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第4章  真実の愛を求めて

第18話 クッキーとお祭り

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 ベアトリス様と二人でクッキーの生地を調理場でねていると、カルロス様とアデラ様も気になるのかのぞきに見に来る。
料理人たちは、来るはずのない主人たちに緊張して頭をペコペコしている様子。

当然よね、普通はこんな場所に現れる方々ではないものね。

グレースはそう思い、ベアトリスの粉だらけのほほを優しくいてあげていた。

母アデラと兄カルロスは二人が姉妹の様に見えて、目を合わせながら何だが嬉しげ笑い合う。
調理場の料理人やメイドたちも、そんな主人たちを優しげな顔で作業しながら見守っていた。

「母上!グレース嬢が来てから、我が家はなんだか明るくなりましたね」

「本当に、グレースはあの本に出てくる。
主人公のグリシーヌのよう。
カルロスは、グリシーヌの花言葉を知っているかしら?」

アデラは息子に、藤の花の花言葉を質問するのである。

「すみません、私は無精者ぶしょうものでその手はサッパリ…」

息子が照れながら頭をき返事をすると、アデラはれ顔で答えを教える。

「少しは花言葉を知り、女性に花でも贈ってみなさい」

アデラは話をしながら、グレースの姿を見ている。

「グリシーヌの花言葉はね。
優しさと歓迎。
そして、決して離れないよ。
カルロスもいつの日か、そんな愛する方に出会えたら素敵ね」

母は息子がグレースにそのような気持ちになれたらと、胸の中で願っていた。

 グレースはタイラー父様のために、クッキーの他にミートパイとアップルパイも作っていた。

「グレースって、何でも出来るのね。
私がダメダメに思えるわよ!」

侯爵令嬢の箱入り娘はクッキーの生地を丸く薄くして、鉄板にのせせていくのである。

「ベアトリス様、お疲れさまです。
焼くのは料理人にまかせて、お茶でも飲んで待ちましょうか?」

私たちはアデラ様やカルロス様を、加えて4人で出来上がるのを待っていた。

「グレース、明日その馭者ぎょしゃさんの家に行くのね。私も、明日は休みだし行きたいわ!
宜しいでしょう、お母様!」

どうしても興味があるのか、彼女は何度も頼み込んでくる。

「だめですよ!
グレース嬢だって、初めてご訪問するのです」

母として、娘のわがままをキツくさとすのである。

「ベアトリス様は、平民のお宅に行ったことがおありですか?!
それにこんな豪華なドレスですと、目立ちますわ!」

ベアトリスはそうなのって、着ているドレスをつまんで見ていた。

やはり、こういうところはお姫様なのね。
ベアトリスの天真爛漫てんしんらんまんさと、悩む事なく自身の願望を告げる態度を時にうらやましく思う。

「護衛を付けなくてはね。
カルロス、貴方グレースと共に行きなさい!
貴方がいつかこの家を継ぐ時、この経験は役に立つはずです」

アデラ様は息子カルロス様に、明日の付き添いを命じた。

「カルロス様は、平民のいる場所に行く服をお持ちですの?」

グレースは、カルロスのいつも着ている仕立ての良い服を見ていた。

「前にね、一度だけ平民街に行ったことがあるんだ。
父上と、少しだけ汚かったが人々は活気かっきに満ちていたなぁ」

侯爵令息は見識を広げるために、父親と出掛けた記憶を思い出していた。

「いいなぁ~~、私も行きたいですわぁ。
公爵家に嫁いだら行けませんもの」

さっきから頼んでも許してくれないので、彼女はなげききの感情に走っているらしい。

「では、今度のお祭りに仮面をして出掛けましょう!」

アデラ様が楽しげに話す言葉に、グレースは不思議そうな顔をする。

「あら、グレース嬢は知りませんよね!
ザィールでは、王の誕生日を祝いお祭りがあるのです」

「お祭りなら、エテルネルもありますわ。
王の誕生日は、祝日になります。
皆は歌って踊り、楽しく1日を過ごしますのよ」

カルロスとグレースが楽しげに話すと、ベアトリスは二人に言う。

「グレース!その日はね、貴族も平民もないわ。
好きな動物や人物の仮面や服装で変身して、街を出歩くのです」

グレースは意味がわからないが、変身のベアトリス様の言葉に胸がときめく。

「何だか面白そうですわ。
何でもいいのですか?!
昆虫とか花でも?!」

「えぇ、好きなのでいいの。
仮面や服は貸出する店もあるし、自分で用意するわ。
ザィールでは、1番の人気のお祭りよ」

「そうだよ、グレース嬢!
その一日だけに、王都に観光にザィール中から来るんだ」

アデラはグレースが笑顔で話すのを見て、お祭りに行くのを決めるのである。

祖国では行く機会がなく、この歳で王都での大きなお祭りを初めて経験する。
 
「行きたい、行きたいですわ!
私はお祭りが初めてです。
領地では、出来なかったので」

話を聞いていて想像してみて、恥ずかしくもあるがはしゃいでいる自分がいた。
もう大人なのに、子供の頃に返った気持ちになるのだった。
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