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ルチア十歳、断罪&冒険編
冒険者ギルドでパニック
しおりを挟む「ここが冒険者ギルドになります」
「わぁ……」
ガウディさんに案内され、連れて来てもらった冒険者ギルドは、赤いレンガで作られた。とても大きな建物だった。
「さぁ入りましょう」
重厚な二枚扉を開け中に入ると
「すごい」
今まで見なかった、鎧を着て武器を持った厳つい人たちが、沢山いた。
ゲームの世界みたい。いや現実世界なんだけど、すごく不思議な感じ。
そして今、私達は冒険者ギルドの受付に並び、順番を待っているんだけど……
気のせいかも知れないけど、凄く見られている気がする……。
「おいおい? 何時からギルドは託児所になったんだ? 乳臭いガキが混ざって、ギルドが臭くてたまらん……」
狼の顔をした二メートルは優にある獣人が、大きな声で文句を言っている。
乳臭いって私のこと?
すると狼獣人が私に近づいてきた。すぐに私を守るように、白ちゃんと黒ちゃんが前に出てくれる。
「おいおい綺麗な顔をしたお兄ちゃんよ? 子守のついでにギルドに寄られたら困りまちゅよー?」
ーーなっ
『何だと?』
ヤバイ……バカにされ、黒ちゃんが今にも何かしそうだ。
「こちらの方達は私の連れですが? 何か問題でも?」
ガウディさんが事態を察して、庇う様に前に出てくれる。
「あっ貴方はエルフ族の、ガウディ!?」
ガウディさんを見た狼獣人が、態度を豹変させる。明らかに焦っている。
「やばい奴が一緒かよ……」
「なにか?」
「いやっ何でもないですよ? そのっ……小さな子供が居たので気になっただけだよ!」
狼獣人はそう言うと、ピュウっと逃げる様にその場を離れた。
「ガウディさんって有名なんですね……」
「イヤイヤ無駄に長寿なので、長生きする内に私の名前がちょっと知れただけのことです」
ーーくそっ何で俺様が獣人なんかにバカにされたままなんだよ!
事態は収束したんだけれど、黒ちゃんの怒りが収まらない。
「ゴメンね黒ちゃん。私のために我慢させてしまって」
ーー別にルチィのせいとかじゃ。……もう良いよ! 気にしてない。
何だかんだ言って優しい黒ちゃん。私が困ってるのを察し、頭を撫で気にしてないと言う。
いつも撫でる方なので、黒ちゃんから頭を撫でられるのは、なんだか新鮮。
「さぁさ! 気を取り直して早く受付を済ませてしまいましょう!」
「そうだね!」
やっと私達の受付の番が来た!
「こんにちは、今日はこちらの方の冒険者登録をお願いします!」
「まぁ! ガウディ様お久しぶりです。宜しくお願いします。お強そうな方達ですね!!」
受付のお姉さんは白ちゃん黒ちゃんに向かって言ってる……カウンター下にいる私は視界に入ってない?
「いやっ僕達じゃなくて! こっちの女の子だよ!」
「こちら…………?」
受付のお姉さんは視線を私に向ける。やっと目が合った!
「あの……失礼ですが、こちらのお子様ですか?」
何かバカにされてる? 私が小さいから?
「申し訳ありませんが、幾らガウディ様の紹介でも十歳に満たないお子様は登録出来ません。」
「あの! 私十歳です!」
そう言って身分証を見せた。
「申し訳ありません。余りにも小さな方でしたので……」
むう。悪かったね! ガリチビで。好きでこの体型になったんじゃないよーだ。
私が少しむくれていたら
『俺はルチィのこと可愛いと思うぞっ』
ブッ……シェラ様。
なんとも言えないフォローをありがとうございます。
「では、魔力測定からさせて貰いますね! こちらの水晶に手を乗せて下さい」
そう言われ水晶に手を乗せようとした時、白ちゃんの声がした!
『あっちょっ! ルチィストップ!』
「えっ?」
だが時すでに遅し、もう私の手は水晶の上に乗っていた。
水晶はギルド全体を覆う眩い光を放った後、粉々に砕けた。
『そりゃこうなるよね……』
白ちゃんが少し呆れたように話す。
何が起こったのか理解出来ず、目をまん丸にさせ、固まってる受付の人。
なんで割れちゃったの?
ーールチィ! ルチィの魔力は桁外れだから、ギルドの水晶なんかで測れないんだよ! 王城で魔力測定した時の事忘れちゃったの?
あっそーだった! 困った。どーしよ。
この騒動で周りに人が集まってきた! 目立ちたくないのに……目立ってしまった。
「おう、ガウディじゃねーか! 久しぶりだな」
「おおっシュレク! 久しぶり、ちょうど良かった。別室に案内してくれる?」
「んん? どした? なんか訳ありか? よしっ二階の部屋に案内しよう」
いきなり現れた片目に傷のある虎獣人、何とこの人はチャハロのギルドマスターらしい。さすがガウディさん。顔が広い!
私たちはギルドの二階にある、一番広い応接室に案内される。
「このシュレクと私は昔、冒険者パーティーを組んで一緒に旅をしていた事があるのです」
なるほど、だから凄く仲良しな感じなんだね。
「で? ガウディこの不思議な一行について説明してくれるか? 先程の騒ぎについてもな?」
「聖獣様、このシュレクは信用できる人物です。正体を明かしても宜しいですか?」
ーーどうする? ルチィ?
白ちゃんが念話で聞いてくる。
うーん。ガウディさんが信用出来るって言うんなら良いのかな。
「良いですよ!」と私がガウディさんに答えると
ガウディさんは「絶対に秘密にしてくれ」と言って白ちゃん黒ちゃんが聖獣である事、私が愛し子である事を話した。
そこでビックリし過ぎてシュレクさんが固まってしまったので、私の膝の上に座り茶菓子をポリポリと食べている、竜王シェラ様の事は話せなかった。
「生きてる内に、聖獣様をこの目で見る事が出来るなんて……」
シュレクさんは白ちゃん黒ちゃんに向かって手を合わせ拝みだした。瞳には涙を溜めている。
白ちゃん黒ちゃんって凄いんだね。可愛いワンコにしか見えないのに。
やっと正気になったシュレクさんが、とんでもない事を良いだした!
「聖獣様や愛し子様を、Fランクからスタートさせられねぇ! 前例はねーけどSランクスタートだな!」
ちょっ!? 前例がないなら止めてください。
「目立ちたくないのでFランクスタートで大丈夫です!」
★★★
結局、間をとりCランクからのスタートとなった。Fで良いのに……!
「それと、シュレク。キッチン付きの借家を借りたいのだけど良い家はあるか?」
さすがガウディさん! 痒いところに手が届く男です。キッチン付きの家♡最高です!
これで妖精さん達にもクッキー作ってあげれる!
「値は張るが良い家がある!」
値は張るって……キッチンは必要だけど高いのは、ちょっと……普通の家で良いんだけど。
結局皆が見に行こうと言うので、借りるかどうかは分からないけど、今からその家を見に行く事になった。
「ここが、お勧めの借家です!」
こっここ?
家じゃないよね?これ、豪華なお屋敷!
『ふうむ……我は此処が良い! 気に入った!』
えっ?
シェラ様が元の姿に戻って、言った。
いきなり竜王様が現れたので、シュレクさんはビックリし過ぎて軽く気絶しているよう?
「……竜王様が急に現れた! うーん……これは夢か?」
もう! どーなるのコレ?
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