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ルチア十六歳、魔法学園編

閑話 シェラザード

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 ふぅむ……。

 ルチィが我が竜王国に来てから六年も経ったのだな。

 連れて来た当初、興奮のあまり我等竜人たちが色々とやらかしてしまい。
 ルチィを怒らせた時は、本当にどうしようかと思った。

 あの時の事は、今思い出しても胸が苦しい……。
 番が現れる前はこんな感情知らなかった。
 一月会えないだけで、あんなにも苦しくて切ないなんて。一ヶ月程度の時など、瞬きもすれば終わる時間……それが一日でさえ経つのが恐ろしく長かった。

 もうあんな思いは絶対にしたくない。

 俺はルチィの事となると、どうやらまともな考えが出来ないらしい……。
 色々とやらかしてしまうのだ。ただルチィに喜んで貰いたいだけなのに。加減が分からない。

 つい可愛いルチィを自慢したくて、皆に見せたくて、番パレードをしたら……!
 とんでもない騒ぎになってしまった。

 この騒ぎの所為で、ルチィは何処にも出歩けなくなってしまった。
 さらに、ルチィの父上とも騒ぎの所為でなかなか合流出来ず。一緒に暮らす事も難しくなってしまったのだ。
 我はルチィと一緒に、父上も竜人国の王城で暮らして欲しかったのだが『もう王城暮しはトラウマで嫌なのだ』と。断られてしまった。確かにその気持ちも分かる。

 ならばせめて近くにと、竜王国の田舎に家を建て、今はのんびり暮らしておる。
 偶にルチィを連れて遊びに行っておる。
 一緒には暮らせなかったが、今幸せそうな二人を見ていると我も嬉しい。幸せそうに笑うルチィを見ると胸が暖かくなるのだ。

 この六年でルチィは美しく成長した。
 幼い時は我慢も出来たが、偶にルチィが欲しくなる。我のものにしたい……!
 でもルチィの気持ちを優先したい。八百年待ったんだいつまでも待とう。

 その気持ちだが

 はぁ………苦しい。

 本当なら、学園などに入れたくなかった。
 他の者に愛しいルチィを見せたくない。城でずっと閉じ込めておきたい。

 そして我だけを見ていたらいい。可愛い瞳が映すのは我だけで良いのだ。自分がこんなに欲深いとは知らなかった……。

 でもルチィの事だけは、誰にも譲れんのだ。
 ルチィと出会えてからの六年が、出会う前の八百年よりも鮮やかに色付き充実している。

 俺はもう、ルチィ無しでは生きていけないだろうな。

 竜人は番が死ぬと、後を追うように死んで終う者が多い。
 昔はそれがなぜなのかと、不思議であったが、今の俺ならその意味がわかる。

 番のいない世界など、生きる意味がない。

 一度……色鮮やかで甘美な世界を味わってしまうと、モノクロの味気ない世界でなど死んだも同然。

 ルチィ……愛おしい俺の番。そなたに出会えて……俺の番がルチアで本当に良かった。

 俺の唯一無二の大切な番。
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