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本編 浮島編
獣人族と鳥人族
しおりを挟む「さぁ! 一旦異空間に戻ってオーちゃんに相談じゃ」
パールが意気揚々と異空間の扉に向かって歩いて行くので、俺は慌てて追いかけパールを呼び止める。
「パール! ちょっと待ってくれ、船を浮かすだって? 正気か?」
「ティーゴよ? 何をそんなに驚いて? あの浮島じゃって、ワシが錬金術師と共に作り上げたんじゃから! こんな小さな舟を飛ばす事など、容易いもんじゃ」
いまサラッと凄い事を言ったけど、やっぱりお前が作ってたんだな。浮島を……。
大賢者カスパール様の偉業は、本に書かれてない事が多過ぎないか? 何百年も前に、島を空に飛ばしたなんて記述が残ってたら、きっと大騒ぎだぞ。
「はぁ……相変わらず規格外すぎるよ」
「なっ何がじゃ!?」
「色々だよ」
「ぬう?」
俺とパールが異空間の扉入り口で、あーだこーだと話をしていたら、ロックが少し困惑した面持ちで、俺達の後ろに立っていた。
しまった。ロックに異空間の説明やら、この後どうするかを相談してなかったな。
「ロック……ええとだな? 俺達はこの船で浮島フロッティに向かう事にするよ」
「えっ?! 船でどーやって……? 私が今から仲間たちを呼んできて、背中に皆様を乗せてお連れしようと思っていたんですが……」
「その必要はないのじゃ! 今から船を飛ばす準備をする。小一時間もあれば、完成するじゃろうて。してロックよ? お主も一緒についてくるか?」
「えっ……ついて?」
パールの言葉に困惑が隠しきれず、ロックは終始頭を傾げている。うん。その気持ちわかるぞ。
「この扉の奥は、別世界ワシらは異空間と呼んでおるが……ふむ? この呼び名も何か考えんとじゃな」
「別世界……ですか?」
「そうじゃ。まぁ見てみるのが早いか」
扉を開いて、ロックに中の世界を見せる。すると口を開け固まってしまった。
……うん安定の反応だな。みんな初めて異空間を見るとこうなるんだ。
しばらくすると、ロックはやっと口を開いた。
「あわっ!? すすっすみません……想定の範囲を超えたため……脳が理解に追いつかなくて……」
「まぁビックリするよな。中に入ってくれ、仲間を紹介するよ」
「…………はい。ゴクッ」
ロックは恐る恐る異空間の扉をくぐった。そんな緊張しなくても、とって食ったりしないのにな。
「船の中に別世界があるなんて……」
ロックは驚愕しながらも、異空間を探索するように、キョロキョロと見回している。
「じゃ! ワシはオーちゃんの所に行ってくるからの」
「分かったよ」
「あっ! そうじゃ。言い忘れておったが、異空間には獣人達も住んでおるからの」
パールが付け足すように言い残し、オーちゃんの所に走って行った。
「……獣人?!」
それを聞いたロックの顔色が、ドンドン青ざめていく。
なんだ? どうしたんだ? 獣人は仲間じゃないのか?
パールよ! 説明せずに言うだけ言って去るとかないだろう。
俺はこの状況をどうしたら良いんだよ。
「あの……ロック? 獣人と何か問題でも?」
「獣人とは……過去に色々とありまして、私達鳥人族が空に住むようになった原因でもあります」
「えっ?」
何だって? 原因が獣人に?
獣人と鳥人の間に何があったんだ?
「……一体何が? あっ!」
ロックに話を聞こうとしたら、タイミングは悪いもので、アレクが手を振りながら、こちらに向かって走ってきた。
だが、ロックの背に大きな翼があるのを見つけると、アレクは足を止めた。
「あれは……ヒョウ獣人……」
アレクとロックが、お互いを見つめあい固まってしまった。
ちょっと待ってくれ?!
パールの奴め、とんでもない爆弾を残して行きやがったな。俺は獣人と鳥人の間に過去何があったかなんて、全く知らないんだぞ!
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