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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百三話 女神様

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「女神様ーー! ありがとうございます。まさか生きている内にビックボアの肉を腹一杯食べることが出来るなんて! 女神様のお恵みに感謝します」

「ありがとうございます!ビックボアの肉を生まれて初めて食べました。もういつ死んでもいいです」

「女神様! ワシらに幸せをありがとうございます! あんなに美味しい肉は初めて食べました」

「まさか! ビックボアの肉祭りの夢を叶えて貰えるなんて! 言ってみるもんですじゃ」

「ほんとじゃ! 肉祭りのお願いをしてみるもんじゃの」

 ビックボアをお腹いっぱいに食べ終えた村人達が、お礼を言う為にどんどん集まってくるんだけど……その気持ちは嬉しい。でもだ……姿勢がみんな平伏している。

「ちょ! あの?! ほんとにもう気持ちは十分にもらいましたから! お願いだから普通にしてください」

 必死にお願いするも中々やめてくれない。それどころか平伏す人が増えていく一方。

 もう本当勘弁して下さい。


 ん?…………ちょっと待って?

 ビックボアで肉祭りしたいとか言ってたくせに。
 ビックボアを初めて食べたって?

 えええ?どー言うこと?
 食べた事無かったの?

 私が村人の願いを叶えた事になってますけど?

 なんで?

 騎士団長のグレイさんまで、同じ様に女神様と平伏すもんだから、騎士団の人たち全員が私に平伏した。

 ほんと!お願いだから勘弁してください!
 恥ずかしくてもう限界です。

 そんな状況の中、さらに一番困った人が登場した。

 もの凄い派手な登場の仕方で。

 王国に数匹しかいないという翼の生えた馬の魔獣バイコーンに乗ってお父様が一人でやって来たのだ。

 上空から私の姿を見つけると、バイコーンは私目掛けて一目散に降下する。

「フィアたん!心配で飛んできたよ」

 派手な登場したお父様が、バイコーンから飛び降り、慌てて私に駆け寄ってくる。

 それと同時に国王陛下から魔法鳥が飛んできた。

『ソフィア嬢よ、スタンピードの収束ありがとう。この話を聞く前に王国にあるバイコーンを勝手に奪い、宰相がそちらに向かったとの報告があった。よろしく頼んだぞ』

 ……国王陛下? 手紙着くの遅く無いですか?
 お父様もう到着しちゃってますけども? 何をよろしく頼むんですか?

 それにこの状況どうするんですか?

 村人は平伏した中、天から翼の生えた馬で颯爽と登場したお父様に抱きしめられる私。

 どう考えても情報量が多すぎませんか?



★ ★ ★



 とりあえず……村人達には肉祭りで焼ききれなかった肉を一旦各々の家に持って帰ってもらうという名目で、この場は落ち着いた。

……村人達は。だけどね。

 騎士団の人達は宰相閣下お父様の突然の登場によりパニックになりながらも必死に傅いている。

 そして今度は、アイザック様とジーニアス様が、お父様に睨まれ油汗を流している。

「……してアイザック殿下? なぜ可愛いソフィアをこんなスタンピードが起こっているような村に連れて来たんだい?」

「え?………そっそれは」

 アイザック様が返事に困る中、私が割って入った。

「お父様? アイザック様やジーニアス様は何も悪くない無いです! 私が勝手にこの村に来たんです! それを二人は守るためについて来てくれたんですよ。なのにそんな言い方……いくらお父様でも………」

 私はそう言ってわざと悲しそうに俯いた。
 こうするとお父様には効果的なのだ。

「あやっ! ちがっ! フィアたん? お父様はアイザック殿下を攻めている訳ではなくて……そのう….質問してただけでだね?」

 お父様の態度がしどろもどろになる。
 心配性の優しいお父様。
 私の事が心配で慌てて一人村に来てくれたんだよね? その気持ちは嬉しい。

「お父様、心配かけてごめんね?でももう大丈夫だから」

 そう言ってお父様に向かって微笑んだ。

「フィ……フィアたんが心配だったんだよ! 分かってくれたならいい。お願いだから無茶しないでくれ!」

 そう言ってお父様は私をギュッと抱きしめた。

 そんな私達の様子を、アイザック様や騎士団の人達はなんとも言えない顔で見ていたのだけど……それは視界に入れないようにするのだった。







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