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第一章 賢者の里

第十四話 鏡の世界

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 黒い魔方陣がフィアナの背中に広がっていく。
 目を瞑り自分が錬成され死ぬ覚悟をした時、眼を開けると辺りは白い光に包まれた見たことのない世界。

 「もしかして私……」

 中央には全身が写る楕円の鏡が置いてある。
 鏡の前に行き自分の姿を見るが何も変わっている様子はない。
 鏡に手を触れると、鏡の中の自分が違う動きをしだす。

 「えっ動いた?」

 「何を驚いているのさ、動くにきまっているだろ」

 「貴方は誰?」

 鏡の中にいる自分は声質が違い、話し方もあまり似てはいない。

 「僕かい、そうだな君でもあるし君じゃないかもしれない存在だよ。フィアナは錬金術師だろ?」

 「何で私の名前……それに錬金術師って」

 「そんなに驚くことかい、錬金術師しかここには来れないんだから当たり前だろ。フィアナはまだやりたいことがあるんじゃないの?」

 「私のやりたいこと」

 胸に手をあてて考えると賢者の石のことが浮かぶ。

 「やっぱりやりたいことあるんだね。ほら君が求めているものは、これだろ」

 鏡の中のフィアナは赤い石を手に持っている。
 その石を見て衝撃を受けるフィアナ。

 「もしかしてそれが!」

 「いや違う、これは偽物さ。だけれど君ならきっと手に入れられるさ」

 「私なら手に入れられる……」

 「その笑顔を忘れないで……それじゃこの鏡を背にして走って」

 無言で頷きフィアナは鏡を背にして思い切り走る。
 鏡のフィアナの姿が変わると寂しげな声で、

 「少し生意気なしゃべり方だったかな、もうこんなところ来ちゃ駄目だからねお姉ちゃん」


 ◇


 「おい大丈夫か、大丈夫かフィアナ‼」

 目を開けると汗を垂らし焦っている表情のアクセルがいた。
 目が霞みよくわからないが、フィアナは口を開けて聞き返す。

 「……アクセル?」

 「そうだ何も痛いところはないか」

 「うん……ホムンクルスはどうなったの?」

 「まだ終わってない、すぐ倒してくるから休んでろ」

 フィアナはアクセルの言葉に安心して、その場で眠る様に休む。
 目の前のホムンクルスは何かに物凄く動揺して頭を抱えていた。

 「なんでなんでなんであのおんんんなななが、なんでなんで」

 「(様子がおかしいな、捕まえて話を聞こうかと思ったがあの様子じゃ)」

 「ホムンクルの私じゃなく、あんな奴が何でだよおぉぉぉ」

 イルアは叫びアクセルに向かい走ってくる。
 動きが読みにくく分かり辛いが、無駄な動きも多い。
 
 「悪いなホムンクルス、いやイルアとか言ったか……殺させてもらう」

 「なあぁに言ってんだよおぉ、人間が勝てるわけないだろおぉぉ」

 するとイルアは洞窟の壁に何度も錬成をして、棘を出現させたり土で剣を作成して投げてくる。
 だが一回も攻撃は当たらずに、アクセルはイルアに向かい一直線に剣を突き刺す。

 「すまないな手負いのお前に遠慮しないのもいい気分じゃないが、今は遊んでる気分じゃないから」

 「くそくそくそっ、人間は人間は全員殺してやる」

 「…………」

 冷徹な眼でイルアが消えていくのを見届けたアクセル。
 戦いが終わると、すぐにフィアナを背負い扉に向かう。
 手元の剣で頑丈な扉を壊すと、近くにはパラサスがいた。

 「ひいぃぃ、ゆ、許してください」

 「あんたには興味がない」

 と言うと冷めた様子で大賢者の家を出ていった。


 《アクセル》
 職業・錬金術師
 レベル:32

 攻撃:560
 防御:1570
 魔力:1687
 魔防:1987
 俊敏:2670
  運:7680

 《フィアナ》
 職業・錬金術師
 レベル:52

 攻撃:600
 防御:1792
 魔力:3000
 魔防:1321
 俊敏:1121
  運:18790
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