241 / 314
本編 燦聖教編
妖精王探し
しおりを挟むとりあえず、妖精王をどうやって探すか……だよな?
この広い世界で……な。
まだ行ったことがない国が沢山ある中で、俺達には見えない妖精王を探すって……はぁ。
これは……途方もないな。見つけることが出来るのか? 不安でしかない。
少し沈黙が続くと……カリンがポソっと話しかけて来た。
「あの……ティーゴ様。お話を少し聞いていたんですが……」
「カリン?」
カリンは俺達の話を聞いていて、何か思い付いたらしい。
「私の想像なのですが……お兄っ…グリモワールが禁忌の魔法で異世界人達を召喚した時に、この世界の時空が歪んだので……もしかしたらその時に、この国と異世界に繋がる道が出来て……ソフィア様の所の妖精王はそれに巻き込まれこの世界に来たたのかな?って」
そう言ってカリンはチラリとグリモワールを見る。
しかし当の本人は話が聴こえている筈なのに、下を向いて座ったまま何の反応もしない。
ううん? 何かの反応があっても良い筈なんだが。
グリモワールはこの村に来てから何も言葉を話さない。
その代わりに、パールが何かに気付いたのか、ソワソワしだす。
「そうか……なら!」
カリンの話を聞いて何か閃いたらしく、パールの目が爛々と輝く。
「ソフィアよ! 妖精王はこの辺りにおるぞ。この近くにお主の世界とこの世界を繋いでいる鍵があるはずなんじゃ。お主は何処に現れた? きっとその場所近くに妖精王とやらもおるはず」
「えっ? 何処に……? 私は気がつくとこの村近くにある金色の花畑に立っていました」
「金色……グーテの花か! よし、そこに行ってみるのじゃ」
俺達はグテ村を出て、グーテの花畑がある森に歩いて行く。
グリモワールの様子が少しおかしかったので、カリンとグリモワールは村に待機してもらった。カリンがグリモワールを見てくれるから大丈夫だろう。
「この先にあるあのお花畑に気がついたら立っていました」
ソフィアが先に見えるグーテの花畑を指差して教えてくれる。
そこは辺り一面、見事な金色のグーテの花が咲き誇っていた。
「えっ? こっち?」
何やらソフィアは空を見て呟いている。もしかして一緒について来た妖精達と話をしているのか?
その様子が気になりじっと見ていると不意に俺をみてフニャりと破顔した。
「ティーゴ様! ついて来た妖精さんが言うには、あっちからかすかに妖精王の魔力を感じるそうです!」
少し得意げにソフィアが森の奥を指差す。手がかりが早速見つかり嬉しいのか張り切っている。
「さぁ! 行って見ましょう。私について来て下さい」
「ふふっ了解だ」
ソフィアはそう言ってガンガン森の奥に向かって歩いて行く。
綺麗なドレスが汚れるの事なんて気にする事なく。
不思議な子だな……。貴族様が何も気にせずに森の中に入るとか……普通は嫌だと思うんだが。
「ティーゴ様ー! 何してるんですか? 置いていきますよ」
うっそりとその姿を不思議に見ていたら、足が止まっていたらしくソフィアに急かされる。
「あっ……っと! 待ってくれ」
俺は慌ててソフィアの所に走って行く。
『ティーゴの旦那! 何ポーッとしてんだよ。早く妖精王とやらを見つけてさ! 約束の肉祭りしようぜ』
スバルが勢いよく飛んできて頭に乗ると、ぶつぶつと文句を言って来た。どうやら妖精王探しより肉祭りで頭がいっぱいらしい。
「そうだったな、早く見つけて異空間で肉祭りしようぜ」
スバルの頭を優しく撫でてやる。
『ふふっ……ティーゴの手は気持ちいいな。やっぱり一番だ』
何と比べているのやら……まぁ一番は嬉しいけどな。
「あっつっ」
「大丈夫か?」
前を歩くソフィアが、よろけて倒れそうになる。
「だっ大丈夫! ちょっと……この道無き道を歩くのが難しくて……森は歩き慣れてるんですが、この森はかなり地面がでこぼこしてる上にこの靴じゃ……」
そう言って高そうな靴を脱いだ。
森は歩き慣れてる? 貴族令嬢が? かなり違和感しかないが今はそれよりもソフィアの足だ。
豪華で華奢な靴、それで森を歩くのは困難だろう。よく見ると足も赤く腫れている。
「治れ」
ソフィアが赤く腫れた足に触れると瞬く間に治癒された。魔法も使えるのか……
「ソフィアは回復魔法も使えるのか……凄いね」
「えへへ……少し……だけね……制御が上手く出来ないんだけど」
少し困った顔で答えてくれる。
あっ!
そう言えば、靴や服はカリン用の予備がアイテムボックスに入ってたな。
ドレスじゃないけど、この服の方が歩き易いだろう。
「ソフィア、良かったらこの服どうぞ。豪華なドレスじゃないけど、森を歩くならこれくらいラフな服の方が良いかなと……」
俺はアイテムボックスから出した服とブーツを、少し自信無げにソフィアに渡す。
「わっ! えっ! こんな素敵な洋服と靴を私が頂いて良いんですか? すっごく嬉しいです。ありがとうございます」
ソフィアは嫌な顔をするどころか、とても嬉しそうに渡した服を喜んでくれた。
この服はエンシェントスパイダー達の糸を、獣人達が紡ぎ服を作ってくれている。
最高の着心地なんだ。
靴はオーちゃんお手製。
それをあんなにも喜んでくれたら、仲間達の事を褒められた様で嬉しくてついニマニマしてしまう。
ソフィアがどうやって着替えようかと困っていたら
「よし、ここで着替えるといいのじゃ」
パールがあっという間に簡易な小屋を魔法で作ってくれた。
「一瞬で木の小屋が現れた……これを猫ちゃんが? 作ったの?」
ソフィアは驚きを隠せず、あんぐりと口を開けてパールを凝視する。
その気持ち凄く分かるよ。ずっと一緒にいる俺でさえ、小屋を立てるその早さにビビる。
相変わらずパールは規格外すぎる。
★ ★ ★
新しい洋服に着替えたソフィアは、クルクルとその着心地を確かめるかの様に楽しげに回っている。
その様子から気に入ってくれたみたいで安心する。
「はぁー♪ 何て素敵な着心地なの……モフモフ達に包まれているみたい……こんな服を知ってしまったら、他の服が着れない体にされてしまったわ……」
「ブフォ! 言い方な? 語弊がある言い方はやめてくれよ」
服の着心地を気に入ってくれたのは嬉しいんだけどな。変な言い回しはスバルみたいだぞ。
「この洋服なら何処まででも飛んで行けそうです。さぁ行きますよー。妖精達が言うにはあと少しらしいです」
着替えたソフィアの足は早かった。さっきとは別人の様に森をスイスイと歩いて行く。
もはや走っているかの様な速さだ。森を歩き慣れているは本当らしい。
十五分ほど歩くと、俺の目でみても分かるくらいに小さく光る何かが集まっている場所があった。
「いたわー!」
ソフィアはその場所目掛けて勢いよく走って行く。
「これは……トカゲの赤ちゃん?」
大きな大木の根元に、掌程の大きさの赤いトカゲ? の様な生き物が横たわっていた。
「この子が妖精王らしいです」
ソフィアが弱っているトカゲを手で掴むと、パチッと閉じていたトカゲの目が見開き、勢いよくソフィアの頭に飛び乗った。
ーーはぁーっ! 助かったぜ。美味い飯が歩いて来てくれるなんて! 死ぬかと思った……。ああっうんまー!こいつの魔力はなんて美味さなんだ。
何だこの声は……ソフィアの頭に乗っているトカゲの声か?
ーー久しぶりの魔力は美味いなぁ……。最高だ
ソフィア頭に乗っているトカゲがウットリとしている。やはりトカゲの声か。
「ソフィア……そのトカゲの声が聞こえるんだが……」
「……ティーゴ様にも聞こえますか?」
「……ええと……トカゲが美味い美味いって…」
「あわっ……そのっ。私の魔力が妖精にはご馳走様で……」
ソフィアが恥ずかしそうにもじもじしていると
ーーさっきからトカゲ、トカゲって! 俺は炎の妖精王、サラマンダー様だ。ありがとうな助けてくれて。
そう言って翼を広げてふわりと飛んだ。その姿は小さなドラゴンの様だった。
「「炎の妖精王?!」」
どうやら探していた妖精王を見つける事が出来たみたいだ。想像していた妖精王の姿とは違ったが。
これで、ひと段落するのかと少しほうっと安堵の息がもれた。
★ ★ ★
中々更新出来ず久しぶりの更新となりました。
かなりお待たせしてしまい申し訳ありません。まだ花粉症の症状は治っていませんが、少しずつですがマシになってきました。(*´꒳`*)
早く続きをお届けしたいので、なるべく間を空けず更新したいと思ってます。
11
お気に入りに追加
7,512
あなたにおすすめの小説

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

大賢者カスパールとグリフォンのスバル
大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。
彼が得れる魔法は全て修得した。
そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る
ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。
そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に…
コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。
このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。
本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。
上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。
勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。

捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。