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第三章 フィアナ奪還
第九話 二者択一
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「(どうすれば、どうすればいいんだ‼)」
「早くしねえとどっちも失うことになるぞ」
男が持つ刃物の手に力が入る。
それを見てアクセルは頭の中がさらに混乱してしまう、そんなアクセルを見かねてか地べたに這いつくばり苦しそうな表情のリヒトが声を上げた。
「何を迷ってるっ‼あんな薬どうでもいい、エルナを助けろ」
「リヒトっ……そんなこと俺ができるわけ」
「早く、早くするんだ」
激昂するリヒト。
剣を抜くアクセルの手は震えていた。
「ふっそんな剣で倒せるとでも思ってるのか?」
「倒せるかなんてわからない、だけどやってみなきゃ一生後悔する気がするから」
「じゃあこの解毒薬は落としていいってことだな?」
男が手から力を抜き落とそうとした瞬間に、刃物を突き付けられているエルナが叫ぶ。
「だめっ‼落としちゃダメ‼」
「お前に決定権なんてないんだよ、俺が聞いてるのはそこにいる兄ちゃんだ」
「うぅ……アクセル私のことはいいから、お願いリヒトを助けて」
(どっちだ俺はどっちを助ければいい……)
迷いを振り切ったはずだがエルナの言葉に考えが揺らぐ。
三人で笑顔でいられる時間を何よりも大切にしていたアクセルは色々な思い出が蘇る、その中でも最近あった将来の夢についてのことを思い出す。
聖剣士になるのが夢であるリヒト、その夢を叶えてほしいという気持ちが強くなった時エルナがまた叫ぶ。
「アクセル……私は大丈夫だから」
「エルナ…………」
アクセルは涙を流して後ろを振り向かずに言う。
「なあリヒトお前の夢何だっけ?」
「そんなことはどうでもいい早くするんだアクセル‼」
「答えてくれリヒト‼」
「僕は、僕は聖剣士になりたい……」
――だよな。わかった、その夢絶対叶えろよ。
そう言ってアクセルは物凄い速さで剣を男とエルナに向かい突き付け走り出す。
リヒトは止めようとして手を伸ばすが動くことができない。
「何を考えてるんだアクセルッ‼」
「――うおおおおぉおおおぉお」
エルナごと男の心臓をアクセルの剣は貫いた。
血が舞う中で男は驚きの顔を浮かべながら死んでいる。手の力が緩むのを確認して、解毒薬を手から取りリヒトに投げ渡す。
「早く飲めリヒト」
「…………許さない、アクセル。君だけは許さないぞ」
すると小さな声で残りの命を振り絞る様にしてエルナが声を出す。
「……二人共……喧嘩しないで。リヒト……聖剣士になりたいんだね。アクセル……アクセルは何になりたいの?」
そっとアクセルはエルナのことを抱きしめて耳元で聞こえるように言った。
「――俺は勇者になりたいんだ」
「……凄いねアクセル、二人ともなれるよ……自慢の家族を持っちゃったな。私は叶うなら、二人が活躍する世界を見たかった……見たかったよアクセル」
アクセルの腕を残っていた力で握りしめる。目からは大粒の涙が流れ悔しそうな表情だ。
「怖いな……死ぬのって、アクセル最後まで優しく抱きしめててね」
「言われなくても抱きしめるよ。エルナ、俺達が夢をかなえた姿見てくれるか?」
アクセルがそう質問した時には笑顔で息を引き取っていた。
肌は冷たくなり人の死というものを肌を通じて感じる。
……さよならだリヒト。
◇
「さよならという言葉を残して君はいなくなった、何故俺を助けたんだエルナを助ければよかったのに」
剣に力が入る。
「あの時……君は選択を間違ったんだ」
「…………」
「なぜ何も答えない何か言ったらどうだアクセル‼」
「間違ってなんかないさ、俺は正しい選択をした。だってお前は自分の夢を叶えたじゃないか」
言葉に詰まるリヒト。
だがすぐに反論する。
「俺が聖剣士になりたかったのは、エルナも一緒にいる世界でなりたかったんだ。なのになのに、お前はっ」
「……済まない」
涙を流しアクセルはリヒトの顔を真っ直ぐ見て謝った。
その様子にリヒトはもう何も言えないでいた。自分が思っていたアクセルへの恨み、それはただの我儘でしかないことに気付くと剣を下げる。
剣を下げると魔女が後ろから現れた。
「あら、どうしたのもう戦いはお終い?」
「アクセル……先に行けよ」
戦いと過去の事で頭がいっぱいになっていたアクセル気づいていなかったが、リヒトの様子を見て初めて気づく。
「お前、堕天使してないのか?」
「ごめんアクセル、俺は堕天してないよ。だから先に行って魔女は俺が足止めしておくからさ」
「そうか良かったよ、先行ってるぞ」
「うん」
アクセルは扉へと向かう、だが魔女が前に立ちふさがろうとした。
魔女はリヒトを堕天させられたと思っていたため苛立っている。
「そう簡単に行かせないわよ」
リヒトはその行動を読んでいたのかすぐに走り出し、魔女を容赦なく斬りつける。
「鍵だ持っていけ」
「ありがとうリヒト……」
扉を勢いよく開けて閉める。
扉の閉まる音が響き渡った。
「くくくくっ聖剣士が今すぐ殺してやる」
「簡単にやられないし、やられるのはお前の方だよ魔女さん」
アクセルはリヒトの助けにより四つ目の鍵を手に入れ、フィアナが待つ場所へと向かうのであった。
「早くしねえとどっちも失うことになるぞ」
男が持つ刃物の手に力が入る。
それを見てアクセルは頭の中がさらに混乱してしまう、そんなアクセルを見かねてか地べたに這いつくばり苦しそうな表情のリヒトが声を上げた。
「何を迷ってるっ‼あんな薬どうでもいい、エルナを助けろ」
「リヒトっ……そんなこと俺ができるわけ」
「早く、早くするんだ」
激昂するリヒト。
剣を抜くアクセルの手は震えていた。
「ふっそんな剣で倒せるとでも思ってるのか?」
「倒せるかなんてわからない、だけどやってみなきゃ一生後悔する気がするから」
「じゃあこの解毒薬は落としていいってことだな?」
男が手から力を抜き落とそうとした瞬間に、刃物を突き付けられているエルナが叫ぶ。
「だめっ‼落としちゃダメ‼」
「お前に決定権なんてないんだよ、俺が聞いてるのはそこにいる兄ちゃんだ」
「うぅ……アクセル私のことはいいから、お願いリヒトを助けて」
(どっちだ俺はどっちを助ければいい……)
迷いを振り切ったはずだがエルナの言葉に考えが揺らぐ。
三人で笑顔でいられる時間を何よりも大切にしていたアクセルは色々な思い出が蘇る、その中でも最近あった将来の夢についてのことを思い出す。
聖剣士になるのが夢であるリヒト、その夢を叶えてほしいという気持ちが強くなった時エルナがまた叫ぶ。
「アクセル……私は大丈夫だから」
「エルナ…………」
アクセルは涙を流して後ろを振り向かずに言う。
「なあリヒトお前の夢何だっけ?」
「そんなことはどうでもいい早くするんだアクセル‼」
「答えてくれリヒト‼」
「僕は、僕は聖剣士になりたい……」
――だよな。わかった、その夢絶対叶えろよ。
そう言ってアクセルは物凄い速さで剣を男とエルナに向かい突き付け走り出す。
リヒトは止めようとして手を伸ばすが動くことができない。
「何を考えてるんだアクセルッ‼」
「――うおおおおぉおおおぉお」
エルナごと男の心臓をアクセルの剣は貫いた。
血が舞う中で男は驚きの顔を浮かべながら死んでいる。手の力が緩むのを確認して、解毒薬を手から取りリヒトに投げ渡す。
「早く飲めリヒト」
「…………許さない、アクセル。君だけは許さないぞ」
すると小さな声で残りの命を振り絞る様にしてエルナが声を出す。
「……二人共……喧嘩しないで。リヒト……聖剣士になりたいんだね。アクセル……アクセルは何になりたいの?」
そっとアクセルはエルナのことを抱きしめて耳元で聞こえるように言った。
「――俺は勇者になりたいんだ」
「……凄いねアクセル、二人ともなれるよ……自慢の家族を持っちゃったな。私は叶うなら、二人が活躍する世界を見たかった……見たかったよアクセル」
アクセルの腕を残っていた力で握りしめる。目からは大粒の涙が流れ悔しそうな表情だ。
「怖いな……死ぬのって、アクセル最後まで優しく抱きしめててね」
「言われなくても抱きしめるよ。エルナ、俺達が夢をかなえた姿見てくれるか?」
アクセルがそう質問した時には笑顔で息を引き取っていた。
肌は冷たくなり人の死というものを肌を通じて感じる。
……さよならだリヒト。
◇
「さよならという言葉を残して君はいなくなった、何故俺を助けたんだエルナを助ければよかったのに」
剣に力が入る。
「あの時……君は選択を間違ったんだ」
「…………」
「なぜ何も答えない何か言ったらどうだアクセル‼」
「間違ってなんかないさ、俺は正しい選択をした。だってお前は自分の夢を叶えたじゃないか」
言葉に詰まるリヒト。
だがすぐに反論する。
「俺が聖剣士になりたかったのは、エルナも一緒にいる世界でなりたかったんだ。なのになのに、お前はっ」
「……済まない」
涙を流しアクセルはリヒトの顔を真っ直ぐ見て謝った。
その様子にリヒトはもう何も言えないでいた。自分が思っていたアクセルへの恨み、それはただの我儘でしかないことに気付くと剣を下げる。
剣を下げると魔女が後ろから現れた。
「あら、どうしたのもう戦いはお終い?」
「アクセル……先に行けよ」
戦いと過去の事で頭がいっぱいになっていたアクセル気づいていなかったが、リヒトの様子を見て初めて気づく。
「お前、堕天使してないのか?」
「ごめんアクセル、俺は堕天してないよ。だから先に行って魔女は俺が足止めしておくからさ」
「そうか良かったよ、先行ってるぞ」
「うん」
アクセルは扉へと向かう、だが魔女が前に立ちふさがろうとした。
魔女はリヒトを堕天させられたと思っていたため苛立っている。
「そう簡単に行かせないわよ」
リヒトはその行動を読んでいたのかすぐに走り出し、魔女を容赦なく斬りつける。
「鍵だ持っていけ」
「ありがとうリヒト……」
扉を勢いよく開けて閉める。
扉の閉まる音が響き渡った。
「くくくくっ聖剣士が今すぐ殺してやる」
「簡単にやられないし、やられるのはお前の方だよ魔女さん」
アクセルはリヒトの助けにより四つ目の鍵を手に入れ、フィアナが待つ場所へと向かうのであった。
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