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二人の景色
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正一と奈々は各務ヶ原駅で待ち合わせをしていた。
駅前で正一は奈々を見つけて声をかけた。奈々は満面の笑顔で正一をハイタッチで迎えた。
二人は高山本線で西へ向かう。
「今日は何度も登ってる山だから安心してよ」と奈々は案内役に自信を見せた。
「うん。よろしくね」
「それじゃ行こうか」
バス停を降りて歩きはじめる。奈々は最初こそ普通に登山していたが、途中でバリエーションルートに入っていく。
「あの、大丈夫なの?」
「任せて。この道は何度も来て開拓してるからね」
さらにコースアウトして道なき道を進んでいく。
慎重に崖のような斜面を下って行くと、山道にたどり着く。
「ここは昔に破棄された道の名残らしいね。でも歩いて行けば表に出られるから安心するといいよ」
歩いて行くと日照が悪くなり、巨大な枯れ木などがミステリアスな雰囲気を醸し出していた。
「なんでこんな道を……」
「だってさあ」
奈々は正一に背を向けて、服を脱ぎ始めた。
「大自然に身を委ねて自由を満喫したいのさ。ここなら人通りが少ないからね」
「……ああ、なるほど」
上半身裸の奈々をあまり見ないようにしながら正一は歩き続ける。
それでも、正一は奈々に見とれていた。
ただ身体を見ているわけではなく、自由を愛する奈々に憧れの念を抱くようになっていった。
ミステリアスな山道をしばらく歩くと一般ルートに戻り、改めて山頂を目指した。
山はさほど高くないので、二人が楽しくおしゃべりをしているとすぐに頂上へたどり着いた。
山頂の雄大な景色に正一は思わず息を呑んだ。
「正一君、素晴らしい眺めだと思わないか」
「うん……今までで一番かもしれないな」
きっとそれは、奈々と同じ景色を見ているという実感がそう思わせている部分もあるのだろう、と正一は思った。
「奈々さん、今何よりも隣に奈々さんがいることが幸せなんだ」
「正一君……」
「奈々さんと一緒にいると本当に心地がいいんだ。……あのっ、好きです。俺とつきあってください!」
奈々は複雑な表情を見せた。
「ありがとう、正一君。だけど私達はまだ会ったばかりで君の気持ちに応えるのは難しいんだ」
「うんそうだよね。つい焦ってしまって、ごめんなさい」
「いいんだよ正一君、君の気持ちは本当に心に響いているし、とてもうれしいんだ。だから」
奈々はそっと正一に身体を近づけると、静かに頬に口づけをした。
「私も今の気持ちを伝えられたかな?」
「奈々さん……」
正一も奈々の頬にキスを返した。
こうして二人は幸せな気持ちで下山した。
その日の夜、正一は家族三人で食事をした。
母が席を外したのを見計らい、父が正一に話しかける。
「お前今日何があったんだ?女の子に告白してOK貰ったような顔しやがって」
「OKは貰ってないよ」
「お、何だ?何かあったんだな」
正一は渋々といった口調で、告白したことを話した。
「なんだ、また豪快に撃沈したのかと思ったら確定リーチじゃないか」
「まあね」
「あーあ、リア充爆発しろー」
「それが親が息子に言う言葉か……」
正一は父の励ましに感謝の意を示して部屋に戻って行った。
駅前で正一は奈々を見つけて声をかけた。奈々は満面の笑顔で正一をハイタッチで迎えた。
二人は高山本線で西へ向かう。
「今日は何度も登ってる山だから安心してよ」と奈々は案内役に自信を見せた。
「うん。よろしくね」
「それじゃ行こうか」
バス停を降りて歩きはじめる。奈々は最初こそ普通に登山していたが、途中でバリエーションルートに入っていく。
「あの、大丈夫なの?」
「任せて。この道は何度も来て開拓してるからね」
さらにコースアウトして道なき道を進んでいく。
慎重に崖のような斜面を下って行くと、山道にたどり着く。
「ここは昔に破棄された道の名残らしいね。でも歩いて行けば表に出られるから安心するといいよ」
歩いて行くと日照が悪くなり、巨大な枯れ木などがミステリアスな雰囲気を醸し出していた。
「なんでこんな道を……」
「だってさあ」
奈々は正一に背を向けて、服を脱ぎ始めた。
「大自然に身を委ねて自由を満喫したいのさ。ここなら人通りが少ないからね」
「……ああ、なるほど」
上半身裸の奈々をあまり見ないようにしながら正一は歩き続ける。
それでも、正一は奈々に見とれていた。
ただ身体を見ているわけではなく、自由を愛する奈々に憧れの念を抱くようになっていった。
ミステリアスな山道をしばらく歩くと一般ルートに戻り、改めて山頂を目指した。
山はさほど高くないので、二人が楽しくおしゃべりをしているとすぐに頂上へたどり着いた。
山頂の雄大な景色に正一は思わず息を呑んだ。
「正一君、素晴らしい眺めだと思わないか」
「うん……今までで一番かもしれないな」
きっとそれは、奈々と同じ景色を見ているという実感がそう思わせている部分もあるのだろう、と正一は思った。
「奈々さん、今何よりも隣に奈々さんがいることが幸せなんだ」
「正一君……」
「奈々さんと一緒にいると本当に心地がいいんだ。……あのっ、好きです。俺とつきあってください!」
奈々は複雑な表情を見せた。
「ありがとう、正一君。だけど私達はまだ会ったばかりで君の気持ちに応えるのは難しいんだ」
「うんそうだよね。つい焦ってしまって、ごめんなさい」
「いいんだよ正一君、君の気持ちは本当に心に響いているし、とてもうれしいんだ。だから」
奈々はそっと正一に身体を近づけると、静かに頬に口づけをした。
「私も今の気持ちを伝えられたかな?」
「奈々さん……」
正一も奈々の頬にキスを返した。
こうして二人は幸せな気持ちで下山した。
その日の夜、正一は家族三人で食事をした。
母が席を外したのを見計らい、父が正一に話しかける。
「お前今日何があったんだ?女の子に告白してOK貰ったような顔しやがって」
「OKは貰ってないよ」
「お、何だ?何かあったんだな」
正一は渋々といった口調で、告白したことを話した。
「なんだ、また豪快に撃沈したのかと思ったら確定リーチじゃないか」
「まあね」
「あーあ、リア充爆発しろー」
「それが親が息子に言う言葉か……」
正一は父の励ましに感謝の意を示して部屋に戻って行った。
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