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第二章 最初にホムンクルスを生み出した者

第九話 賢者の石の不規則な動き

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 「今日は何をするか決まったんだけどフィアナ大丈夫か」

 「朝ごはん食べ過ぎちゃってさ少し苦しいだけ」

 お腹が膨れ上がったフィアナはそう言って笑顔になる。
 それほどお腹が空いていたのだろう、そしてアクセルは話を続ける。
 手の上に賢者の石を乗せるとおもむろに石を回す。

 「何をしているのアクセル?」

 「まあ見とけって」

 回る賢者の石はゆっくりと止まり動かなくなる。
 いつもの場合だと賢者の石は紐で引っ張られてるようになるが、今回はならなかった。
 その変化に気づいたフィアナは驚きながら何かに気づいたようだ。

 「もしかして近くに賢者の石関連の何かがあるってこと?」
 
 「そういうことだ、ロットはこの動きを見て一つだけ思い浮かぶらしい」

 「えっ何か知ってるの?」

 フィアナがロットに視線を移すと自信ありげな顔になる。

 「多分この国に八人の特殊なホムンクルスの一人がいるのだと思います」

 「あっ前に話していた、賢者の石を埋め込まれたホムンクルスの事ね」

 「はいそれです。だから今日はそのホムンクルスを探しに行きます」

 話が決まると三人は外に出て捜しに行く。
 大国の朝は人が多く探しにくいかもしれないが、逆に言えば何処かに紛れている可能性があるということだ。
 散策をまじえながら手にもっている賢者の石が反応しないか様子を見る。
 広い国を歩き回り数時間が経つが一向に反応がない。

 「アクセル、本当にいるの?」

 「分からない、だけど俺達にはこれしか手掛かりがないからな」

 「そうね……ってアクセル賢者の石が変な動きをしてるけど!」

 手の上で不規則に回る賢者の石はある一つの方向で止まる。
 その先には人が紛れて分かりにくいが、顔を隠しローブを羽織る怪しい人物がいた。
 三人で逃がさないように徐々に追い詰めていく。
 相手は異変に感じていないため辺りを見回しているだけだ。
 するとアクセルの視線に気づいた怪しい人物は途端に走り逃げだした。

 「あっアクセルさん逃げましたよ」

 「この国は広いから私とロットで追い詰めるから、アクセルは挟み撃ちして」

 頷くアクセル。
 三人はそれぞれ分かれ追い詰めるために動く。
 違う方向からそれぞれ追うと裏の路地に入るその人物。
 細い路地の真ん中に立つ一人の男。

 「あっ危ないです逃げてください」

 フィアナは危険だと呼びかける。
 だがローブの人物はその男の前で膝をつき顔を下げている。

 「お嬢さんこのホムンクルスは私の子供だ大丈夫だよ」

 「ホムンクルスってあなた一体だれなの?」

 「私かい?私は……」

 男が話している途中で遅れてきたアクセルとロットが向かい側に来た。
 男の容姿を見たロットは瞬間的にフィアナに向かい声を荒げる。

 「そいつから離れてくださいフィアナさん‼――錬成」

 ロットは錬成を使うと路地の壁で男を串刺しにしようとする。
 だがその行動に笑い手を前に出すと、

 「まだまだ甘いなロット」

 押し寄せてくる壁を手で分解してしまう。
 それは紛れもなく錬成に似た能力であった。
 
 「ロット‼あいつのことを何か知ってるのか」

 「知ってるも何もあいつがホムンクルスを生み出したっ」

 ――口を閉じろロット

 男は鋭い視線とともに重圧のある声をだした。

 「自己紹介くらい私は自分でできる。私の名前はメギストスだ、若い錬金術師さん方よろしく」

 その正体はホムンクルスを生み出したメギストスであった。
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