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本編 燦聖教編

謎のグラス

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「んん……?」

『主起きたのか?』

「銀太……おはよう」

 目が覚めると、いつもの様に銀太のふわふわの腹毛を枕にして寝ていた。
 倭の部屋で、他のみんなも好きなように雑魚寝してる。

 ええと……祭壇の前で、創造神様と一緒に呑んでたのは、なんとなく覚えてるんだけど……
 どうやって家に帰って来たんだ?

 俺がうーむと一人考えていると、その答えを銀太が教えてくれる。

『主は祭壇の前で寝ておったのだ。それを我が家に運んできたのだ! フンスッ』

 褒めてくれと言わんばかりに尻尾をブンブン回して。

「ブッ……」

 朝から銀太が可愛すぎる……。

『何がおかしいのだ?』
「ん~?」

 不思議そうに俺を見てる銀太の頭を、もふもふを堪能するかの様に撫でまくる。

『ぬっ……ふっふうむ』

 銀太が気持ち良さそうに寝そべるので、ついでにブラッシングしてやるか。俺は銀太の毛並みを専用のブラシで梳いていく。

 ふぅーっ朝から癒されたな。

 今日はソフィアとお別れの日だ。時間はお昼くらいになるんだろうか? 仲良くなったぶんその事を考えると少し寂しい。

「そー言えば、ソフィアはどこに居るんだ?」
『ソフィア? あの女子ならベヒィの家に泊まったんじゃないかのう? 三号と一号……それにシファもおったかの?パジャマパーティーとやらをするらしい』
「パジャマパーティー? 何だそれは……」
『我も良く分からぬが、シファにパジャマなるものを作って貰ってたのう……』

 パジャマ……よく分かんないけど、俺が創造神様に潰されてた間に、みんなは楽しくやってたんだな。少し寂しいような……あっ! 創造神様と言えば。

 俺、創造神様にグラスを貰ったんだよな。
 しまった……壊したりしてないよな? どこに置いたか全く記憶がない。

 そりゃそうだ、いつ酔い潰れたのかさぇ分からないんだからな。

「あのさ? 俺の近くにグラス落ちてなかったか? キラキラしてる……」

『グラス? もしかしてコレの事か? 主が手に握りしめてたんじゃが、運ぶ時に落としたら困ると思って我が咥えて運んだのだ!』

 枕元に置いてあったグラスを、鼻先で俺の前に出して来た。尻尾の褒めてアピールも一緒に。

「そうなのか! さすが銀太だな。最高に賢いよ銀太は」

 そう言って再び銀太をヨシヨシともふる。

『そうなのだ! 我は賢いのだ』

 銀太にご褒美だと、ケーキを出してやる。
 最近銀太は、ふわふわケーキがお気に入りで、毎回これを欲しがるんだよな。

『うまっ美味いのだ。ふわふわがとけてすぐ無くなるのだ。それがちょっと寂しい。でも美味いのだ』

 銀太がケーキに夢中になっている間に、創造神様から貰ったグラスを確認する。

 透明なんだが、このキラキラした輝きは何だ? 普通のガラスじゃないのかな……? 何の素材で作られてるんだろう?

 俺がグラスを掲げて光を当てていると……

「何をしてるんじゃ?」

 パールが目を覚ましたらしく、グラスを掲げている俺を、不思議そうに見て来た。

「いや……このグラス何だけど……」

 創造神様から貰ったと言おうとする前にパールに「なんと?! 創造神様から貰ったのか?」と先に言われる。

「……そうなんだ。ははっ」

 何で言ってないのに分かるんだ? 

「ティーゴよ? このグラスを鑑定してみよ」

 えっ……鑑定? そうか鑑定で見たんだな。

 パールがジト目で俺を見る。何だよその目は……なにかやらかしたみたいじゃないか。


《鑑定》

【聖杯】

ランク ??判定不可

 創造神がティーゴの為に作ったグラス。
 創造神がティーゴと酒を酌み交わす時に使うグラス。

 グラスに入れた食材で、酒が作れる。グラスに入れると、どの様な食材からも酒が作れる。

 ティーゴがグラスを持ち欲しいと願うと、どの様な薬もすぐに作れる。エリクサーが欲しいと願えばエリクサーが、毒消が欲しいと願えば毒消しがグラスから溢れてくる。


 えっ……何これ?
 ただのグラスじゃないのか?   
 何だよ聖杯って!
 しかもティーゴの為に作ったグラスとか……

 パールを見ると、今更気付いたか? と少し呆れている。
 そんな顔するなよ! 俺が欲しいとか言ってないんだからな?

「パール……これ聖杯らしいな」
「はぁぁ……今頃そのグラスの凄さに気付くとは? ティーゴらしいと言うか……どうやって貰ったんじゃ?」
「どうやって……?」

 俺はパールに貰った話をすると、再び大きく溜め息を吐いたあと「ティーゴは計算高いのう」と言った。

「何でそうなるんだよ?」
「じゃってグラスなどアイテムボックスに入っておるじゃろう?」
「……あっ!」

 そー言えばそうだった。そんな事あの時はパニクッてて、思い付かなかったんだ。うわぁ……創造神様は絶対分かってたよな……ううっ何だか恥ずかしい。

 そんな俺の姿を見てパールは少し笑う。

「ククッ……創造神もティーゴのそんな所が気にいったんじゃろうの」
「なんだよ? そんな所って」

 パールは意味深に笑うと「さぁ朝メシじゃ。腹が減った」と話を変えた。

 ええ? 俺の質問の答えは?
 と再びツッコミたかったが、他の聖獣達が目を覚まし、それどころじゃなくなってしまった。

 朝ご飯作るか!
 ソフィアはベヒィのミルクやチーズを気に入ってたからな。よし朝食はチーズいりふわふわオムレツにしよう。

 そうと決まったら、ベヒィの所で新鮮な卵とミルク、それにチーズを貰わなくちゃ。

「ベヒィの所に食材を貰いに行ってくる」
「分かったのじゃ」
「今日は外で食べよう、テラスで待っててくれ」

そう伝え家を出ようとすると

『主~我も一緒に行くのだ』

 俺は銀太を連れて、ベヒィの家を訪ねたのだが……応答がない。

 おかしいなぁ? いつもならこの時間はコカトリスの卵を集めてるのに……

「おーい? ベヒィ?」

 仕方ないのでベヒィの家に入ると……

「なっ何だこれは?!」

 家の中に大きなベッドがあり、その上でべフィとソフィアそれに一号、三号、シファが寝ていた。

 見た事もない奇妙な服を着て……。

『んん……ティーゴ? 大声出して五月蝿いわよ。ふぁ~あ』

 俺の声で三号が目を覚ます。目を擦りながら欠伸をし、まだ少し眠たげだ。

「三号……これは一体?」

 三号は少し気怠そうに両手を上げる。

『んん~っ! ああコレ? これはオーちゃんがみんなで寝れるようにって、パジャマパーティーのために作ってくれた特製ベッドよ。ふふっ大きいよね』

 だから何なんだ? パジャマパーティーって? どんなパーティーなんだよ。こんな大きなベッドが必要なのか?

 それに、みんなが着てるその変わった服はなんだ? 赤とか青の上下同一色で作られた服、それがパジャマだと言うのか? 

「三号……その服は?」

『ああコレ? なんて言ってたかしら? ええと……そう! ジャージって種類のパジャマらしいわ』

「ジャージ?」

『そうなの! ソフィアが「いつもこれを着て寝ていた」って言ってて、シファに作って貰ってたの。なんか羨ましくなっちゃって、みんなもお揃いで作って貰ったの。ふふっ』

「ジャージ?」

 パジャマには種類まであるか? 奥が深いな……パジャマパーティーとやら。

 俺はとりあえずベヒィを起こし、卵とミルクとチーズを貰った。

「朝ご飯を食べに来いよー」と伝えて。

 それにしても、知らなかった……貴族ってのはあんな変わった服で寝るのか……寝る時も、もっと豪華な服で寝てるとばっかり……新発見だ。


 などと思っていたティーゴだけど、違いますよ。貴族はジャージで寝ませんよ。

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