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ルチア十六歳、魔法学園編

気持ちの変化

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 最近シェラ様に抱っこされたりすると、自分の中で分からない感情がある。
 ドキドキはずっとしてるんだけど、それとは別の何か……もっと一緒にいたいって思う。

 多分この感情は、シェラ様の事を番として意識し始めてるんじゃないのかな?

 まだ良く分からない。
 シェラ様は出会ってからずっと優しい。
 私の気持ちを優先して待ってくれてるのが分かる。
 だからこそ、ちゃんとこの気持ちに向き合わないと。

 しまった。

 明日は魔法学園入学式なのに、色々考えて寝れない……困った。



★★★


ーーおいルチィ! 起きろっ!
ーーねぇ?遅刻するよ。早く用意しないと!

「……むにゃ、う、ん? あっ!」

ーーやっと起きた! 早くしろ!侍女のマリーさんが困ってるだろ?

 学園の制服を着た黒ちゃんが、ベットを覗きこんでいる。

「ひゃ! あわわっゴメン」

 私は慌ててベットから飛び降りた。

「ルチア様! 失礼します」

 侍女マリーさんはそう言うと、瞬く間に私を女学生姿へと仕上げてくれた。
 仕事が出来る侍女マリーさん。流石です。

ーーさぁ! 朝ご飯食べに行こう!

「うん!」

 広間に行く、とシェラ様が待っていた。

『ルチィおはよう。遅かったから心配したのだぞ?』
「えへへ。寝坊しちゃって……」
『さぁこっちにおいで?』

 私を膝の上に座らせ、ご飯を食べさせてくれる。
 流石に毎回なので慣れたけど、この行動が竜人族の番にする求愛の給餌行為だと知ったのは最近。

 知った時は、恥ずかし過ぎてご飯に味がしなかった。

 皆の前で求愛行為をしてたなんて……!
 でも、竜人族からしたら普通らしく、何も思わないみたいなんだけど……。

『ん? どーしたのだ? 食べぬか?』
「んっ食べる!」

 シェラ様がテーブルに並ぶ料理をフォークに刺し私の口に入れる。

 もぐもぐ。

『ルチィ? 我も一緒に学園まで行くからの?』

 一緒に!? 竜王様が一緒なんて目立って仕方ない。何を言い出すんだこのお人は? 慌てて口の中のベーコンを咀嚼し飲み込むと。

「そんな心配しなくて大丈夫だよ? 白ちゃんと黒ちゃんも一緒だし」
『我がルチィの側に居たいだけなのだ。ダメかの? ん?』

うぐっ……!
恥ずかしいセリフを……! そんな風に可愛く言わないで。

ーールチィ急ぎで食べて。そろそろ出発しないと!

『そんな急がずとも、我が飛んで連れて行こうぞ?』

ーー却下だよ!!
ーーバカ竜王!! 目立ち過ぎて普通の学園生活が出来なくなるだろ?

 白ちゃん黒ちゃんに叱咤され、落ち込むシェラ様。

『ぐぬう……だが馬車での見送りはするからな』

ーーさぁ!もう行くよ。

 白ちゃんが私の手を引き、慌て馬車へと向かう。

 私達はバタバタと馬車にのる。 

 この馬車は、シェラ様の執事アルさんが、普通に見える馬車を用意してくれた。
 さすが仕事が出来る執事さんです。

 馬車の中でも私の座る場所はシェラ様の膝の上……このパターンって、次は私を抱っこして付いて来るとか言わないよね?

 私の気持ちを察した黒ちゃんが、心配し少し呆れ気味に確認してくれる。

ーーおい……シェラよ? お前本当にわかってるんだろうな?

『分かっておるとも! 学園にいる間は、俺の番だとバレないようにする! だろう?』

ーー本当に理解してんのか怪しいんだよなぁ……。 

 白ちゃん私も同感です! 穏便な学園生活を送りたいんだから。お願いしますよ! シェラ様。

ーーおっ! 学園に着いたみたいだな!

「わぁ! 大きなお城だぁ。これが魔法学園なの? スケールが大きいなぁ」

 私と黒ちゃんは馬車の小窓を必死に覗く。

ーーじゃあな? シェラ、帰ってくるまで大人しく待ってろよ?

 学園の少し手前で馬車を止めてもらい、私たち三人は降りた。

「シェラ様お見送りありがとう」

『うむ。ルチィ気をつけるのだぞ』

 シェラ様はそのまま馬車に乗って帰って行った。

 やけに素直に帰ってくれた。シェラ様もさすがにわかってくれたんだね。

ーールチィ! 妖精達に言わないと集まって来てるぞ!

「えっ? あっ忘れてた! 妖精さん達~。この学園内はあんまり連れて行けないのゴメンね。クッキーいっぱいあげるからね!」

ーーはーい
ーー分かったー!
ーークッキー約束だよー

 危ない危ないっ。妖精さん達はいつも一緒だから、目立ってるって事忘れちゃうんだよね。

ーーさぁ行くか!

「うん!」

 学園の敷地内に足を踏み入れる。

 凄い! 色んな種族がいる!エルフ族の人が多いのかな? エルフ族は魔力が高いって聞いたし。 
 その次に竜人族かな?
 獣人族もいる。人族は殆ど見かけないなぁ。

「人族は少ないね……」

ーーそりゃそうだろうね。魔法学園ここに入学するには魔力テストがあるからね。あの審査がかなり厳しいみたいだよ?

ーー魔力が少ない人族は、なかなか合格しないだろうな。

「なるほど、じゃあここにいる人族達はエリートなんだね。」

 少しキョロキョロしながら敷地内を歩いて行くと前から声をかけられる。

「入学おめでとうございます! 僕は2年のサンだよ。会場まで案内するね!」

 おお! 先輩が案内してくれるの?
 私達は案内されて会場に入る。

「わぁっ!」

 入学式の会場は豪華なパーティー会場みたい。凄いなぁ。

 私達は案内された場所にソワソワと座る。

ーー何か凄いね! 僕は学園とか初めての経験だから、ワクワクするね。
ーーそうかぁ? 俺はちょっと眠くなっきたなぁ。ふぁあ……。

 ふふ。二人を見ていたら緊張がやわらぐや。

「これより魔法学園入学式を初めたいと思います」

 司会者の声が響くと、ザワザワしていた会場が静まりかえる。

「生徒会長挨拶!」

 おお。賢そうなエルフ族の人だ!

「校長挨拶!」

 次は校長。竜人族だ。凄く若く見えるけど。きっともの凄く年上だよね?

「最後に、今日は特別に学園長が来てくれています。こんな事は滅多にないので、今年の新入生はラッキーですよ!」

 校長先生がラッキーだと興奮気味に言ってるけど、このパターンって……何か嫌な予感が……。

「では学園長に登場してもらいましょう」

 アナウンスの後颯爽と現れたのは、私たちのよく知るあのお方。

『ふぅむ、新入生ども! 学園長のシェラザード・リュ・バハムートだ』

「きゃーー!!竜王様⁈」
「すげー!」
「わー! 初めて近くで見れた! 竜王様!」

 シェラ様を見れて、皆大興奮だ! 会場の熱気がすごい。
 感極まり泣いてる人さえいる。

 一部を除いて……

ーーおい! あの馬鹿竜王やっぱりわかってないじゃねーか!

 本当に!!
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