260 / 314
本編 浮島編
過去
しおりを挟むアレクとロックは、見つめ合ったまま微動だにしない。
これって……まさかケンカになったりしないよな? もしそうなるなら、俺が止めないと。
一人そんな事を脳内で考え悶々としていたら、二人が急に動き出した。
おいおい? 殴り合いとか止めてくれよ?
それなら俺が二人の間に割って入らないと。
急いで二人の間に入って止める。
「アレク、ロックちょっと待ってくれ!」
「「えっ?」」
なんと二人は土下座していた。
間に割って入った俺に向かって。
「えっ?」
何この可笑しな展開は? 俺が間に入った所為で余計に変な構図になってるぞ? この場所に立ってる事がとんでもなく恥ずかしくなってきたので、慌てて後ろに下がった。
「あっその。どうして二人揃って土下座してるんだよ」
ロックとアレクは、顔を上げ困った顔をしている。まだ二人は何も話さない。
なんなんだ。この妙な緊張感は、こんな時に獣人と鳥人の間にあった騒動を、知っているパールがいてくれたら……
「ええとな? アレクにロック、お前達の間に何があったかは知らないが、仲良くしないか?」
「あっ……気ぃ使わせてすまねぇな」
先に沈黙を破ったのは、アレクだった。
「俺はこの異空間にある獣人街をまとめている。ヒョウ獣人のアレクだ。過去とはいえ、鳥人族が地上に住めなった争いを、俺達獣人族は何百年もずっと後悔していた。だからいつか鳥人族に会える事があったなら、謝りたいと代々言い伝わってきたんだ」
そう言い終えると、アレクは再び頭を下げた。
争い? 何か揉め事があったんだろうか?
「いやっアレク殿! 頭を上げてくれないか。私は鷹鳥人のロックだ。悪いのは全て、私達鳥人族の先祖なのだから……」
ロックは少し言いにくそうに口篭る。
そしてまた沈黙が続く。
あー……! この何とも言えない空気は耐えられない。
「あのさ? 俺は過去に何があったのかなんて知らないんだ。教えてくれないか?」
「あっそっそうか……そうだな? すまねぇなティーゴ。ええとだな……」
アレクが少し言いにくそうに口を開くと「過去にあったお話は私がします」とロックが前に出た。
「鳥人族の愚かな行為を語り辛いでしょう?」
「いやっそんな訳では……はは」
「では過去に何があったのか、話させてください」
ーーー
今から約五百年ほど前ですかね。獣人族の国【マーレ獣人国】と鳥人族の国【アシル鳥人国】という二つの国が隣接してありました。
今はどちらの国も滅びてないですがね?
二つの国は友好国として、仲良く平和に暮らしていたした。
だがある時鷹の王が、獣人国に戦争を仕掛けたのです。
鷹の王とは鳥人族の王の事。鳥人族は代々鷹鳥人が王となり国を取り纏めていました。
だが戦争をしかけた鷹の王は愚王だった。
この戦いで何千もの鳥人族が亡くなった。もちろん獣人国だって無傷では済まなかった。
この愚かな戦いで、どちらの国も滅び、大勢いた獣人や鳥人達の数は数百人となってしまった。
こんな戦いをするべきじゃ無かったんだ。
獣人達は自分達がまた住める場所を見つけたけど、愚かな戦いをしかける野蛮な鳥人族の住める場所などありませんでした。
私達鳥人族は、このまま死ぬ道を選ぶしか残って無かった。だってどこにも住む場所がないんですから。
そんな時でした。優しい大賢者様に出会ったのは「地上に住む場所がないのなら自分達で新たに作ればいいじゃろう? 例えば空とかのう」と我らに今の浮島フロッティを授けてくれたのです。
ーーー
「っとこんな感じです」
全てを話し切り、少しスッキリしたのか、ロックの顔はもう青褪めてなかった。
おいおいちょっと待ってくれ。
思っていたよりも、ずっと壮大な話だったぞ? ロックはサラッと語ったけど、国が滅んでしまったんだよな? 獣人国と鳥人国があったのも初めて知ったし……
「それだとロック? 鳥人族だけが悪いみたいだろ?」
「アレクさん……?」
「聞いてくれティーゴ、俺達獣人族の罪を。俺達獣人は鳥人達が住む場所もなく困っていた時に、助けることなく見放したんだ。放っておけば、鳥人族が滅んでしまう事が分かっていてな。本当なら自分達の住める土地に誘うべきだったんだ……」
「アレクさん……」
アレクはまるで、自分がした事のように辛そうに語る。お前が悪いんじゃないんだぞ? 過去のご先祖様達がした事だろ?
「……アレク……その」
俺がアレクやロックになんて言うか戸惑っていたら
「またせたのう! くくっ魔道具の完成じゃ。むふふ」
パールが意気揚々と少しニヤつきながら、おーちゃんの肩に乗り戻って来た。
パールよ? さっきからタイミング悪すぎな?
12
お気に入りに追加
7,512
あなたにおすすめの小説
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
大賢者カスパールとグリフォンのスバル
大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。
彼が得れる魔法は全て修得した。
そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る
ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。
そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に…
コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。
このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。
本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。
上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。
勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。