192 / 314
本編 燦聖教編
次の目的地
しおりを挟む眩しい日差しがティーゴを照りつける。
「んん~~っ!」
ティーゴは思いっきり両手を伸ばし、背中を仰け反り伸びをした。
目が覚めてくると、柔らかな温もりを感じる。
モフッ
銀太の腹毛……えっ外?
起き上がり周囲を見渡すティーゴ
あれっ?俺もしかして外で寝てたのか?!
『むう……主…起きたのか?』
ティーゴが動いたので銀太も目を覚ます。
「銀太おはよう。俺アレク達と新作の酒を試飲して……あれ?そのまま寝ちゃってた?!」
『主はのう?酒を呑んで気持ち良さそうに寝てたのだ。アレク達が主をどうしようか困ってた所に、我とスバルが前を通りそのまま主を預かったのだ』
「えっ……スバル?」
俺がスバルを目で探したのが分かったのか、銀太の鼻先が自分の背中を指した。
「スバル……」
スバルは気持ち良さそうイビキをかき銀太の背中で寝ていた。
『スバルの奴も酔っ払ってなかなか起きんかったのじゃ。気持ち良さそうに寝ておる主とスバルの側でおったら、我も眠くなりそのまま外で寝てしもうた見たいじゃ』
異空間で野宿って!家は直ぐそこに在るのにな。
酔っ払って外で寝るとか……どこまで俺は安心しきってんだよ。
ちょっと反省だな。
「おっティーゴ!起きたのか昨日は気持ち良さそうに寝てたな!疲れが溜まってるんじゃないのか?」
アレクがバイコーンに乗り走って来た。
「おはようアレク!朝から精が出るな」
「昨日は新しい酒を飲みながら大宴会だったからな。米や小麦の備蓄が少なくなったんで朝から収穫作業してるんだよ」
よく見るとバイコーンは、大量の小麦が入った荷台を引っ張っている。
畑の方を見渡すと、獣人達やジャイコブ達が忙しそうに野菜を収穫している。
あれ?今って早朝じゃないのか?
「アレク!今何時だ?」
「えっ……何時って十時過ぎって所か?」
「えーーっ!俺は昨日の夕方から今まで寝てたのか?」
いくらなんでも寝過ぎだ!俺ってもしかして酒弱いのか?
獣人や聖獣達は俺よりも酒を呑んでだはずなのに朝からこんなに元気だし。
酒が弱いかもと悩んでいるが、ティーゴは人族の中では酒は強い方に入る。
ただ、獣人や聖獣達が桁違いに強いってだけで……。
そんな強い連中と同じペースで呑めば結果は……。
「それでさ?トゥマトのお酒があの後、獣人の女達に大好評でな?子供達にはトマトにジュエルフラワーの蜜を混ぜたジュースが人気!って事で今この楽園に実っていたトゥマトを全部収穫し尽くしちゃったんだ。だからティーゴの水が欲しいんだ」
トゥマトのお酒は美味しかったもんな。
トマトのジュースってのも気になるな……後でアレクからレシピを聞こう。
「よし分かった!今からじゃんじゃん水をやるからな!任せてくれ」
「さすが神様ティーゴ様!」
「アレク茶化すな!」
★ ★ ★
「こんなもんか?」
「ああ十分だぜ。新しいトゥマト畑まで増やしてくれて助かるよ」
「それくらい何時でも言ってくれ。ところでアレクに教えてもらいたいんだか」
「なんだ?何でも聞いてくれ」
俺はアレクからトゥマトジュースのレシピを聞いたので、外にある調理場にてトゥマトを並べ実践している。
トゥマトを潰して濾した後、ジュエルフラワーの蜜と酸味の強いフルーツを数滴入れて混ぜるだけなんて、そんな簡単に作れるのか。
「どれ……味見。ゴクッ」
なっ……!
「うんまー!サッパリして寝起きのドリンクとしても良いな」
『主……我のは?』
銀太が待ちきれず調理台の上に顔を置いてアピールする。
「あっごめんごめん!はいどーぞ」
銀太が飲みやすい様に大きな深皿にジュースを入れる。
「……!なっ美味いのだっ甘いのにサッパリしてて……我は気に入ったのだ!」
銀太が興奮して尻尾を激しくブンブン回転させるので、背中に乗ってたスバルが落ちる。
『…っついった!』
「スバルやっと起きたのか!おはよ」
『俺は今何かに投げられなかったか!?』
スバルはどうやら銀太の背中から落ちたのを、誰かに投げられたと勘違いしてる様だ。
「プッ……誰も投げてないよ。まぁこれ飲んで目を覚ましたら?」
『なっ……これは!?赤い宝石?』
スバルはゴクッっと勢いよくトゥマトジュースを飲んだ。
『旨っ!これは宝石なんかじゃねーぞ!騙されちゃいけねぇ。こいつは赤い凶器だぜ。旨さで俺の腹を切りまくってやがる!』
スバルよ、赤い凶器ってそれはもう武器だろう。
腹を切りまくる飲物とか怖すぎますけど!?
相変わらずのスバル節を聞いていたら……。
青白く窶れ歩くのも精一杯のコンちゃんと、艶っ艶の顔してニマニマとほくそ笑んでるパールが帰って来た。
『やっと……帰ってこれた。主殿……アイツはヤバいぜ』
コンちゃんはパタリッと倒れ込んだ。
「コンちゃん!大丈夫か?とりあえずコレ飲んで!」
ティーゴはトゥマトジュースをコンちゃんに飲ませた。
「何じゃそれは!ワシも飲むのじゃ」
それよりコンちゃんに一体何をしたんだ?説明が先だろうと思いながらも、ティーゴはジュースをパールにも渡した。
『なっこれはっ!……主殿!パワーが漲るようじゃっ。おかわり!』
『ワシもおかわりじゃ!』
パールとコンちゃんは競う様にジュースを飲み腹がタプタプになっていた。
『ゲフっもう飲めないのじゃ……』
コンちゃんは横に寝転んだ。
『ゲフっはぁ美味かった。ティーゴよ見るのじゃ!』
次の瞬間、パールがティーゴの姿に変化した。
「なっ!パールもうハイメタモルフォーゼを修得したの?」
「ワシを誰じゃと思うておる」
「大賢者パール様でございます」
「そうじゃ」
パールはどうだと言わんばかりに反り返った。
なるほどな、コンちゃんがヨロヨロになって帰って来た理由はこれか、パールのやつ自分が修得出来るまで付き合わせたな。
後でコンちゃんにご褒美をいっぱいあげないとだな。
「よしっ!ティーゴよ。次の街に出発しようではないか!」
「いきなりだな!」
新しく覚えたスキルを早く使いたくて仕方ないんだろ?っと喉まで出かかったが後が面倒なので飲み込んだ。
「次って……もしかして!?」
ミナトゥークの先にあるのは……?
「そうじゃ!王都じゃ」
11
お気に入りに追加
7,512
あなたにおすすめの小説
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
大賢者カスパールとグリフォンのスバル
大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。
彼が得れる魔法は全て修得した。
そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る
ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。
そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に…
コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。
このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。
本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。
上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。
勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。