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ルチア十六歳、魔法学園編

シェラとの約束

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 ひとつ目君は物凄く足が早かった。
 大きな長い足で、ピョーンピョーンと森を颯爽と走り抜けて行く。

 ひとつ目君のおかげで、私は一瞬で王城に戻って来れた。

 一時はどうなるかと思ったけど、妖精さん達のおかげだ。
 私の後を心配してついて来てくれてありがとう。

 さて王城に着いたは良いけど、どうやってシェラ様の所に行ったら……
 お城が広すぎて皆の居場所が分からない。

ーールチィあそこ聖獣様のけはいーーうんする
ーー見てくるー
ーーちょっと見てくるー

 妖精さんがお城のバルコニーに向かって飛んで行った。

ーールチィー急いでーシェラ様がしんじゃうー!!

 様子を見に行った妖精さん達が、慌てて戻って来たかと思うと、口々にシェラ様が死ぬと話す!

 何で!?

 エッ?
 何それ!何でそんな事に?
 無敵のシェラ様が死ぬの?

ーーんん? シェラ死ぬ
ーールチィ助かるーんん?
ーーしぬー

 よく分かんないけど、バルコニーがある、奥の部屋にシェラ様達はいるんだよね?
 急がなきゃ! ってどうやって行ったら良いの?
 うーん……私が頭を悩ませてると、ひとつ目君がこっちを見て何か言いたそうだ。


 もしかして一つ目君、あのバルコニーに行ける?

 うさぎ姿で必死に身振り手振りを動かし、伝える。

 その様子を見ていたひとつ目君は、コクリとうなずき王城の外側から二階のテラスへジャンプで軽々と上がる。ひとつ目君凄い!

 あっ! シェラ様達がガラスの向こうに見える

 良かった……生きてる。


 ひとつ目君が、テラスから勢いよくガラス扉を蹴破り中に入る!

 バァーーーーン!!
 大きな音とひとつ目君の登場に、みんなが一斉に注目する。

「なっ! 何もの? 魔人!?」
「なんで魔人が?」


ーー違うー! 
ーーひとつ目君ー友達
ーー仲良しー

 妖精たちの様子を見た黒ちゃんが獣王さまを止める。

ーーこいつは妖精達の友達だ! えっ……? 俺達を助けに?


 シェラ様!!

 ウサギの私は、シェラ様の顔に勢いよく飛び付く!

『わぷっ? 何じゃっウサギ?』

「おい! 竜王よ。邪魔が入ったけどな? さあ! さっさと死ね? 出ないと仲間に連絡して番を殺すぞ?」

 えっ! 私を殺すって? 私はここに居るよ! シェラ様! ねぇシェラ様!

「モキュキュウ! キュー!」

 必死にルチィだよーってアピールするけど、言葉が通じない。

『ルチィを助けてくれよ』

ーーシェラー? ルチィ抱っこしてるよ。
ーー何でしぬ?
ーーわからんールチィウサギー

 妖精さんの話を聞いた白ちゃんたちが目を見開く。

ーーちょっ? ウサギがルチィ?

ーーそだよールチィーウサギー

ーーシェラ! 死ぬのはやめだ! お前の抱いてるウサギがルチィだ!

 白ちゃんと黒ちゃんに、妖精さん達が説明してくれ、やっと! ウサギが私って気付いてくれた。良かった……。

『なっ! ルチィなのか?』

 シェラさまが驚き私を見る。
 私はシェラ様の顔にスリスリする

『ルチィ……無事で……良かった』

 シェラ様がウサギの私にそっとキスをした。
 冷たい雫が顔に落ちて来た……シェラ様泣いて……?
 シェラ様はモフモフの私に顔を埋め何も話さなくなった。

ーー本当に良かったよ! ルチィ。
ーーシェラが死ぬとか言い出すし! どーしようかと思ったよ。

 白ちゃん黒ちゃんが、私とシェラ様の所に慌てて走って来た。

 シェラ様……私の為に死のうとしてたなんて! 間に合って本当に良かった

『じゃあコイツらはもう要らないな!』

「なっ? 何を言ってるんだ? 番がどーなってもいいのか?」

『竜王の番はもう帰ってきたよ! お前達は仲間から聞いてないのか? 番を何の動物に変身させて捕らえたか?』

「「!?」」

 エレヴァン王国の間者は黙って目を合わせる。

「「「………ウサギだ」」」

ヒィィー!!

『もう遅いよ?』

 逃げ惑うエレヴァン王国の人達。

 白ちゃんと黒ちゃんが、エレヴァン王国の人達を容赦なく魔獣に変えて行く。

『ルチィ……』

パチンッ

 シェラ様が私のもふもふから顔を離し、やっと私の名前を呼んだと思ったら転移した。


⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎


「えっ!?」

 この場所は以前番の契りを交わした大切なお花畑。

 シェラ様?! まだ悪い人達の事終わってないんじゃっ︎!
 私達だけこんな所に来て大丈夫なの?

「キュウウ! キュッキュッ!?」

 あー……ウサギだから伝わらない。困った。どうやったら元の姿に戻れるの?

『ルチィの可愛い腕に……こんな物をはめおって許せぬ』

 シェラ様は、私の腕にはめられた腕輪を、粉々に壊した。

 すると……! 私は本来の姿に戻った。

「良かったー! 戻れた…」

 ん?
 んん?
 私! 何も着ていない真っ裸だ! 何で︎?

「キャーッ!!」

 思わず座り込む。

「シェラ様!見ないで!」

 こんなに明るい場所で、シェラ様に裸を見られるとか! 耐えられない!

『ふうむ……俺も目のやり場に困る!』

 シェラ様は自分のマントをとり私を包んだ。

『これで大丈夫であろ?』

 そう言うと、私をお姫様抱っこした。

『ルチィ……俺はね? 今回の事は本当に怖かった。気が狂ってしまうほどに。こんなにもルチィを失う事が恐ろしいとは。俺はもうルチィがいない世界で生きて行けぬ。こんな思いは二度したくない』

 シェラ様が私の体をきつく抱きしめる。その手は少し震えている。

『ゆっくり待つ……つもりでいたんだが……また今回の様な事があれば怖い。お願いだ。我と結ばれてくれぬか? そうすれば魔力を封じられようが、ルチィの居る場所が分かる様になる。ダメか?』

 シェラ様が潤んだ瞳で私を見つめる。結ばれる? どー言う意味だろう?

 私の様子を見ていたシェラ様が『結ばれるとは男女の営み、まぐわいだな』っと少し眉尻を下げ、困った顔で笑った。

 えっと……!?
 いっ営みって……

 男女のアレだよね!?
 きっキスだけでもあんなにドキドキするのに。
 それ以上とか、私大丈夫なんだろうか……はわわっ!

『ルチィ? ダメかの?』

 シェラ様がコテンッと首を傾げて、潤んだ瞳で見てくる。
 そんな目で見られると胸がきゅーっと苦しい。

「あのっダメって言うか、その……? そのう……」

 前世から未経験なんで今の私にはレベルが高すぎるとか……さすがに言えないし。なんて言ったら……。

「あっ! そうそう! さっきのエレヴァンの悪い人達とかほったらかして……ここに来ちゃったし」

『そうか! アレが片付けば良いのだな!』

 満面の笑顔でキスをしてきた。


『ではさっさと片付けて竜人国に帰ろうぞ』

 んん? あれぇ? 私まだ返事してないよね?
 この展開は……シェラ様は完璧に……あうっ!

 ちょっと待って……私の心臓もつのかな。
 先の事考えるとドキドキして苦しい。



★★★

ジレジレの二人、次回やっと結ばれます。(*´꒳`*)
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