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本編 燦聖教編
グリモワールの目覚め
しおりを挟む「リィモを起こし……話をするか」
少し落ち着くとパールは決心したのか、眠らせていたグリモワールを目覚めさせ、話を聞くと言い出した。
目覚めたグリモワールがパール達を見て、どんな反応をするのか……
「…………そうだな」
「私もお兄ちゃんと話をしたいです」
カリンもカスパールを見つめ真剣な顔で答える。
俺達はカリンが閉じ込められていた隠し部屋を出て、グリモワールの所に向かった。
「……では起こすぞ?」
「おっ……おう……ゴクッ」
起きた時、パールがどうなるんだろうとかつい考えてしまい、変に緊張して、思わず生唾を飲み込んでしまう。
パールが手をかざすと……グリモワールの閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
「……………僕……あれっ? 何でこんな場所で眠って……?」
グリモワールは目を開けると慌て起き上がり、キョロキョロと周りを見渡し……何かに気付き動きが固まる。
ーーそう……ある人物に。
「………なっ? 何でカリンが動いているの? カリンは魔獣達に……あれ? えっ? カリンが……」
「お兄ちゃん!」
カリンはリィモに抱きついた。
「……やっと……やっと話ができるんだね……」
「カリン?……えっ?」
グリモワールは自分に何が起こったのか、全く理解出来ない。
急に抱きついて来たカリンを、少しパニックになりながら見ている。
「何で? カリンが動いて……? 隠し部屋で……?! そうだっ! 僕は……僕は……あああああああああっ」
「お兄ちゃん! しっかりしてっ」
「……僕は……黒い塊に取り憑かれて……そして……頭に声が聞こえてきて……覚えている。そうだ……所々……記憶は途切れ途切れだがっ……僕はなんて事をしてしまったんだ! あああああっ」
グリモワールが、両手で自分の頭を抱えて狂ったように悲痛な声を上げる。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! っ大丈夫だからっ」
カリンはそんなグリモワールを、必死にギュッと抱きしめている。
「……僕は……なんて事を……! そうか……カリンが動いて……僕と話していると言う事は……僕は死んだんだね。そうか……死んだのか。カリンに会いたかった。僕はずっと……ずっと会いたかったんだ」
グリモワールはカリンを抱きしめ返す。
「お兄ちゃん……」
「そうやってお兄ちゃんって呼んで貰いたくて……何度も夢みたよ。でも夢でさえカリンに会えなかった……嬉しい。やっとお兄ちゃんって…呼んで貰えた……そうかあの時、僕も一緒に死ねばカリンに会えたんだ。何で気付かなかったのかな……」
グリモワールは抱きしめていたカリンを離した。
「でももう……今の僕はカリンにあわす顔がない。僕は恐ろしい事をしてしまった。僕はただ……カリンに会いたかっただけだったんだ。カリンを生き返えらせる方法ばかりを考えて、自分勝手に大勢の人達を巻き込んでしまった」
「お兄ちゃん……」
「僕には、もうすぐ地獄の使いが迎えにくるだろう。どんな咎も受けよう。それで今までして来た事が許されるなんて思わないけど……最後にカリンが会いに来てくれて良かった。それだけで僕は幸せだ」
「バカもんが! 何を勝手な事を言うておるんじゃ? リィモよ?
お主は死んでなどおらん!」
「はえっ?! カカッカスパール様? えっ? 死んでない? 何で? あれっ? えっ? あれは夢? えっ何処から夢? 僕は?」
突然パールが話に参入し、グリモワールは訳が分からず、とうとうパニックにおちいる。
パールと再会した辺りの記憶はどうやらないみたいだ。
あんなにペラペラとパールに偉そうに話していたのにな。
今のグリモワールは、表情も話し方も全て別人の様だ。
「ええいっ話がまともに出来んではないかっ! ちょっと落ち着けリィモ!」
パールはグリモワールに近寄ると両手で頬を挟みパチンッと軽く叩いた。
「あっ! はっはいっ!」
グリモワールは、パールに恫喝され少し落ち着きを取り戻した。
「さてと……リィモよ? お主には話す事が山程ある。ワシからもカリンからもじゃ。ちゃんと聞けるか?」
「お兄ちゃん……」
カリンが心配そうにグリモワールを見つめる。
グリモワールはカリンを見つめ返すと、真剣な顔になり、大きく頷いた。
「はい」
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