上 下
276 / 314
本編 浮島編

この街にも助ける人がいたよ

しおりを挟む
「なぁリィモこの場所かな?」
『そうですね。ここで間違いないですね。弱った気が沢山集まっています』

 それにしてもだ、パールの奴は抜け目が無いなぁ。

 俺達は今、レミアールの街にこっそりと潜入していた。
 この時、殆どの人達や兵士達が、国の中心にある丸い建物に集まり、空中を舞う魔道兵士達を夢中で見つめていたので、誰も俺たちに気付く事は無かった。
 なぜならハクとロウが再び、空中ダンスショーを始めたからだ。もちろんパールの指示でなんだが、空中ダンスショーは本当に必要か? 面白がってるだけじゃ? それも本当に作戦のうちなんだよな? まぁそのおかげで誰にも気付かれずに、潜入できてるんだがな。

 そもそもなんでこんな事になったのか、それはパーフェクトリザレクションの美しい煌めきをウットリと見ていた時だった。パールが突然爆弾発言を投げて来たんだ。

「ティーゴよ、この国の奴らはの? 侵略した国の者を奴隷として扱っとるらしいんじゃ。ワシは人を奴隷として扱うなど好かん」

「えっ……奴隷だって!?」

「そうじゃ、ドノーキンがペラペラと国の内情を話しておったわ。もうそろそろじゃの。街も人も元に戻ったのう」

 パールがそう呟くと捨て台詞のように「ティーゴはその奴隷達を見つけ出し、解放してやってくれ! ワシはレミアール国の王を説教しに行って来る! 奴隷達の事は頼んだのじゃ」そう言ってレミアールの兵士達の所に飛んで行ってしまった。

「ちょっパール? 待ってくれよ! 俺ががぁ!?」

 てな事があり、俺は今リィモと二人で、街に潜入し奴隷にされている人達の居場所を探索魔法で探し出し今に至る。なぜリィモと二人なのかというとだな。

 パールが飛び去った後、俺はどうしようかと考え、少しの間立ち尽くしていた。
 スバルや一号、三号達はというと、パールの後を追って飛んで行ってしまった。
 カスパール様姿のパールと、少しでも長く一緒に居たいんだろう。その気持ちは分かるよ。大好きなんだよな。

 それでキラに、街の端っこにでも降ろして貰おうかなと考えていたら、リィモが空を飛んでやって来たんだ。「ティーゴさんパーフェクトリザレクションを使ったみたいですね! 僕は初めて見ました」少し興奮気味のリィモに、事の経緯を説明すると、「僕にも手伝わせて下さい。人助けをしたいんです」と言ってくれ、リィモの浮遊魔法で街の端に降り、探索魔法を使い今に至る。

 大きな倉庫の様な建物の扉を開けると…………ぐっ。

「…………これは」
「………………。」

 俺とリィモは、余りの酷さに言葉を失った。だだっ広い倉庫の中で傷だらけの人達が横たわっていた。みんな足に重りを付けられていて動きにくそうだ。

「なぁ……あんた達はなんだ? この国の奴じゃないよな? 俺たちに何の用だ?」

 重りを付けられた右足を、ゆっくりと引き摺りながらやせ細った男の人が近寄ってきた。
 いきなり現れた俺とリィモを、怪しんでいるのか?

「あんた達がどこの国の奴でもいい、なぁ頼むよ。寝込んでるやつや、小さな子供達だけでも助けてくれないか? 俺の命でもなんでも差し出すから……なぁ! お願いします。お願いします!」

 男の人は、地面に頭を擦り付けるように頭を下げる。

「わっちょっ頭を上げてくれ! 貴方の命を差し出してくれなくても、俺はここに居る人達みんなを助けに来たんだ! だから安心してくれ」

「そうですよ! 皆様をお助けします」

「…………えっ!? みんなを……助け……」

 言葉を俺たちに返す前に、男の人は目からポロポロと涙を流し、嗚咽を漏らし泣いていた。

 俺とリィモは、そんな姿を見て固く誓った。

 絶対に助けてあげるからな。
しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

大賢者カスパールとグリフォンのスバル

大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。 彼が得れる魔法は全て修得した。 そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。 そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に… コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。 このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。 本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。 上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。 勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~

黒色の猫
ファンタジー
 両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。 冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。 最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。 それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった… そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。