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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
第百六十七話 またですか?
しおりを挟む「あっあのっ私それじゃっ……」
なんとも言えない甘い雰囲気に耐えきれず、私は逃げるように生徒会室を出た。
「くすっ。少しやり過ぎたかな? でもフィアが悪いんだよ? 僕よりよく知らない王女の言葉を信じたりするから……」
そんな私を、少し困った顔で笑いながら、アイザック様が見ていたなんて、もちろん知らない。
廊下を早歩きで進みながらも、脳内にさっきの出来事が、ぐるぐると何回も再生される。
「アイザック様ったら、急に抱きしめたり……おっおでこにっあうっ」
ううっ……アイザック様が抱きしめながら、何か色々と言ってくれていたけれど、全く頭に入ってこなかった。
とりあえず婚約解消はしないっていうのは、理解出来たのだけど……なんで解消しないんだっけ? ええと……私から解消したくなったらと言ってた? そうか、私の気持ちを尊重してくれてるのね。
その優しさは嬉しいんだけど、前世も含め男性に免疫がない私には、今日みたいなスキンシップは恥ずかし過ぎる。
子供の時は、ああやって抱きしめられても可愛いとしか思わなかったのに……成長したらこんなにドキドキするなんて! あうっ。
一人悶々としながら、廊下を歩いていると。
「おはようございますソフィア様」
「ふぇっ? シャシャッシャルロッテおはよう」
後ろから声をかけられるも、動揺し思いっきり吃ってしまった。
「どうかしたのですか? お顔が少し赤いような……」
「あっこれは、さっきね? ええと……そうっ運動したからかなぁ。んんー良く動いたなぁ」
我ながら何とも怪しい言い訳だけど……
「さすがソフィア様ですね。朝から運動かぁ。次はぜひ私も誘って下さいね」
優しく笑い、私のしょうもない言い訳を素直に信じてくれるシャルロッテ。はぁ心が天使すぎるよ。なんとなく後ろめたいです。
「おはようございますソフィア様、シャルロッテ」
「あっダイアナ! おはよう」
「ダイアナ様おはようございます」
ダイアナにも会い、三人でたわいも無い話をしながら教室へとむかう。
おかげでさっきまでの変な緊張感が、どこかに消え少しホッとする。
教室に入ると、グラードン王女が私を見つけ、一目散にやってきた。
「おはようございますソフィア様」
「おはようございますグラードン王女」
硬い挨拶をし合うと、私の耳に顔を近付け何やらヒソヒソと話しかけてくる。
「それで昨日のお話しはどうなりましたか?」
「昨日?」
「ほらっ婚約解消の……」
「ああっ! それならアイザック様に直接今朝お聞きしましたよ」
私がそう話すと瞳を爛々とさせるグラードン王女
「まぁ! さっそく! それでっそれで?」
「アイザック様は、婚約解消はしないとおっしゃいました」
「しない? はぁぁぁぁ? そんな訳っ!?」
「えっ!?」
「ゴホンッ、あっ失礼。ええと本当にアイザック様が解消は嫌だと?」
「はい。そう言っていました」
私がそう言うと、目を見開き、口元に手を当てブツブツと独り言を言っている。何がしたいの?
「解消を嫌がる? おかしいわ……それは。もしかしてアイザック様は何か弱みを握られているんじゃ……」
あまりにも固まって動かないので、再び話しかける
「あのう? グラードン王女?」
「あっ! ごめんなさい。少し考えこんでしまって」
「はぁ……もう用がないのならこれで……」
なんとなくこの場に居たくないなぁと思い、去ろうとすると
「ちょっとお待ち下さい」
「えっ?」
ギュッと右手を握られてしまった。これじゃ移動出来ない。
「ソフィア様、また昼食時にお話したいのですが、良いですか?」
「えっでも……昼食時はシャルロッテとダイアナの二人と約束してまして……」
「あらっなら私も御一緒させて下さいな。ねっ」
有無を言わさず、言いたい事だけ言うと去って行くグラードン王女。昼食を一緒にする事になってしまった。
えーーっ。せっかくの癒しの時間が……はぁぁ。
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