12 / 30
第1章 龍王様の番
更なる誤解
しおりを挟む「貴方は変わった人ですね」
「我が? なぜそう思うのだ?」
「だって……普通なら、龍王様の事を悪く言った私の事を、責めると思うのに」
私がそう言うと、顎に指をあて「ふむ?」っと少しの間考えこんだ後。
「龍王であろうと、ダメなものはダメであろう? 我がそう思ったのだ。それで良い」
そう言って私に向かって優しく笑った。
その顔があまりにも綺麗で直視できずに下を向いてしまう。
「どうしたのだ? 翠蘭」
急に名前を呼ばれ、びっくりして思わず顔を上げる。
何で私の名前をこの人が知ってるの!?
「ふぇ!? どっ……どうして私の名前を!?」
「んん? 其方の友がそう言っておった」
「あっ……明々が……」
そうかなるほど、私の事を説明する時に、名前を言ったのね。
私の名前を知っているのなら……私だってこの横にいる美しい龍人の名前を聞いても良いよね?
「それなら……私も貴方のお名前をお聞きしても?」
「我の名か?」
「はい」
「我の名はフェッ……んんっ。飛だ」
少し焦りながら名前を教えてくれた。なんだろう? 恥ずかしいのかな?
「飛様ですね。名前を教えていただきありがとうございます」
私は飛様に向かって頭を下げた。
「固い挨拶などもうよい。普通にしてくれ」
「はい」
普通にしてくれと言われても、まだ慣れてないから緊張はしちゃのだけど。
この際だし、龍人族について分からない事を、教えてもらおう。
興味ある話を聞いていたら、緊張も和らぎそうな気がするし。
「あのう……飛様、少し教えてもらいたいのですが」
「なんだ? 我にわかる事ならなんでも教えようぞ」
「……番についてなんですが」
「番?」
「はい。龍王様の番を見つけるために私たちは集められましたが、どうやって見つけるのかと思いまして……」
「ふむ? 番はのう? 全てが甘いんだよ」
「あっ……甘いですか?」
番が甘い? どう言う事なのだろう?
余計に訳が分からなくなってきた。
意味がわからないと困惑していると、そんな私を見てクスリと笑う。
「我も番に出会った事がないからのう。よく分からないが、番と口づけをするとのう? 蕩けるように甘い蜜のよう味なのだと」
飛様がそう言いながら自分の唇を触る。
「なるほど……口づけをすると甘い……!? ヒョッ、くくくっ、くちづけ!?」
びっくりして、声が裏返る。
ちょっと待って!? ってことはだよ? 私は龍王様と口づけをしないといけないの!?
まだ誰ともしたことないのに。そんなの想像するだけで恥ずかしいよう……。
———ん!? そうなると。
龍王様は残った八十五人と、口づけをするってことなの!?
「くくく……その百面相をずっと見ているのも面白いが、翠蘭よ? 龍王が残った全ての者と口づけをすると思うておろう?」
百面相って! こんな話されて驚かない人がいたら教えて欲しい。
顔だってずっと熱い。
「はい。だってそうしないと、番だと分からないんでしょう?」
「ははは、我だって……龍王だとて、好いておらぬ女子と口づけなどできぬよ」
「へっ!? ではどうやって知るのですか?」
思わず興奮して飛様の方に近づき、その事に気付き慌てて後ずさる。
何をやってるの私。
飛様はそんな私の姿を笑いながらも、私が落ち着くのを待ってから、話を続けてくれた。
「それはのう? 我ら龍人にはの、龍の姿に変身した時、【龍心】が首の下あたりに現れるのだが、その龍心は本人と番以外には見えないんだよ。その龍心が見えた者が番じゃ」
「龍心……」
「龍心の色はそれぞれ違う、紫だったり、青だったりとな」
そう言われ、ふと飛様が龍だった時に赤い宝石にような物が煌めいたのを思い出した……。
「それは宝石のように輝いてるのですか?」
「そうだ。番には眩しいほどに煌めいて見えるらしいのう」
それって、ももももっ、もしかしてさっき見えたのが龍心だとしたら! 私
が飛様の番!?
「ふぇぇぇぇっ!?」
思わず奇声を発し、徐に立ち上がると。
私はその場に居られず……。
「すすっ、すみません! 私ちょっと急用を思い出しまして!」
「えっ? まだ話はっ……」
「ではっ」
飛様が何か言いかけていたけれど、今の私にそんな余裕などあるはずもなく。
足早にその場を去るのだった。
「ふむ……これの事を聞きそびれたのう、樹よ」
足早にその場を去って行く翠蘭を見ながら、飛は胸元から真紅色した髪の毛を取り出した。
そんな飛を見て樹の木は、笑うように葉を揺らすのだった。
★★★
本作を読んで頂きありがとうございます。嬉しいコメントやエールでの応援、本当に本当に感謝です。嬉しくって執筆の励みになっています。
今後も楽しんで頂けるよう頑張りますので、引き続き読んで頂けると有り難いですm(_ _)m
75
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説
政略結婚の相手に見向きもされません
矢野りと
恋愛
人族の王女と獣人国の国王の政略結婚。
政略結婚と割り切って嫁いできた王女と番と結婚する夢を捨てられない国王はもちろん上手くいくはずもない。
国王は番に巡り合ったら結婚出来るように、王女との婚姻の前に後宮を復活させてしまう。
だが悲しみに暮れる弱い王女はどこにもいなかった! 人族の王女は今日も逞しく獣人国で生きていきます!
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
『番』という存在
彗
恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。
*基本的に1日1話ずつの投稿です。
(カイン視点だけ2話投稿となります。)
書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。
***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。
稲垣桜
恋愛
「君と取引がしたい」
兄の上司である公爵家の嫡男が、私の前に座って開口一番そう告げた。
「取引……ですか?」
「ああ、私と結婚してほしい」
私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか……
ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。
* * * * * * * * * * * *
青薔薇の騎士として有名なマクシミリアンから契約結婚を申し込まれた伯爵家令嬢のリディア。
最低限の役目をこなすことで自由な時間を得たリディアは、契約通り自由な生活を謳歌する。
リディアはマクシミリアンが契約結婚を申し出た理由を知っても気にしないと言い、逆にそれがマクシミリアンにとって棘のように胸に刺さり続け、ある夜会に参加してから二人の関係は変わっていく。
※ゆる〜い設定です。
※完結保証。
※エブリスタでは現代テーマの作品を公開してます。興味がある方は覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる