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第4章 真実の愛を求めて
第13話 言いがかりの後で
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夜会で華やかに踊る人々の中で、この2人だけは魚料理の感想を言いながら楽しげに食べている。
色気より食い気に走る、男女であった。
「お魚って骨があるから、食べにくいですわね。
美味しいけど、面倒ですこと」
美味しいのはいいが骨を上品に出して、口を隠して彼に訴えかける。
「ハハハ、慣れですよ!
今度は、あちらの肉料理も食べでみましょう」
カルロスは、女性とこんな場所で料理を食べた経験がなかった。
前の婚約者とは儀礼的に踊り、すぐに別々に離れていたからだ。
「料理を食べている女性は、私ぐらいね。
皆さん、恥ずかしいのかしら?珍しい料理が沢山あって、楽しいけどね!フフフッ」
二人が笑って話していると、一人の男性が親しげに側に寄ってきた。
「エーレンタール侯爵令息、久し振りですなぁ?
こちらの方は、新しいお相手ですかなぁ?」
「やぁ!此方こそ、ご無沙汰しているね!
母の知り合いの方から頼まれて、当家で滞在してます」
グレースの腰を軽く支えながら、相手にカルロスが自己紹介をする。
「お初にお目にかかります。
隣国のエテルネルから参りました。
グレース・マローと申します。
以後お見知りおきをー」
「そうでしたか、エテルネルからですか!
ザィールを楽しんで下さい」
彼はそう話すと、私たちから離れていった。
「グレース嬢が、皆さん気になって仕方ないんだね。
もっといろんな方々と、交流するかい?!」
「夜会は慣れておりませんので…。
出来ましたら、このまま静かに終わりたいですわ」
周辺を見渡しては、たくさんの人達に圧倒されていた。
実際カルロスがいないと、どうしてよいのか不安になるのだった。
「グレース嬢、ちょっと席を外しても宜しいかなぁ?」
「えぇ、私も少し外しますわ。
また、ここで待ち合わせ致しましょう」
グレースとカルロスは、互いに離れた。
それを狙っていた人物が、ずっと見ていたとは知らずにー。
化粧室から出ると、数人のご令嬢たちに出待ちされ声をかけられた。
昔、この光景を他人で見たことがある。
かなりの確率で、イヤな事を言われるに違いない。
「ご機嫌よう!
貴女を初めて見ますわね?
エーレンタール侯爵のカルロス様とは、どういうご関係なのかしら?!」
4人のご令嬢たちのリーダーらしき方が、私に不快な態度で話しかけてきた。
「初めてまして、エーレンタール侯爵家で逗留させて頂いております。
隣国のエテルネルから参りました」
当たり障りのないように返事を返した。
「あらっ、そうでしたの?
では、カルロス様の新しい婚約者ではないのね?!」
そう話すと他の令嬢たちも、少し態度が柔らかくなった気がする。
この方々は、カルロス様に好意を持たれているんだわ。
「はい、ザィールの思い出作りで、カルロス様に特別にパートナーになって頂きました」
私がそう話すと、ご令嬢たちは顔を見ては馬鹿にしたように笑いだした。
「あらっ、そうなの。
そうよね、失礼だけど……。
貴女には、彼のお相手にもならないわよね。ふふふっ」
本当に私もそう思うが、他人にここまで言われると何故か腹が立つ。
不満をひた隠し、グレースは下に下に我慢していた。
「えぇ、ですから今日は見逃して下さいませ。
カルロス様にはお似合いの方が、そのうちに現れますでしょうから」
グレースの返し方が良かったのか、リーダーの女性は満足したようであった。
「そうね、今日だけですものね!皆さん、参りましょう!」
そう言って令嬢たちは、その場から立ち去ってくれるのである。
その現場を見ていた一人の男性が、一人になった彼女に話しかけてくる。
「大変でしたね、ご令嬢。
しかし、上手く交わしましたね。どうですか?
こちらの伯爵のお屋敷には、美しい藤の花があるんですよ」
藤の花は、グレースも好きだった。
マロー子爵の屋敷に咲いていたのを思い浮かんだ。
本に出てくる主人公グリシーヌは、藤の花から付けたのだから。
「すみませんが、連れが待っておりますの。
宜しかったら、3人で見ませんこと?!」
カルロス以外の男性とは、関わり合いを持ちたくなかった。
だがその一言で、男性の様子が急に変わった気がする。
イヤな予感がし、周りを見たが人が丁度誰もいない。
「私と見ましょう、いいではないですか。
……、グレース嬢……」
何故…??!
この人はなぜ、私の名前を知っているの?
令嬢たちの会話では、名は名乗っていないわ!
おかしい…、急に胸がイヤな音を立て始めた。
怖い、誰でもいいから来てー!
自然とジワジワと額に汗が滲んでくる。
「だ、誰かー!!」
「静かにしてこちらに来るんだ!大人しくすれば、命は取らないから!私だけはー」
口に手を当てられて、声が出せずにいた。
無理やり腕を引っ張られ、彼女は暗い中庭に引きづられていく。
グレースがなかなか戻って来ないのを、カルロスは不審になってきた。
女性だから、時間がかかるのか?!
「お兄様ー!!
グレースは何処にいるの?」
妹のベアトリスが婚約者を連れて、近づくと気持が不思議と焦り話しだした。
「それは可怪しいわよ!
グレースなら、まっすぐに戻るはずだわ!まさか!!」
ベアトリスは、兄カルロスに先程のカトリーナの気になる目線について報告する。
3人の顔色が、どんどんと悪くなってくる。
グレースを急ぎ探さなくては、ここにいた者たちの心が一致した。
彼女は後悔していた。
なぜ、気づいた時にグレースに言わなかったのか!
ベアトリスの美しい瞳は、自責の念で涙で潤みかけていた。
彼女を一人にさせるのではなかった…。
カルロスは心配と己に対して怒りで、目を釣り上げて彼女を必死に探す。
その時、探し人は中庭の外れで月明かりの下に立っていた。
色気より食い気に走る、男女であった。
「お魚って骨があるから、食べにくいですわね。
美味しいけど、面倒ですこと」
美味しいのはいいが骨を上品に出して、口を隠して彼に訴えかける。
「ハハハ、慣れですよ!
今度は、あちらの肉料理も食べでみましょう」
カルロスは、女性とこんな場所で料理を食べた経験がなかった。
前の婚約者とは儀礼的に踊り、すぐに別々に離れていたからだ。
「料理を食べている女性は、私ぐらいね。
皆さん、恥ずかしいのかしら?珍しい料理が沢山あって、楽しいけどね!フフフッ」
二人が笑って話していると、一人の男性が親しげに側に寄ってきた。
「エーレンタール侯爵令息、久し振りですなぁ?
こちらの方は、新しいお相手ですかなぁ?」
「やぁ!此方こそ、ご無沙汰しているね!
母の知り合いの方から頼まれて、当家で滞在してます」
グレースの腰を軽く支えながら、相手にカルロスが自己紹介をする。
「お初にお目にかかります。
隣国のエテルネルから参りました。
グレース・マローと申します。
以後お見知りおきをー」
「そうでしたか、エテルネルからですか!
ザィールを楽しんで下さい」
彼はそう話すと、私たちから離れていった。
「グレース嬢が、皆さん気になって仕方ないんだね。
もっといろんな方々と、交流するかい?!」
「夜会は慣れておりませんので…。
出来ましたら、このまま静かに終わりたいですわ」
周辺を見渡しては、たくさんの人達に圧倒されていた。
実際カルロスがいないと、どうしてよいのか不安になるのだった。
「グレース嬢、ちょっと席を外しても宜しいかなぁ?」
「えぇ、私も少し外しますわ。
また、ここで待ち合わせ致しましょう」
グレースとカルロスは、互いに離れた。
それを狙っていた人物が、ずっと見ていたとは知らずにー。
化粧室から出ると、数人のご令嬢たちに出待ちされ声をかけられた。
昔、この光景を他人で見たことがある。
かなりの確率で、イヤな事を言われるに違いない。
「ご機嫌よう!
貴女を初めて見ますわね?
エーレンタール侯爵のカルロス様とは、どういうご関係なのかしら?!」
4人のご令嬢たちのリーダーらしき方が、私に不快な態度で話しかけてきた。
「初めてまして、エーレンタール侯爵家で逗留させて頂いております。
隣国のエテルネルから参りました」
当たり障りのないように返事を返した。
「あらっ、そうでしたの?
では、カルロス様の新しい婚約者ではないのね?!」
そう話すと他の令嬢たちも、少し態度が柔らかくなった気がする。
この方々は、カルロス様に好意を持たれているんだわ。
「はい、ザィールの思い出作りで、カルロス様に特別にパートナーになって頂きました」
私がそう話すと、ご令嬢たちは顔を見ては馬鹿にしたように笑いだした。
「あらっ、そうなの。
そうよね、失礼だけど……。
貴女には、彼のお相手にもならないわよね。ふふふっ」
本当に私もそう思うが、他人にここまで言われると何故か腹が立つ。
不満をひた隠し、グレースは下に下に我慢していた。
「えぇ、ですから今日は見逃して下さいませ。
カルロス様にはお似合いの方が、そのうちに現れますでしょうから」
グレースの返し方が良かったのか、リーダーの女性は満足したようであった。
「そうね、今日だけですものね!皆さん、参りましょう!」
そう言って令嬢たちは、その場から立ち去ってくれるのである。
その現場を見ていた一人の男性が、一人になった彼女に話しかけてくる。
「大変でしたね、ご令嬢。
しかし、上手く交わしましたね。どうですか?
こちらの伯爵のお屋敷には、美しい藤の花があるんですよ」
藤の花は、グレースも好きだった。
マロー子爵の屋敷に咲いていたのを思い浮かんだ。
本に出てくる主人公グリシーヌは、藤の花から付けたのだから。
「すみませんが、連れが待っておりますの。
宜しかったら、3人で見ませんこと?!」
カルロス以外の男性とは、関わり合いを持ちたくなかった。
だがその一言で、男性の様子が急に変わった気がする。
イヤな予感がし、周りを見たが人が丁度誰もいない。
「私と見ましょう、いいではないですか。
……、グレース嬢……」
何故…??!
この人はなぜ、私の名前を知っているの?
令嬢たちの会話では、名は名乗っていないわ!
おかしい…、急に胸がイヤな音を立て始めた。
怖い、誰でもいいから来てー!
自然とジワジワと額に汗が滲んでくる。
「だ、誰かー!!」
「静かにしてこちらに来るんだ!大人しくすれば、命は取らないから!私だけはー」
口に手を当てられて、声が出せずにいた。
無理やり腕を引っ張られ、彼女は暗い中庭に引きづられていく。
グレースがなかなか戻って来ないのを、カルロスは不審になってきた。
女性だから、時間がかかるのか?!
「お兄様ー!!
グレースは何処にいるの?」
妹のベアトリスが婚約者を連れて、近づくと気持が不思議と焦り話しだした。
「それは可怪しいわよ!
グレースなら、まっすぐに戻るはずだわ!まさか!!」
ベアトリスは、兄カルロスに先程のカトリーナの気になる目線について報告する。
3人の顔色が、どんどんと悪くなってくる。
グレースを急ぎ探さなくては、ここにいた者たちの心が一致した。
彼女は後悔していた。
なぜ、気づいた時にグレースに言わなかったのか!
ベアトリスの美しい瞳は、自責の念で涙で潤みかけていた。
彼女を一人にさせるのではなかった…。
カルロスは心配と己に対して怒りで、目を釣り上げて彼女を必死に探す。
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