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ルチア十六歳、魔法学園編

閑話 ラウワン

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 シャリオン様が、この私を頼ってくれた! 有り難き幸せ。

 魔力を不正し委員長になった人族の女など、口説くのも虫唾が走るが、シャリオン様からのお願いだ。何としても成功させないと!

 だが……簡単に口説けると思っていたのに!
 あの女の側には、獣人族の男が常にいる為近寄る事が出来ない。

 なぜか分からないが、あの獣人族の男達……何か怖いんだよな。

 クソッ! 早く成功させてシャリオン様の親衛隊に入りたいのに……。

 そんな時だった。俺にチャンスが巡って来た。

 机に無造作に置かれているプリントの山。

 コレはあの女に、担任が頼んでいた書類だな。
 これは……うまくいけば取りにくるか? 1人できたらチャンスだな。

 しばらく教室で待っていると。
 人族の女がバタバタと慌てて教室に一人で入ってきた。
 フフッ神様は私に味方したみたいだね。

 人族の女にさりげなく近付き声をかける。

 何だ? 近くで見たら凄く綺麗じゃないか……この女。
 それに魔力も美しい……っと俺が見惚れてる場合ではない。

 えっ?
 嫌?
この私が断られた? 何? ありえない。

「まぁ、そー言わずにさ……」

 ギャアァァァー
 頭が割れるように痛い!! 俺に何が起こってるんだ?

 なっ竜王シェラザード様!? 何で此処に!? 凄く怒っている。
 怖い……。

『この手はいらんの?』

 そう言って私の右手が潰された。私が何をしたのだ! 分からない。
 何でこんなにシェラザード様は怒っているのだ。

 今度は頭を潰すと言っている。

 あっ頭を潰すだと? やめてください。 
 私は死ぬのですか。

 するとあの人族の女が必死に止めに入ってくれている。
 優しい女子なんだな。私はこんな優しい女子を騙そうとしていたのか。

 なっ何と!人族の女は!
 いやルチア様は番様だった!
 シェラザード様があんな風に怒った訳が分かった。

 竜人族はかなり嫉妬深い、番に何かされたら相手を殺すくらいに。
 優しいルチア様が止めてくれなければ、私は死んでいただろう。

 ルチア様に助けられた命。これからは少しでもお役に立てるよう勉強しよう。

 竜王シェラザード様たちが立ち去った後も、恐怖が自分を襲う。

 まだ震えが止まらない。立ち上がりたいのに足が震えて立てない。

 そんな中……シャリオン様が笑いながら近寄ってきた。あんなにも美しいと思っていた微笑みが、今はなんだかくすんで見える。

「あら? ラウワンじゃない? どうなの? あの女そろそろ口説き落とせそう?」

 シャリオン様。あんなに女神の様に思えたのに、今は少し嫌な女にさえ見える。
 貴重な愛し子様なのに。

「シャリオン様! この件ですが私には無理でした! すみませんがもう出来ません」
「えっ? 何どーしてよ? あんなに自信満々だったじゃない!」
「無理だと分かったのです! 失礼します!」

 まだ何かシャリオン様が話していたが、私は席に戻った。

 もう二度と同じ間違いを犯さない……。
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