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第三章 フィアナ奪還

第五話 暴走してもなお信じ続けた

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 《ヴルム》・堕天【暴走】
 職業・竜人

 レベル:809
 攻撃:89021
 防御:38900
 魔力:6211
 魔防:49022
 俊敏:79010
  運:7900

 「ステータスが上昇してるな……もう自我を失ってるのか?」

 「グオオォォオ‼」

 背中からは黒い翼が広がり黒い堕天の力を纏い人間としての原型がなくなっていた。
 目の前には苦しい表情を浮かべるヴルムが、歯でアクセルの体をかみちぎろうと必死に足掻いている。剣で何とか受け止め突き放すようにして剣で押す。

 ――錬成!

 脚に錬成で枷を作り縛り付けようとするが、身体を振り回し砕いてしまう。
 焦るアクセルは後ろに下がりヴルムの猛攻を避け続けている。だが避けていても体力が持つはずもなく足がもつれてしまいその場で転びそうになる。

 「くっ、ここで体勢を崩したら……」

 隙を見つけたヴルムは半分竜になった顔で大きな口を開き転びそうになるアクセルに噛みつこうとする。噛みつく寸前で錬成をし、壁を作り手で反動をつけて違う方向に避けるが右腕を噛まれてしまう。
 竜の鋭く尖った歯が腕に食い込む。貫通はしてないものの力を入れられた瞬間に腕の骨が折れてしまうと思い引き抜こうとするが力が強く引き抜くことは到底不可能である。
 痛さのあまり冷汗が額から頬を伝い焦りを感じていた。
 噛まれている右腕を使えない状態で自分には何ができるのか考える。考え抜いた末にヴルムと初めて戦った時のことを思いだした。

 「そうか思いだしたぞ……ヴルム俺はお前を信じてる、だからこれでいい加減目を覚ませっ‼」

 ――――錬成ッ‼

 グググ

 ググググググッ

 アクセルが咥えられている右腕で錬成をすると、口の中が膨れ上がっていき吐き出しそうになる。ヴルムは固く閉ざしていた口を開く。口の中から大きな歯形がついた右腕と口の中で錬成し作り上げた黒き竜の破片が出てくる。
 頭がクラクラとしているヴルムは首を何度も振り目を開けると、暴走していたことを忘れ正気になる。霞んでよく見えない目を何度か擦り周りを見渡すとヴルムは傷のついた腕を庇うようにするアクセルに気づく。

 「だ、大丈夫か‼」

 「ふっ何だよ今頃、やっと目を覚ましたかあの時と同じ方法で倒してやったよ」

 「俺は一体何を……」

 黒いオーラが体から離れていく。
 自分が何をしていたのか記憶を遡り思いだそうとするが頭がズキズキと痛み思いだせないでいた。
 その様子にアクセルは痛そうな腕を庇うのをやめてヴルムに近づく。

 「今は何も思い出さなくていいんじゃないか?ほら立てよ、本来だったら俺のほうが座りたいぐらいだよ」

 手を差し伸べられるとヴルムは手を払う。
 そして笑うと、アクセルを見た。

 「お前に手を差し出されるとはな、二度も負けた相手だ立ち上がるのにまで手を貸されるほど軟じゃない。だがこの惨状を見る限りお前には迷惑をかけたな済まない」

 「大丈夫だ、それよりさ今度お前の里連れて行ってくれよ!こんな怪我させられたんだ、御馳走期待してるぞ」

 「あぁ勿論だ。アクセル、先を急いでるんだろこれで鍵を開けて先に行け」

 「おっおう。サンキュ‼」

 戦いが終わりフィアナのことを思い出し鍵を持つと、次の場所に向かうため急いで扉を開けるがそこでアクセルは止まると後ろを見ずにヴルムに言う。

 「なあお前の里に連れていくって話なんだけどさ、その前に俺も一緒に竜の雛が住む場所探させてくれよ」

 「……そこまでお人好しなのか、俺が一人で見つからなかったら手伝ってもらうとしよう」

 「何だよその言い方少しはお礼ぐらい……」


 ――ありがとう


 アクセルが何かを言おうとしている途中でヴルムはお礼を口に出すと背中を押して急かすようにした。
 扉の閉まる音を聞き、二つ目の鍵を握るアクセルは次の刺客が待っている階段の先に行く。

 コツンコツンコツン

 階段を上る音が響いている。
 扉が現れ開くと中には一人の少女が後ろを向いていた。

 「女の子?」

 疑問符を浮かべて近づいていこうとした時少女は声を出した。

 ――お兄ちゃん久しぶり

 高い声が部屋全体を包み反響するとアクセルはすぐにその正体が分かる。
 振り向くこともなく自然と名前が口から出ていた。

 「エルン……」

 「あったりーさすがだねお兄ちゃん、みてみて私ね魔法使いになれたんだよ」

 紫の服装は魔法使いのような装いで頭の大きな帽子が目立っていた。
 エルンの成長に喜びたいところではあるがここにいるというこということは、今は敵なのだと思い複雑な感情が頭を過る。
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