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第一章 賢者の里
第十話 賢者の里の小さな少女エルン
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「おい何か見えてきたぞ!」
アクセルは何かを見つけて言うと、横には眠そうにしているフィアナがよろけながらも歩いていた。
「もしかして、あれが賢者の里か?」
「アクセル……私はもう眠くてな」バタッ……
そのまま倒れ土の上で寝てしまうフィアナ。
疲れて寝てしまったフィアナを背中に乗せて、目の前の大きな町に向かう。
入口に着くとご丁寧に看板が刺してあり、そこには《賢者の里》と書かれていた。
夜の為、外には人の姿はあまり見られないが、いくつもの家から笑い声や賑やかな声で人がいることがわかる。
賢者が住む独特な作りの家は様々な色で作られたランプが空中で点灯し、とても神秘的だ。
綺麗な景色に口を開けて見ていると、家の前で一人の少女が泣いているのを見かける。
「あの、何かあったのかい?」
「グスングスッ……わぁ誰お兄ちゃん?」
「俺はアクセル、背中で寝てるのはフィアナだ。少しこの里に用事があってきたんだ」
「ふーんそうなんだ、あっそれじゃお兄ちゃん達は泊まる家がないってことだよね。よかったらうちに泊まってよ」
長い紫髪の小さな少女は銀色の眼を輝かせ、愛らしい笑顔で言った。
「泊まってもいいなら助かるが、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫!」
小さな少女はフードをすると、扉をコンコンと叩き自分が出せる低い声で言った。
「開けてくれるかな」
すると家の中から走る音が聞こえ、扉を勢いよく開けてきた。
「エルン!またお父さんの真似したの!」
「へへぇー、お母さん喜ぶかと思って!」
「喜びません!少し起こりすぎたのは悪かったわ、早く家に……って後ろの方は誰?」
「何だかここに用があって立ち寄ったんだって、うちに泊めちゃだめかな?」
「いけませんって言いたいところだけど、この時間じゃどの宿舎もきっとやっていないわね。いいわ入って大丈夫よ」
笑顔になったエルンは、はしゃぐように家に入った。
家に入っていくエルンについていくようにして入ろうとすると、母親に止められた。
「貴方の背中で寝ている女の子……変なことを聞くようだけど魔女じゃないわよね?」
「いえ違いますよ。魔女というのは?」
「この里ではね、昔赤い髪の魔女によって滅ぼされてしまった歴史があるの。何でもその魔女はまだ生きているというから、赤い髪を見るとどうしてもね……ごめんなさいね、どうぞあがって」
「は、はいお邪魔します」
アクセルは少女のエルンに案内され、階段を上っていく。
「ここは私の部屋なんだけど、広いでしょ?ここに二人とも泊まって、私もいるけど大丈夫?」
「あぁ勿論大丈夫だ、ありがとうなエルン!」
「いえいえー」
大人びた少女は受け答えもしっかりしていて、真面目そうである。
アクセルは何故そんな少女が怒られていたのか、疑問に思い聞いた。
「エルン、君は何故お母さんに怒られちゃったの?」
「それは私が悪いから、賢者の里で生まれ育ったのに私は魔法使いになりたいって言ったから……」
「賢者の里では魔法使いを目指しちゃ駄目なのか……それも魔女と関係があるのかい?」
「そう、賢者の里では魔法使いになるっていうのは魔女になりたいっていう意味に捉えられちゃうんだ」
魔女という存在のせいで目の前の少女が自分の夢を諦めようとしている事に、寂しい気持ちになったアクセルはエルンに質問した。
「エルンは魔法使いになったら何がしたいんだい?」
「――人を笑顔にする魔法使いになりたい!」
純粋で無垢な表情で言ったエルンに、アクセルは手を頭にそっとのせて、
「素敵な魔法使いだな、きっとなれるさ!」
エルンは嬉しい気持ちが溢れ、銀色の眼からは涙が溢れていた。
アクセルは何かを見つけて言うと、横には眠そうにしているフィアナがよろけながらも歩いていた。
「もしかして、あれが賢者の里か?」
「アクセル……私はもう眠くてな」バタッ……
そのまま倒れ土の上で寝てしまうフィアナ。
疲れて寝てしまったフィアナを背中に乗せて、目の前の大きな町に向かう。
入口に着くとご丁寧に看板が刺してあり、そこには《賢者の里》と書かれていた。
夜の為、外には人の姿はあまり見られないが、いくつもの家から笑い声や賑やかな声で人がいることがわかる。
賢者が住む独特な作りの家は様々な色で作られたランプが空中で点灯し、とても神秘的だ。
綺麗な景色に口を開けて見ていると、家の前で一人の少女が泣いているのを見かける。
「あの、何かあったのかい?」
「グスングスッ……わぁ誰お兄ちゃん?」
「俺はアクセル、背中で寝てるのはフィアナだ。少しこの里に用事があってきたんだ」
「ふーんそうなんだ、あっそれじゃお兄ちゃん達は泊まる家がないってことだよね。よかったらうちに泊まってよ」
長い紫髪の小さな少女は銀色の眼を輝かせ、愛らしい笑顔で言った。
「泊まってもいいなら助かるが、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫!」
小さな少女はフードをすると、扉をコンコンと叩き自分が出せる低い声で言った。
「開けてくれるかな」
すると家の中から走る音が聞こえ、扉を勢いよく開けてきた。
「エルン!またお父さんの真似したの!」
「へへぇー、お母さん喜ぶかと思って!」
「喜びません!少し起こりすぎたのは悪かったわ、早く家に……って後ろの方は誰?」
「何だかここに用があって立ち寄ったんだって、うちに泊めちゃだめかな?」
「いけませんって言いたいところだけど、この時間じゃどの宿舎もきっとやっていないわね。いいわ入って大丈夫よ」
笑顔になったエルンは、はしゃぐように家に入った。
家に入っていくエルンについていくようにして入ろうとすると、母親に止められた。
「貴方の背中で寝ている女の子……変なことを聞くようだけど魔女じゃないわよね?」
「いえ違いますよ。魔女というのは?」
「この里ではね、昔赤い髪の魔女によって滅ぼされてしまった歴史があるの。何でもその魔女はまだ生きているというから、赤い髪を見るとどうしてもね……ごめんなさいね、どうぞあがって」
「は、はいお邪魔します」
アクセルは少女のエルンに案内され、階段を上っていく。
「ここは私の部屋なんだけど、広いでしょ?ここに二人とも泊まって、私もいるけど大丈夫?」
「あぁ勿論大丈夫だ、ありがとうなエルン!」
「いえいえー」
大人びた少女は受け答えもしっかりしていて、真面目そうである。
アクセルは何故そんな少女が怒られていたのか、疑問に思い聞いた。
「エルン、君は何故お母さんに怒られちゃったの?」
「それは私が悪いから、賢者の里で生まれ育ったのに私は魔法使いになりたいって言ったから……」
「賢者の里では魔法使いを目指しちゃ駄目なのか……それも魔女と関係があるのかい?」
「そう、賢者の里では魔法使いになるっていうのは魔女になりたいっていう意味に捉えられちゃうんだ」
魔女という存在のせいで目の前の少女が自分の夢を諦めようとしている事に、寂しい気持ちになったアクセルはエルンに質問した。
「エルンは魔法使いになったら何がしたいんだい?」
「――人を笑顔にする魔法使いになりたい!」
純粋で無垢な表情で言ったエルンに、アクセルは手を頭にそっとのせて、
「素敵な魔法使いだな、きっとなれるさ!」
エルンは嬉しい気持ちが溢れ、銀色の眼からは涙が溢れていた。
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