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本編 燦聖教編
眠れる塔の侯爵
しおりを挟む「ティーゴ様はこの兎人族を配下にしたのですか?」
メフィストがそう質問するとティーゴが答える前に、兎人族リーダーのミリーが答える。
「はいっ!そうです」
「ちょっ!何言ってんだよっ俺何もオッケーしてないだろ?」
「ええっ?」
ミリーは長いミミをぴこぴこと動かし首を傾げる。
「いやいやとぼけてもダメだからな?」
「ではこの御恩をどう返せば良いのですか?」
「俺は何かして欲しくて助けたんじゃないからな。それに眠りから目覚めさせてくれたのはパールだ」
「えっ!こちらの猫さんがですか?」
パールはいつのまにか猫の姿になっていた。
「こらっ!失礼であろう兎人族よこの方はまおっ「何を言おうとしたんだ?」」
ティーゴは慌ててメフィストの口を塞ぐ。
「えっそれは……」
パールがメフィストの肩にヒラリと飛び乗り耳打ちした。
「ワシが魔王だと言うのは秘密じゃ。お主が魔族と言う事もな」
メフィストは無言で頷いた。
「ねぇ?猫さんがどーしたんだ?」
「えっ……あっこの猫パール様は天才なのですよ!色々な魔法が使えるんです」
「そうなの?凄い猫さんなんだ」
自分に注目が変わり困ったパールは話を変える
「そういやメフィストは何をしておったんじゃ?」
ティーゴは思った。何で聞いちゃうかなと。
「こいつには私から直接渡したかったのでね?」
メフィストは魔法を使いロウナ侯爵をベッドに放り投げた。
「この変態侯爵はね?かなり歪んだ性格でね?この塔内を裸で行動していた。そしてそれをそこに集まる兎人族にも強要した。ですよね?」
メフィストは兎人族を見る。
一人の兎人族が答える
「はいっ!私達はこの塔に入ると服を着せて貰えませんでした」
「この侯爵はね、裸こそ美しいと言って気に入っている者は皆裸にする。そして機嫌が悪い時に痛め付け痛みに歪んだ顔を見てスッキリするんだよ」
「何だよそれっ!胸糞悪いっ」
「ティーゴ様は優しいからこんな侯爵の気持ちなんて理解出来ないですよね?」
ティーゴは悔しくて腹立たしいのか、ずっと眉間に皺が寄っている。
「理解出来ない!メフィストにこいつが嫌な事したんだろ?」
「そうですね。毎日何らかの痛みを味わいましたね。ですが大丈夫ですよティーゴ様そんな顔しないで下さい。私はもうされた事全て侯爵に返しました。ですので全く痛くないですよ」
(まぁ?一度に纏めて私の味わった苦痛を返せば、人族など耐えれずに直ぐに死ぬ。ですが侯爵に私と同じだけの苦しみを味わう迄は死ねない様にしました。私以外の痛みも貰ってますからね。何十年先ですかね?解放されるのは……おおっとこんな事優しいティーゴ様には言えませんが)
「そうなのか」
「ああ、それとこの塔にいる悪夢を見ている者達は目覚めるまでこの場所に置いて行きましょう」
「まぁそうなるのう、目覚めるまで何の役にも立たんからのう」
「では封印魔法でこの場所に誰も入れない様にしますか?」
「おおっそれが良いのう」
俺達は獣人達を連れ外に出た。
全員が外に出た事を確認すると、メフィストは両手を建物にかざした。
建物が白い霧の様な物に覆われたと思ったら……青色の塔は姿を消した。
「すげえ……」
★ ★ ★
ティーゴ達は塔にいた残りの獣人達を連れて、異空間に戻ってきた。
すると先に異空間に入った獣人達が並びアレクが何やら紙に書いている。
ティーゴは新しい獣人達をアレクの所に連れて行く。
「アレク~何やってるんだ?」
「おおっティーゴ戻って来たのか、シファもお帰り」
アレクはシファを抱き寄せ頬に軽く口付けをする。
「わっ!アレクッ人前です」
シファは頬を赤らめ恥ずかしそうに俯いた。そんな二人を微笑ましく見ているティーゴだった。
「シファさんのおかけで助かったよ」
「そんな!大した事してませんのに」
「で、アレクは何してんだ?」
「今、異空間に残るって獣人達をメモしてるんだよ。人数が多くなってきて把握出来なくなると困るし」
意外だ、アレクってそう言う所は雑っていうか適当なのかと思ってた。
「んんっ?意外とか思ってねーか?」
わっ!心の声が漏れてる。
「んな訳ないだろ?」
「へぇぇ……?」
ティーゴをジト目で見るアレク。
「あっそうそう!何人此処に残るんだ?」
「百人弱かな?後の奴らはローデンブルグが復興し元の街に戻ったと話したら帰ると言っていた。
皆街が元の活気ある街に戻ったと聞き泣いていた」
「そうか……それは良かったな」
そんな話を聞くと俺まで嬉しくなるな。自然と顔が綻ぶ。
「後この人達も頼むよ」
俺は青色の塔に居た獣人達をアレクに紹介した。
「分かったよ、俺に任せてくれ」
「じゃあ俺の後について来てくれ、シファも案内頼む」
「はいっ!」
アレクとシファさんに誘導され獣人達は集落に向かった。
「たのんだよー!」
また人数が増えたから二号にたのんで家を作って貰わないとだな。
っと二号の所に行こうと踵を返すと兎人族が跪いて居た。
「わっ!ビックリした。お前達なんで一緒に行かないんだよ」
「私達は嫌な侯爵から助けられて何も御恩を返してません」
「それは良いって言っただろ?お前達はな、やっと自由になれたんだ」
「……自由?」
ティーゴに自由と言われピンと来ないミリー達。
「そうだ、好きな事をしたい時にし、食べたい時に食べる、やりたい事を見つけるっと何でも出来るんだ、分かるか?」
「私達が好きに?して……良い?」
「そうだ!」
「何をたべても?」
「良い!」
「好きなだけ寝ても」
「良い!」
「ああっ……!!」
兎人族は皆抱き合い泣いていた。好きなだけ泣いたらは落ち着いたのか今度は笑い出した。
ティーゴはその姿を見て、もう大丈夫だろうと安心する。
「とりあえずはさっきのアレクの所で相談してくれ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
兎人族達は太陽の様な笑顔で笑った。
その笑顔は憑き物が取れた様なスッキリした顔をしていた。
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