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第13話 クレープ屋台のミルテさんニャ!
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猫族の店員さんのクレープ屋台は濃い灰色の服を着たおじさんたちにとり囲まれていた。クレープを食べていた他のお客さんたちはみんな逃げてしまったようだった。
「誰に許可を得てここで商売してやがるんだ?」
「公園の管理事務所ニャン!」
「うるせえ!」
おじさんたちは有無を言わさずに屋台を壊しはじめ、とめようとした猫族の店員さんはつきとばされて地面に倒れこんだ。僕はこわくて仕方なかったけど、ガンザさんの前なのでついカッコつけてしまった。
「僕、とめに行ってくるよ。」
「まて、カズミ。面倒なことになるぞ。あれはたぶん…。」
意外にもガンザさんは僕の腕をとり、とめようとした。僕はその腕をふり払い、屋台に走り寄った。おじさんたちと店員さんが言い争う声がどんどん近くなった。
「なあ、こんな商売でちまちま稼いでも利息にもならねえんだろう? あの話をのめばわるいようにはしねえぜ?」
「ことわるニャン! ボクのクレプは絶品ニャ! 借金なんか、すぐに完済できるニャ!」
灰色のおじさんは店員さんに殴りかかったけど、逆に思いきり爪で顔をひっかかれていた。僕はとにかく、大声で叫ぶことにした。
「やめてよ! 警察を呼ぶよ!」
「はあ? ケイサツ? なんだ貴様は?」
おじさんのひとりが僕を軽く押しただけで、僕はよろめいて尻もちをついてしまった。我ながら情けないよね。
「妙な服のお嬢ちゃんはひっこんでい…」
僕を押したおじさんが急に目の前からいなくなって、声がとぎれた。よく見ると、はるか空高くにおじさんは舞い上がっていて、数秒後に草むらにドサリと落ちてきた。
「カズミ、大丈夫か?」
どうやらおじさんはガンザさんにぶん投げられたらしい。彼女のあまりのはやさとパワーと体の大きさに、灰色おじさん達は明らかに動揺していた。
「な、なんだ、この雌オーガは! てめえは関係ねえだろうが!」
「いや、関係あるぞ。カズミに手を出しただろう。許さん。」
灰皿のおじさん軍団はお互いの顔を見合わせたあと、悲鳴をあげながら慌てて走り去っていった。僕はホッとして気が抜けて、腰が抜けたのかなかなか立ち上がれなかった。
「で、キミたちはつきあってるのかニャン?」
綺麗な毛並みの猫族の店員さんはミルテと名乗った。ミルテさんはよほど興味があるのか、僕とガンザさんの関係を何度も聞いてきて、どう答えるか僕は困った。ガンザさんは屋台の壊れた部分を器用に直して、ミルさんは感激しっ放しだった。
改めてよく見ると、ミルさんは宝石みたいな目をしていてスタイルもかなりよくって、元々猫派の僕としては彼女はかなりかわいいコだと思った。
「そんなに見つめちゃイヤ~ンニャ。カズミのほうこそかわいいニャン!」
猫族はスキンシップが激しいみたいで、ミルテさんは僕に全身でスリスリしてきてかなりくすぐったかった。僕はついデレデレしてしまい、背中に焼けつくような視線を感じて我に返った。
「もうここに用はない。帰るぞ、カズミ。」
ガンザさんはいっきに最悪に不機嫌になっていて、僕は小屋に帰ったらどうなるんだろうと密かに怯えた。
「ふたりとも、待つニャン! なにかお礼がしたいニャ~ン♪ 」
「猫族の女、いいかげんにカズミから離れろ。ベタベタするな、みっともない。」
「あニャ? 公園のベンチで昼間っからベタベタしていたのは誰と誰だったかニャ~ン?」
ガンザさんが沸騰したみたいに赤くなったので、僕は慌てて話題をリセットしようとした。
「それにしても、あのおじさん達はいったい誰なの?」
「わからないニャ。いつもボクに絡んできて、特に今日はひどかったニャン。」
「おそらく、誰かに雇われたならず者どもだろう。」
僕には、ガンザさんの言った意味がその時はよくわからなかった。ミルテさんの話によると、彼女の村は飢えに苦しんでいて、王都に出稼ぎにきたらしい。そしてある商会からお金と屋台を借りて、商売をして返済する契約をしたそうだったけど、最近ではあのならず者たちが現れて、やたらと身売りを勧めてくるようになったという。
「身売りって?」
「だ、か、ら、娼館とか、いやらし~い所に売られるってことニャン!」
そんなことがあるなんて、この異世界の物騒さに僕はことばを失ってしまった。
「商会とは、ジョンズワート交易商会のことか?」
ガンザさんの指摘にミルテさんは勢いよくうんうんとうなずいた。
「屋台とお金を借りた時はものすごく親切だったニャン。でも、あとで噂を聞いて驚いたニャ…。」
ジョンズワート交易商会って、僕は知らなかったけどこの王都最大の商人の組織らしい。ミルテさんの言う噂とは、その商会は裏ではあくどい事をしているという噂が絶えなくて、役人も賄賂で手を出さないんだとかいう話だった。
「お金の力で悪事をもみ消すなんて!」
「あニャ。お金自体はわるいものではないニャ。まちがった使い方をする連中が悪いニャン♪」
ミルテさんは怒る僕をなだめるように長いしっぽを絡めてきて、くすぐったいやら気持ちいいやらで、僕はガンザさんに叱られないかとビクビクしたけど、彼女は険しい顔でひとりごとを言いながらうわの空だった。
「ジョンズワート交易商会か…。」
「誰に許可を得てここで商売してやがるんだ?」
「公園の管理事務所ニャン!」
「うるせえ!」
おじさんたちは有無を言わさずに屋台を壊しはじめ、とめようとした猫族の店員さんはつきとばされて地面に倒れこんだ。僕はこわくて仕方なかったけど、ガンザさんの前なのでついカッコつけてしまった。
「僕、とめに行ってくるよ。」
「まて、カズミ。面倒なことになるぞ。あれはたぶん…。」
意外にもガンザさんは僕の腕をとり、とめようとした。僕はその腕をふり払い、屋台に走り寄った。おじさんたちと店員さんが言い争う声がどんどん近くなった。
「なあ、こんな商売でちまちま稼いでも利息にもならねえんだろう? あの話をのめばわるいようにはしねえぜ?」
「ことわるニャン! ボクのクレプは絶品ニャ! 借金なんか、すぐに完済できるニャ!」
灰色のおじさんは店員さんに殴りかかったけど、逆に思いきり爪で顔をひっかかれていた。僕はとにかく、大声で叫ぶことにした。
「やめてよ! 警察を呼ぶよ!」
「はあ? ケイサツ? なんだ貴様は?」
おじさんのひとりが僕を軽く押しただけで、僕はよろめいて尻もちをついてしまった。我ながら情けないよね。
「妙な服のお嬢ちゃんはひっこんでい…」
僕を押したおじさんが急に目の前からいなくなって、声がとぎれた。よく見ると、はるか空高くにおじさんは舞い上がっていて、数秒後に草むらにドサリと落ちてきた。
「カズミ、大丈夫か?」
どうやらおじさんはガンザさんにぶん投げられたらしい。彼女のあまりのはやさとパワーと体の大きさに、灰色おじさん達は明らかに動揺していた。
「な、なんだ、この雌オーガは! てめえは関係ねえだろうが!」
「いや、関係あるぞ。カズミに手を出しただろう。許さん。」
灰皿のおじさん軍団はお互いの顔を見合わせたあと、悲鳴をあげながら慌てて走り去っていった。僕はホッとして気が抜けて、腰が抜けたのかなかなか立ち上がれなかった。
「で、キミたちはつきあってるのかニャン?」
綺麗な毛並みの猫族の店員さんはミルテと名乗った。ミルテさんはよほど興味があるのか、僕とガンザさんの関係を何度も聞いてきて、どう答えるか僕は困った。ガンザさんは屋台の壊れた部分を器用に直して、ミルさんは感激しっ放しだった。
改めてよく見ると、ミルさんは宝石みたいな目をしていてスタイルもかなりよくって、元々猫派の僕としては彼女はかなりかわいいコだと思った。
「そんなに見つめちゃイヤ~ンニャ。カズミのほうこそかわいいニャン!」
猫族はスキンシップが激しいみたいで、ミルテさんは僕に全身でスリスリしてきてかなりくすぐったかった。僕はついデレデレしてしまい、背中に焼けつくような視線を感じて我に返った。
「もうここに用はない。帰るぞ、カズミ。」
ガンザさんはいっきに最悪に不機嫌になっていて、僕は小屋に帰ったらどうなるんだろうと密かに怯えた。
「ふたりとも、待つニャン! なにかお礼がしたいニャ~ン♪ 」
「猫族の女、いいかげんにカズミから離れろ。ベタベタするな、みっともない。」
「あニャ? 公園のベンチで昼間っからベタベタしていたのは誰と誰だったかニャ~ン?」
ガンザさんが沸騰したみたいに赤くなったので、僕は慌てて話題をリセットしようとした。
「それにしても、あのおじさん達はいったい誰なの?」
「わからないニャ。いつもボクに絡んできて、特に今日はひどかったニャン。」
「おそらく、誰かに雇われたならず者どもだろう。」
僕には、ガンザさんの言った意味がその時はよくわからなかった。ミルテさんの話によると、彼女の村は飢えに苦しんでいて、王都に出稼ぎにきたらしい。そしてある商会からお金と屋台を借りて、商売をして返済する契約をしたそうだったけど、最近ではあのならず者たちが現れて、やたらと身売りを勧めてくるようになったという。
「身売りって?」
「だ、か、ら、娼館とか、いやらし~い所に売られるってことニャン!」
そんなことがあるなんて、この異世界の物騒さに僕はことばを失ってしまった。
「商会とは、ジョンズワート交易商会のことか?」
ガンザさんの指摘にミルテさんは勢いよくうんうんとうなずいた。
「屋台とお金を借りた時はものすごく親切だったニャン。でも、あとで噂を聞いて驚いたニャ…。」
ジョンズワート交易商会って、僕は知らなかったけどこの王都最大の商人の組織らしい。ミルテさんの言う噂とは、その商会は裏ではあくどい事をしているという噂が絶えなくて、役人も賄賂で手を出さないんだとかいう話だった。
「お金の力で悪事をもみ消すなんて!」
「あニャ。お金自体はわるいものではないニャ。まちがった使い方をする連中が悪いニャン♪」
ミルテさんは怒る僕をなだめるように長いしっぽを絡めてきて、くすぐったいやら気持ちいいやらで、僕はガンザさんに叱られないかとビクビクしたけど、彼女は険しい顔でひとりごとを言いながらうわの空だった。
「ジョンズワート交易商会か…。」
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