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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
第百三十七話 アイザックの苦悩
しおりを挟むアイザックside
それにしてもだ、調べて分かったんだがこの街は思ってた以上に腐っている。
いや街じゃないな、治めている領主や貴族達がだな。
とくにこのカッツアゲ侯爵とプルーチン伯爵は酷いな。こんな屑久しぶりだな。
「アイザック資料がまとまったぞ」
「ジーニアスお疲れ様だな。後は入手出来た情報を素に今夜潜入調査するだけだ」
「そうだな。ところでもうこんな時間か……」
ジーニアスが窓の外を見る。景色はすっかり夜の帳に変化していた。
「本当だな。ソフィア達も街の探索から帰って来ているだろう。お腹を空かせて待っているかもしれないな。急いで夕食にしようか」
「そうだな。じゃあ僕は先に席をとり予約しておくよ」
「ありがとうジーニアス。じゃあソフィア達を呼んでくる」
ジーニアスと別れソフィア達がいる部屋を訪れると……なんだか様子がおかしい。部屋の灯りが扉の隙間からもれてない? 日も陰り灯りを付けないと、全く何も見えないぞ?
街の探索に疲れて寝ている? いやっまさか、ソフィアが夕食を食べずに寝るなんて有り得ない。
僕は扉を少し強めにノックした。
だが何も返事は帰ってこない。
ソフィア達の部屋のカギは一応持っている。僕が部屋を代表して借りたからね、その時に鍵も預かったんだが。使う事など無いと思っていたけど……。
よかった……まさかこんな事になるなんて。
女性の部屋を、了承も得ずに開けるのは心苦しいが仕方ない。
鍵を開けソフィアの部屋に入ると、中は真っ暗で人の気配が全くしなかった。
「ソフィア? シャルロッテ? いるか?」
声を荒らげて名を呼ぶが、応答が返ってこない。
まさか……街を探索している時に何かあったんじゃ!?
ソフィアはあんなにも綺麗で可愛いんだ。変な奴に目をつけられてもおかしくない。ああっ街の探索なんて二人で行かすんじゃなかった。どうにかして僕がついて行けば良かったんだ。
過去をウジウジしてても仕方ない! 今すぐソフィアを探さないと!
急いでジーニアスの所に行き、ソフィア達がいないと告げる。
ジーニアスも僕と同じように混乱しパニックになるが、直ぐに冷静になると「もう一度ソフィア達の部屋に戻り何か手掛かりがないか調べよう」と走って行った。
女性の部屋を調べるのは心苦しいが、緊急事態じゃ仕方ない。ソフィアごめんね。
部屋の灯りを付け、見渡すと誰かに荒らされた様な感じはない。昼から出て行ってそのままって感じだ。
「アイザック! どうする? 外に探しに行くか?」
「暗がりで広い街をか? 途方もないけど、それしかないか」
お願いだからソフィア。無事でいてくれ。額から嫌な汗が止まらない。
この後大事な潜入調査があったんだけど、そんなのもうどうでもいい。ソフィアより優先する事なんてないんだから。
そんな時だった。ソフィアの周りを飛んでいる、丸い光が僕の所に飛んできた。金色の光……これはシルフィか?
僕の目の前まで来ると、何やら紙を落として行った。
「……これは手紙?」
ソフィアからか?
慌てて手紙の封を切る。
【拝啓
連絡が遅くなり心配をおかけして申し訳ありません。実は今シャルロッテと楽しい事を発見しまして、今日の帰りは遅くなります。心配しないで下さいね。
ソフィア】
……はぁっ良かった無事なんだ。
「ジーニアス! ソフィアからの手紙だ。ソフィアの妖精が持って来てくれた」
ジーニアスも手紙を読み、安堵したのか床に座り込んだ。
楽しい事がなんなのか少し……いやかなり気になるが、無事で良かった。
「では予定通りに潜入調査に行くか」
「そうだな。食事を済ませて会場に向かおう」
「了解だ」
僕はこの街で奴隷オークションがある事を調べあげだ。会場の場所もおさえた。
我が国では奴隷制度はない。購入や販売は以ての外だ。会場でクズ共を纏めて検挙してやる。
騎士団には先に、会場の周りを見つからないように、取り囲む様にいってある。後は僕の合図を待つだけだ。
「さてとジーニアス。クズ共を捕まえに行くか」
「だな」
★★★
奴隷オークション会場は、一見その様な場所には全く見えなかった。商人達が在庫を置くのに使う、ただの大きな箱型の倉庫だ。
入り口で手配して貰った会員証を見せ、仮面を受け取り会場に入った。受付の男が「今日のメインは極上ですぜ。げひひ」とイヤらしい目付きで笑う。
何が極上だ! 売る奴も買う奴も最低だな。
仮面をつけ会場に入ると、すでにオークションは始まっており、大盛況だった。熱気が凄い。
「これは酷いな……」
ジーニアスが小声で話しかけてきた。ホントにそう思う。
会場には男だけかと思ったら、女性もいた。なぜなら少年も売られていた。
「ホントに嫌な空気だ」
ジーニアスといつ突入の合図を出すかと様子を伺っていたら、会場が最高潮に盛り上がる。どうやらメインイベントが始まったようだ。
「さぁ! お待たせしました。本日のメイン。こんな極上には中々出会えませんよ? ネコちゃんとウサギちゃんの登場だ」
何がネコちゃんとウサギちゃんだ。ふとステージに目を向けると、そこに立っていたのはソフィアとシャルロッテだった。
踊り子のようなあられめも無い姿に、ネコ耳を頭に付けて。
「グハッ」
ちょっと待ってくれ!
可愛すぎて心臓が痛い。なんなんだ! あの可愛さは、この世で一番ネコ耳が似合うぞ。
ああっクソッ! ソフィアのあの可愛い姿を見た奴らの目を全て潰したい。いやもう潰す。決定だ。
横を見ると、ジーニアスも真っ赤な顔をしてプルプルと身悶えていた。くそう……ジーニアスの目も潰したい。
頼むから誰も見ないでくれ!
「さぁ! まずはネコちゃんからいこうか。スタートは金貨十枚」
動揺し身悶えていたら、オークションがスタートしてしまった。
はぁ? なんだと? ソフィアの値段が金貨十枚だと? ふざけるな。本当なら値段なんて付けれないんだぞ!
「二十枚」
「二十五枚」
「白金貨百枚だ!」
「「「「「!?」」」」」
「えっ?! あのお客様?」
「白金貨百枚だといっている」
本当なら値段なんて付けれないけどな。仕方ない。
「金貨じゃなくて? はっはくっ白金貨百枚だー!!! これ以上出せる強者はいるかー?! さすがにいねーか! ネコちゃんはマントの紳士に決定だ」
カンカンカーン!
司会の男が鐘をならした。騎士団が突入する前に、ソフィアのあの姿を隠さないと。これ以上の人達に見せたくない。
それよりもだ! ソフィア楽しい事ってこれか? 一体何を考えてるんだよ?
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