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本編 浮島編

異空間ダンジョン

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「ようしっ。その新しく出現したダンジョンとやらを、見に行ってみるのじゃ。ほらっティーゴよ。早う行くぞ」

 パールが意気揚々と先頭を切り、俺の前を歩いて行く。

「はいはい」

 そんな慌てなくてもだな? ダンジョンは逃げないと思うよ?

 って言うか、ダンジョンは異空間のどこに出現したんだ?

ピコン!
 
 異空間ではなく【天使の楽園】ですよ? ちなみにダンジョンは森の反対側に出現しています。

「わっ!」

 再び怒り気味の声が脳内に響く。

 はいはい、分かったよ。【天使の楽園】な。

 分かって頂けたのなら良かったです。では私はこの辺で失礼します。


 喋りかけてくるとか……ホント不思議な空間だぜ。

 異空間に気をとられ立ち止まっていると、パールがスタスタと森に向かって我先にと歩いて行っている。
 全く……後ろくらいたまには振り向いてよ。

「おおいパール! そっちじゃない。森の反対側にダンジョンがあるらしいぞ」

「なっ!? それを早く言わんか」

 パールは口を膨らませ引き返して来た。ええー?! 俺が悪いのか?





 

 なんにも無い平原を、パールと二人プラプラと歩いていくと、今まで無かった大きな岩山が目に入る。入り口のような穴もある……どうやらアレがダンジョンらしいな。

「ほう……アレが新しく出来たダンジョンか……」

「わっ!? ちょっパール置いて行くなよっ」

 ダンジョンを見つけ、フワリと飛んで行くパール。俺は必死にその後を走って追いかける。

「はっ……はぁっ。こっここがダンジョンの入り口」

 ダンジョンの入り口であろう高さ五メートルの洞穴の前で立ち、どんな様子なのかと中を覗くも、全く奥まで見えない。これは中に入って見ないと分からないか。

「みたいじゃのう。中に入って見るか」
「だな」

 二人揃ってダンジョンの中に入ると、陽気な音楽が流れてくる。

『チャッチャラー♪ 天使の楽園ダンジョンにようこそ♪ お客さまが一番初めのご来場者様になりま~すっ』

「「えっ?!」」

 どこからともなく陽気な声か聞こえてくる。

『ヘイヘイ? ノリが悪いよぅ? 楽しく楽しく♪ ボクっちはこのダンジョンマスターをしてるんだ。まぁマスターとでもスターとでも好きに呼んでね♪』

 俺とパールは目を見合せ、お互い困惑しているのが表情で分かる。

「これは……ダンジョンに意思があるのか?」
「じゃのう……なんとも奇妙な」

『奇妙とは失礼だな? ボクっちだって傷付いちゃうからね? プンオコだよ?』

「あっごめんなっ? 悪気はないんだよ」
「なんとも……面妖な喋りをしおって……」
「パッパール! なんでもないからっ気にしないでくれっ」

 確かに変な喋り方だとは俺も思うよ。でもな? ややこしい事になりそうなのは重々に分かるから。逆撫でしないに限る。
 ってか、なんで俺がダンジョンに気を使わなきゃいけないんだよ。

『むう~まぁ良いか。天使の楽園マスターに免じて許す許す。ボクっちは心が広いからねー♪』

「おっおう? ありがとうな」

『ってな訳でぇ、この天使の楽園ダンジョンについて説明するね? 準備はいい』

「ごちゃごちゃとっさっモゴッ!?」
 また文句をいいそうだったので、慌ててパールの口を塞ぐ。面倒臭い展開しか想像出来ないからな。

「もちろん!」

「フゴッ?!」
「パールっちょっと黙って話を聞こう? なっ? じゃないと話が進まないだろ? 分かった?」

「フゴッ」

 理解してくれたのか、パールは静かに頭を上下させる。

「んんっ……ったく目上の者をもう少し敬わんかっ」

 手を話すと、またいつもの様に悪態を吐くパール。俺にたいしてならいくらでもどうぞ。

『じゃあ説明するね? このダンジョンは登録する人のレベルによって内容が変わる仕様になってるんだ』

「登録!?」

『ほらぁ。中央にある台座に埋め込まれた輝く石があるだろ? それに触れるだけで登録は完了するよ。ほらっ触れてみて?』

 中央にある台座ってあれか!? 確かに丸くて、子供の頭くらいの大きさの、七色に煌めく石が埋め込まれている。
 あの石を触るのか……少し緊張するな。

 などと俺が考えていたら、パールが「コレでいいのか?」っと石に触れていた。

「えーーー!?」

 おいおい全く躊躇がないんだな。さすがですよカスパール様。

ピコン!

《魔王ルシファー・ダンジョンレベル99》

『おおっと!? いきなり最高レベルからのスタートとは……一体なに者さぁ。この上限値はクリアすると限界突破するから頑張ってみてねー♪』

「ほう……悪くないのう」

 最高値レベルが嬉しいのか、パールは少し悪戯にニヤリと笑う。
 そんなパールをダンジョンマスターがさらに煽る。

『今から99レベルダンジョンに挑戦しちゃう?』

「ほう……挑せっモゴッ!?」

 俺は再びパールの口を塞ぐと小声でパールに伝える。

ヒソッ
「まだレミアール王国や鳥人達の事とか終わってないだろ? それが片付いたらダンジョンに挑戦しような? 分かった?」

「フゴッ」

「じゃあ一旦ここを出るからね? 良い?」

「フゴッ」

 パールが目で分かったと俺に訴えてくるので、手を離した。

「ダンジョン挑戦はまた今度にするよ。その時はよろしくな? ダンジョンマスター」

『あれぇそうなの? 残念だけど仕方ない。また遊びに来ってねー♪』

「ああっ」

 俺とパールはダンジョンを後にし、異空間にふわふわと浮かぶ、浮島フワッティに向かうのだった。

 それにしても……人によってダンジョンレベルが変わるとか、中々面白いな。
 異空間っじゃ無かった。天使の楽園に住む仲間たちにも、このこと教えてやらないとだな。




 






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