上 下
197 / 314
本編 燦聖教編

とばっちりのティーゴ

しおりを挟む

「クククッボロ儲けだな、お前のアイデア最高だせ」
「俺達が出ても良いんだけどオッズがなぁ1.5倍とか低過ぎだからな」
「本当この方法が手っ取り早くて最高だぜ! 王がくれる金だけじゃ足りねーんだよな」

男達がワイワイと雑談しながら歩いている。あの姿は闘技場で見た男達で間違いない。パールが足速に近付いて行く。
頼むから面倒な事にはしないでくれよ。

「おい! ちょっと待てぇ。お主達ズルをしたじゃろ?」

パールが男達を呼び止めた。

「ああん? 何だよ俺達に何かようか?握手やサインなら断ってるからな」

「ププッ……タケシ。サインって!」
横に立つ男が俺達をバカにした様に笑う。

何だ?感じ悪いな。

「はぁ? 何でワシがお主達と握手せねばならんのじゃ。ワシはお主達がさっきの試合で横槍を入れズルをした事を注意しに来たんじゃ!」

パールの話を聞き男達の眉間に皺が入る。

「はぁ? 何を言って……」

「ワシはちゃんと見たのじゃ間違い無い! お前達が不正をしたと言いに行く!」

「ちょっ……パールそんな喧嘩ごしに言ったら」

「どこに言いに行くって言うんだよ? お前の言う事なんて誰も信じないさっ」

「何でじゃ?」

「お前達はどこの田舎もんだ? 俺達、異世界の勇者を知らないのか?」

異世界の勇者?この世界の勇者のジョブとは違うのか?

パールを見ると何か気付いたのか少し驚いた様な顔をしている。

「この王都じゃあな? 俺達に逆らう奴なんていないんだよ? 分かる?ギャハハ! 教えてやろうか? 俺のジョブはな、聖剣なんだよ? 聖剣のタケシ様だ。これ聞いたらビビった?」

「俺達に楯突いて無事でいられると思うなよ?賢者のレント様が直々に痛めつけてやるよ」

「おいっタケシにレント、この前宰相様に注意されたばかりだろ?今問題を起こすのは不味い」

「まぁ……そうだけどよ。どーすんだよ?」

「まぁ僕に任せてくれないか? その後ろに立つ男が抱いている狐を寄越したら許してやるよ!」

『なっ!わっ…ムグッ』

狐じゃないと言い怒り出しそうなコンちゃんの口を慌てて俺は塞いだ。気持ちは分かるが喋る狐はいないからな?我慢してくれ。

「またかよ……お前は動物が好きだなぁ」

「タケシみたいに女に興味ないからね。その点動物はいつだって僕を癒してくれる」

「へっ良く言うよ勇者様?癒しの動物を虐待して死骸にしてるのは誰だっけ?」

「虐待じゃないよ。僕の深い愛情だ」

「へーへー怖い愛情です事」

コイツらは何を言ってるんだ?
動物を虐待?それが愛情だと?ふざけるのも大概にしろ!

「お前達みたいな頭のオカシイ奴に、可愛いコンちゃんは渡さない!パール行こうぜ」

俺が怒りを露わにしその場を去ろうとした瞬間、魔法が俺に向かって放たれた。
だがそれは高貴なるオソロの守護により弾き返された。

返った魔法は既の所で避ける事が出来たが、勇者一行の顔色は一気に青ざめた。

「なっ……魔法を弾き返しやがった!何だコイツは」

「お前達……こんな所で魔法を放つとかバカなのか?」

俺は呆れた顔で勇者一行とやらを見た。

「五月蝿い!何をしたんだよ」

「何をって……はぁ」

面倒だが言わないとずっと執念深く聞いてきそうだったので、高貴なるオソロの効果を話した。

それを聞いたコンちゃんが自分も欲しいと言わんばかりに羨ましそうにオソロを見つめていた。

分かったよ、コンちゃんの分も作ってもらうからな。
俺はコンちゃんにだけ聞こえる様にそう言うと優しく頭を撫でた。

「ズルしやがって!何だよそれ俺達に寄越せ」

賢者と名乗った男が、俺の手を無理やり握ろうとしたが、パールが結界を張り近寄る事が出来ない。さすがパール。

余りにも異世界の勇者達が騒ぐので、燦聖教のローブを羽織った男達が数人集まって来た。その背後には野次馬の様に人集りが出来ていた。

「ヒイロ様!どうされましたか?」
「ああっジーク聞いてくれよ!コイツらが俺達の事をバカにするんだよ。変な魔道具を使って近寄る事も出来ないし」

「それは……お前達!勇者様に何たる無礼。どうなるのか分かってるのか?」

ジークって男が文句を言って来たがもう本当どうでも良い。この茶番劇どうにかならないか?
人集りが出来てるし……最悪だ。

「知らないよ!そっちがコンちゃんを寄越せって、訳の分からない事を言って来たんだ」

俺はコンちゃんをギュッと抱きしめた。

「なっ!その狐を寄越せば許してやるって言っただけだろ?」

「ヒイロ様少し落ち着いてください。宰相様にもこれ以上問題を起こすなと注意されています」

「だけど……」

そう言われても勇者の男はコンちゃんをじっと物欲しそうに見てくる。
俺はコンちゃんを隠す様に勇者と言われる男に背を向けた。

少し沈黙した後ジークと言う男はニヤリと笑いとんでもない事を言い出した。

「分かりました。では決着は闘技場でつけましょう」

ジークと言う男の言葉に勇者達は歓喜の声を上げた。

「ジーク!ナイスアイデアだ。闘技場で起こったことなら仕方ないよな」
(試合で死人が出る事だってザラにあるからな……ククッ)

「なっ何で俺がそんなのにっ」
嫌だと断ろうとしたらパールに止められる。

「ティーゴ待つのじゃ。分かった受けて立とう」

「ちょっ?パール!何言ってんだ?」

「ワシは色々とムカついたのじゃ!このティーゴが勝負に勝てばお主らの不正を認めるんじゃ!分かったの!」

「分かったよ。その代わり僕が勝てばその狐を貰うからね」

「望む所じゃ!」

ちょっと待って?俺の意見はムシですか?
理解が追いつかないぞ?俺は闘技場で戦うのか?
パールを見ると親指を立てて俺を見る。
何その頑張るのじゃって無言のエール!
はぁ……勘弁してくれ。
って言うか俺勇者に勝てるのか?パールが試合に出た方が良かったんじゃないのか?

俺の不安を他所に闘技場での戦いの話はドンドン勝手に進んで行った。
しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

大賢者カスパールとグリフォンのスバル

大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。 彼が得れる魔法は全て修得した。 そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。 そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に… コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。 このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。 本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。 上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。 勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~

黒色の猫
ファンタジー
 両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。 冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。 最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。 それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった… そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。