、父たちがいる荒れ地の訪問を提案ていあんをもちかける。

妹は、兄の誘う言葉に衝撃を受ける。
私にお兄様は、遠慮をずっとされていたの?
私は何故もっと周りの方々を、気にかけず見ていなかったのだろう。

留学してこの国を離れる前に、あちらの家族ともわかり合いたいと思うのである。

「お祖父様とおばあ様は、どうなさりますか?
4人そろって、アチラに訪問致しましょうよ!」

「いや、2人で行ってみなさい。もし変わっていたら、今度は皆で会いに行こうぞ!」

祖父は、2人の孫たちに笑顔でこう返した。

 
 2人は出発の日時や持参じさんする荷物を考えて、先方にお会いしたいと手紙を送った。

返事は父クリストファーからで、連絡をくれた事への感謝の気持ちが書かれていた。

王都から約2日かかるので、先に荷馬車を行かせた。

私たちは学園に許可をもらい、屋敷から馬に乗って行く。
授業が終わり次第、直接出掛けることにする。

その為に制服ではなく、質素な服を着ていたので学園ではジロジロ見られていた。

それよりも荒れ地の家族たちが気になり、自分がどう見られようが気にならなかった。

 お昼に友人たちに、荒れ地にいる家族たちに会いに行くことを話した。

皆さんは複雑な表情して、気を付けて行くようにはげまして下さいましたわ。

「お兄様、途中で荷馬車とは宿で落ち合うのですね。
かなり飛ばさないと追いつけませんわ」

「そうだね。プリムローズは大丈夫か?
途中、疲れたら遠慮しないで言ってね!さぁ、行こう!!」

 2人は愛馬に乗り、都の様に整備されてない道を走っていく。
宿で荷馬車に乗っていた執事長トーマスと落ち合う。

「ブライアン様にプリムローズ様。
ご無事で何よりでございます。
今日はこの宿に泊まります」

部屋は、兄と相部屋あいべやであった。

「お兄様、かなりさびれた町ですわね。
同じ臣下なのに、恵まれた領地との差を感じますわ」

彼女は、どんな場合も格差があるのを頭で理解している。
領地でも平民の中ですら、富める者とそうでない者がいた。

「これから行く場所は、ここよりもっと寂しい所だろう」

兄は眉間みけんにシワを寄せて、暗く沈んだ声で私に話す。

その声を聞きプリムローズは、沈黙してしまう。

明日久しぶりに会う家族に、どんな顔で会えばいいか悩む2人であった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

この婚約破棄は、神に誓いますの

編端みどり
恋愛
隣国のスーパーウーマン、エミリー様がいきなり婚約破棄された! やばいやばい!! エミリー様の扇子がっ!! 怒らせたらこの国終わるって! なんとかお怒りを鎮めたいモブ令嬢視点でお送りします。

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

断罪された商才令嬢は隣国を満喫中

水空 葵
ファンタジー
 伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。  そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。  けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。 「国外追放になって悔しいか?」 「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」  悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。  その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。  断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。 ※他サイトでも連載中です。  毎日18時頃の更新を予定しています。

処理中です...