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ルチア十六歳、魔法学園編

竜人族の嫉妬

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ーールチィ? ちょっと寝る前に大事な話があるんだけど良い?

 夜更けに白ちゃんが、真剣な顔で部屋に入ってきた。

「えっどうしたの? 白ちゃん」

ーーまぁちょっと……黒と僕とルチィで話がしたい。

 どうしたんだろう? いつになく真剣な白ちゃん。

 私達は部屋のソファに座り、話をする。

ーーあのさ、今日のお昼ちょっとやばかったよね? シェラがキレちゃって。

「うん。あれはビックリした。私が止めてもやめてくれなくて」

 正直怖くてドキドキした。

ーーでもアレが竜人族の普通なんだよ。番に何かされたら平気で人を殺すだろう。

ーー特にシェラの奴は八百年も番を待ってた拗らせ龍王だ。ルチィはそんな奴に現れた、唯一無二の存在。ルチィに何あった時、彼奴はヤバイ。龍王の力を余す事なく使って暴れるだろうな。想像するだけでヤベーわ。

 ゴクリ……。

「優しいシェラ様が暴れる︎」

ーーそれだけルチィが大事なんだよ!

ーーだいたい本来ならな? 竜人族は番を人前に出さない。それを学園なんかに行く事をシェラは許してる。あり得ないな! それもルチィが普通の学園生活を送りたいと望むから。我慢してるんだよ!

ーーせめて番である事をアピールしたいだろうけど、それも目立つからと、シェラの番である事を隠しているだろ?

「……あっ」

 確かに……。

ーー本当なら、皆にルチィは自分の番だから近寄るなと牽制したいだろうに。シェラは相当我慢してる筈だよ?

「私が……普通が良い目立つのは嫌だって、いつも言ってるから……」

ーーそりゃね? 普通も大事だと思うよ? でもな? それを貫き通す事で、周りに迷惑をかける様な事をおこすのであれば、話は違うと俺は思う。

ーー僕達はルチィの幸せが最優先。人族のルチィが目立たず普通に暮らしたいと言うなら、そうさせてあげたい。

ーーでも今日みたいな事がまた起こって、今度はシェラが誰かを殺してしまったら?

 今日みたいな事がまた!? それは絶対にいやだ。

ーールチィはそんな事望んでないだろ? その時悲しむルチィを俺達は見たくない。

 そんなにまで、私の事を考えてくれていたなんて、嬉しくて胸が熱い。

「白ちゃん、黒ちゃん心配かけてゴメン。ありがとう。私自分の事ばっかりで……」

 私は白ちゃん黒ちゃんの話を聞いて、気付いてしまった。

 この世界に馴染んでいた気になってたけど、そんな事は全く無く。日本人であった感覚のまま過ごしてたのだと。
 それは、白ちゃんや黒ちゃんそしてシェラ様が私に与えてくれていた環境だったのだ。

 私はずっと、皆に甘えていたんだと思い知った。

ーーでね? これは僕からの提案なんだけど、シェラの番としてルチィを皆に宣言した方が良いと思うんだ。シェラの番だと分かれば誰も何も出来ないし。近寄らないだろう。ルチィの望む普通ではなくなるけど。

「うん。分かった!」


 私の為に、白ちゃん黒ちゃんが沢山悩み考えてくれたんだ。
 私も変わらないと! もう私はこの世界の人間なんだ。

ーーえっ? 良いの? 目立つよ? 憧れの普通の友達も出来ないかもだよ?

「良いの! 私も変わらないとって思ったの!」

 そりゃ友達は欲しいけど……今直ぐでなくて良い。いつかで良い。

ーーふふっルチィなりに大人になってるんだな。

「何? 黒ちゃん。そのトゲのある言い方」

ーーん? そのままの意味だけど?

 むぅー……!


 私は本当に幸せだ。
 こんなにも自分の事を一生懸命に考えてくれる仲間に出会えた事。この世界にきて一番の宝物。
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