上 下
218 / 314
本編 燦聖教編

カスパール様!

しおりを挟む

「なっなんで生きておるのじゃ!?」

パールが大司教グリモワールを見て驚いている。何だ? 二人は知り合いなのか?
明らかにパールの態度がおかしい。
こんな慌てているパールを見るのは初めてかも知れない。

「パール知り合いか?」

動揺しているパールに聞いてみると、パールは大きく深呼吸した後

「……ワシの元弟子じゃ」

なんて?
おれの弟子?

「ええーーーー! パッパールの元弟子?!」

「声が大きいっ!」

「ごっごめんビックリして……パールの弟子って?」

「正確にはカスパールのじゃ」

そういってパールは難しい顔をしてグリモワールを睨んだ。

ちょっと待ってくれ? 意味が分からない?
カスパール様の元弟子なら何で今生きているんだ?
カスパール様が亡くなってから少なくとも三百年以上は経っている、グリモワールは見た感じエルフとかには見えない。
デボラさんみたいに姿を人族に偽っているんだろうか?

「彼奴は人族じゃ」

俺の考えてる事が聞こえてるんじゃ? と思うくらいパールがすぐに疑問に答えてくれた。
何で? 分かるんだとパールを見ると。

「ティーゴは素直じゃから考えてることが顔に出過ぎる」

すみませんね。隠し事ができない顔で。

俺とパールが入り口でモタモタしていたら、大司教グリモワールの方が近付いてきた。

「お前達どうやってこの部屋に入って来たんだ? ここに来るまでに魔道具の扉が何箇所もあっただろう? 魔道具の鍵がないと入って来れないはずだが?」

大司教グリモワールは驚き訝しげに俺たちを見ている。

「それは全て壊したのじゃ」

「なっ? 壊した? あの魔道具を?……そんな……っ!」

大司教グリモワールは困惑した後、俺の腕に抱かれているコンちゃんを凝視する。

「その抱いておる狐は本に封印されていた九尾の狐では……もしやお前達が、闘技場に現れた魔族か!」

何だよ闘技場に現れた魔族って!俺の方が悪役みたいじゃねーか!

「森の研究所を破壊し、封印していた書物を奪ったのであろう? 何のために魔族が邪魔をする?」

「何ってお主ら燦聖教を潰すためじゃ!」

横からパールが言うが、どうやら俺が言った事になっている。

「ほう……小僧が生意気な口を言う。私は魔族であろうと、何も怖くなどない。クククッ……私がお前達魔族を怖がり命乞いをするとでも思ったか? 私はお前達など怖くなどない」

俺の事を魔族だと思い込んでるグリモワールは怖くないと流暢にはなすが、そもそも俺は魔族じゃないからな?

どう対応しようかなと考えていたら、パールが再び話しかける。

「……リィモよ。お主は何故生きておるのじゃ。本来なら命は尽きておるはずじゃろうて?」

「なっ!? なぜその名前を! わっ私の……ああっ何であの人と同じ呼び方! 僕をそう呼ぶのは大賢者だけ! 何でお前がその名前を軽々しく呼ぶ? 呼んでいいのはカスパール様だけだ!」

リィモと呼ばれ大司教グリモワールが急に怒り出した。明らかに様子がオカシイ。
おいおい……なんかややこしくなりそうな匂いがぷんぷんするんだが。

「じゃからワシが、名前が長いからリィモと付けたんじゃろう? 何でワシが呼んだらダメなんじゃ!」

パール? ねぇ気付いてる? 今の姿は猫だよ? 大賢者カスパール様の姿じゃないよ?
猫が名付けたって……。
どう考えてもおかしいだろ?

「ほう……どこでその情報を仕入れたのかは分からんが、大賢者カスパール様を偽るなど! 許せぬ」

大司教グリモワールはそう言って俺を思いっきり睨む。俺が騙そうとしてると思ったみたいだ。流石に猫がペラペラ喋るとは考えが及ばないか。

「お前達! 消し去ってくれる」

大司教グリモワールが何か魔法を繰り出そうとするも、パールがそれを全て打ち消した。

「……ったく。リィモよ?  お主の悪い癖じゃ。すぐにキレて周りが見えなくなる」

「なっ…….! あっなんで……っ」

大司教グリモワールの視線が俺から外れ猫のパールを見ている? まさかパールの事に気付いた?

パールを見ると。

「あっあわっ……っ!  カスパール様!」

俺の横に、本で見たままの姿の大賢者カスパール様が立っていた。






しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

大賢者カスパールとグリフォンのスバル

大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。 彼が得れる魔法は全て修得した。 そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。 そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に… コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。 このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。 本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。 上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。 勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。