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第1章  隣国の王族 

第18話 絢爛豪華な誕生日

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 王と側室スザナは時間がかかったが、やっと中へ足を踏み入れる。
妻である王妃のせいで、王である自分の権威はかなり落ちてしまった。
あんなに沢山の貴族たちに、醜態しゅうたいを見せたのだ。

クラレンス公爵の屋敷に、二人は初めて来訪する。
筆頭公爵だけあり、王宮並の広間は広さと豪華さで圧倒された。
主な貴族たちや外国の大使たち。
著名人、財界に平民でも貴族より力のある方々が集っていた。

中央階段下の舞台には、オーケストラ並みの数の演奏者。
ドーンと居座る、それはアルゴラ国立楽団!
演奏は各国でも有名で、死ぬ前に聴きたい楽団の一番手である。

出されている料理は、見たこともないモノや贅沢ぜいたくでさまざな食材を使用したのをこれでもかと沢山置かれていた。
王宮の晩餐会ばんさんかいよりはるかに素晴らしい。

「もの凄く豪華ですわね!」と、ご夫人たちが近くで会話している。

「それはそうですわよ。
クラレンス家の秘宝と呼ばれる、プリムローズ様の節目ふしめとなる10歳のお誕生日ですもの!」

「アルゴラ王が、特別に楽団をお貸ししたそうです。
私、今日の日を一生忘れないわ」

その夫人は、感極まり泣きだす素振りをした。

「知っていますか?
プリムローズ様に、あの天才作曲家が曲を贈るとか!」

3人の夫人方は、王族が近くにいるのも知らずに話に夢中になっていた。

「陛下、私たちに挨拶に来ませんわ。
いくら主役がプリムローズ様でも、これはどうでしょうか?!」

側室のスザナは複雑な思いを、隣にいる王に現状を伝えた。

そんな思いも知らず、舞台上にはクラレンス公爵家一同が勢揃せいぞろいを見せていた。

「おー、なんと堂々としたお姿じゃ!
流石さすがは、戦の神のご家族じゃのう!」

1人の貴族が感想を話すと、周辺は納得してうなづきあう。

「本当に神々しいですわ。
まさに、同じ人とは思えぬ程ですこと!」

貴婦人の言葉にますます小さくなり、2人は存在感が薄くなるばかりである。
王はため息をつき、私も帰れば良かったと後悔する。

突然、シンバルが鳴り響き。
続いて、間髪開けずトランペットが威勢よくかなでられた。

人々が舞台に注目する先には、豪華な真珠の宝石をつけた主役が挨拶を始めていた。

「皆様ー!
プリムローズ・ド・クラレンスの10歳の誕生日パーティーに集って頂き感謝致します。
セレモニーで、アルゴラ国立楽団の演奏がございます。
あの天才作曲家のフランソワ・パユの妖精達のワルツを聴いた後は、踊りたい方は踊り食事の方はおおいに食べ飲んで下さいまし!」

プリムローズが挨拶しお辞儀すると、クラレンス家一同も続く。

指揮者にプリムローズがタクトを渡し、舞台から降りると曲が始まった。
客達はその曲を聴きいった。
妖精たちが、花畑の中をまるで舞うようなワルツ。

「可愛くて綺麗な曲ね。
アルゴラで出会ったフランソワ様が、プリムローズ様をご覧になって一気に書き上げたそうですわよ」

フランソワ様は超美男子で、この国でもご夫人方から人気は絶大であった。
音楽の若き美神とまで、あだ名を付けられている。

「おぉ!
この曲は我が国を代表する曲ではないか!」

呼ばれた大使たちは、大喜びをして曲に合わせて体を動かす人もいた。

演出は懲りに懲っている。

特にプリムローズと兄ブライアンのワルツは、流れるように気品溢れる優雅な舞いであった。
拝見していた者は、ウットリとしている。

「楽しんで頂けてますか?
陛下、スザナ様」

プリムローズが、輝く笑みを浮かべると2人に声をかけてきた。

「お誕生日、おめでとうございます。
もちろんですわ。
全てが素晴らしいですよ。
そうですわよね、陛下!」

「有名な楽団を聴けて、心が踊ったよ。
プリムローズ嬢、誕生おめでとう!」

主役の彼女に、二人は素直な感想を述べた。

「まぁ、有難うございます!
良かったですわ。
来年は全員を招きたいと思いますのよ。
お茶会から日も浅いので、王妃様と殿下には遠慮させて頂きました。
陛下からお伝え下さいませね」

微笑みながら社交辞令を王と側室に返事する、プリムローズ。

その日の絢爛豪華けんらんごうかなパーティーは、国中の話題になった。
    
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