上 下
4 / 48

リンドール公爵家

しおりを挟む
「あのう、妖精さん達にお聞きしたいのですが……わたくし、一週間後にリンドール公爵家で開催されるお茶会でお友達を作らないといけなくなりまして……どうしたらお友達ができますか?」

 アルビダは両手の指をもじもじと触りながら、妖精たちに質問する。

 その可愛い仕草に、妖精達はお決まりに大興奮するのだが、それが終わるとアルビダの質問に対して的確に答える。

〝リンドール公爵家!〟
〝アビィたんの最初のフラグ〟
〝ヤンデレ・ジェイデン〟
〝ジェイデン・ヤンデーレ〟
〝アビィたん! フラグをへし折るなら関わっちゃいかん!〟
〝その男危険につき近寄るべからず〟

「なになに……へ!? ヤンデレ? その男危険につき!?」
『あははは、面白いこと言ってるねぇ』

 アルビダは、妖精達の教えてくれる内容が頭に入ってこず、画面の前で固まってしまう。

〝アビィたんが理解出来ない言葉を使う不届き者は手打ちじゃ〟
〝草生えて森〟
〝公式のキャラクター設定貼るか〟
〝ジェイデンんぁぁぁぁ〟
〝ほいっ〟
〝【リンドール公爵家三男。ジェイデン・リンドール】
 青の公爵家とも言われ、青を基調とするリンドウの花を紋章に掲げている。
 そのリンドウの花言葉は【正義】【悲しんでいるあなたを愛する】
 ジェイデンは、リンドウの花言葉の象徴するかのように、正義感が強く悲しんでいる人を助けたい気持ちが強い。かわいそうな人を愛す癖があるのだ。

 幼少期のアルビダとお茶会で出会い、母を亡くし悲しんでいる姿のアルビダを見て、助けてあげたくて知り合ったのをきっかけにアルビダに惹かれていく。
 アルビダはジェイデンの優しさが嬉しくて、兄のように甘えていく。
 その姿が可愛らしく、ジェイデンはどんどんアルビダに夢中になり、ヤンデレ化していくこととなる。
 そのことによりでジェイデンの未来は、最悪の方向へと進んでいく。
 ジェイデンはアルビダの最初の犠牲者。〟
〝このせいでアビィたんは、ジェイデンを闇堕ちさせた責任を取らされるんだよな〟
〝ジェイデン・ヤンデーレに関わるな!〟

 こっ、これはリンドール公爵家の事を話しているのでしょうか?
 確かにリンドール公爵家のお庭には、美しいリンドウの花がたくさん咲き誇っていると聞きました。
 リンドウの花言葉……【正義】以外に【悲しい人を愛する】なんて意味があるなんて知らなかった。
 妖精さんはなんでも知ってるのですね。

 ええと……私がこの方に甘えるとヤンデレ化して、未来を最悪にしてしまう……!? そもそも初めて会った知らない人にわたくしが甘えるなんて出来るのでしょうか? 

「ヤンデレ? とは何でしょう?」
『う~ん。今のアビィに理解するのは難しいかもね』
「……ロビンは分かりますの?」
『なんとなくね』

 ロビンが顎を少し上げて、得意げにアルビタを見る。
 まるで僕の方がアルビダよりもしっかりしているね。とでも言っているかのよう。

「……むう」

 アルビタは悔しくて口をプクッとふくらませる。そんな姿を見た妖精たちは興奮し、スパチャを投げるのだった。

「アビィはコイン稼ぐの上手いねぇ」
「ふぇ? 意味がわかりません」
「はぁ~、無自覚はこれだから……」

 ロビンは肩を上げて、やれやれとジェスチャーをして目を細めた。
 当のアルビダはというと、なぜそんな仕草をロビンが自分にするのか、全く理解できず頭を悩ませるのだった。

 妖精たちは思う存分にスパチャを送り満足すると、再びお茶会の話に戻る。

〝アビィたん! お茶会では男の子と関わったらだめだよ!〟
〝とくにヤンデーレはアウトー!〟
〝侯爵令嬢のリリィは?〟
〝 良いねー 〟
〝【リリーローズ・シュトロン】アビィたんの一番の理解者。彼女だけは最後までアビィたんを助けようとしていたもんね〟

 リリーローズ・シュトロン?
 シュトロン侯爵家のことは、お勉強して知っていますが、どのような令嬢がいるかまでは知りませんでした。
 その方がわたくしの理解者? 妖精さんはそんな事まで分かるのですね。
 ええと……困りましたわ。文字の速度が早すぎて、目で全て追えません。

 すごい速度で羅列されていく文字が読めなくて悔しそうなアルビダだが、それでも書かれていく文字を見逃さないよう必死に読んでいく。

〝リリィはオレンジ色の髪色に緑色した瞳よ〟
〝お茶会に参加しているはずだよ〟
〝女の子と友達になると良いよ〟
〝アビィたんを守らないと!〟

 ふむふむ。リリーローズ様にお茶会で会えると。
 女の子とお友達になる……わたくしに出来るかしら。
 ……不安ですわ。でも頑張らないと!

「妖精さん、わかりましたわ! お茶会では女の子と仲良くして、リリーローズ様を見つけるのですね。そしてジェイデン様には近寄らない」

〝アビィたん頑張れ〟
〝やる気アルビダ様も可愛い〟
〝その勢いだ〟

 妖精達に色々な情報を聞き、アルビダはやる気が出てきたようで鼻息荒く、両手を握りしめた。

『じゃあ今日の配信はおしまいかな? みんなにお礼を言って終わりにしようね』
「はい! 妖精さん、今日は色々と教えていただき本当にありがとうございます。わたくし頑張りますわ」

 アルビダはお日様のような笑顔を、妖精達が見ている画面に向けた。

〝フォぉぉぉぉぉぉ尊いい!〟
〝尊死〟
〝癒された……今日一日頑張れる〟
〝可愛すぎて語彙力失うって!〟

チャリン♪【500P】
チャリン♪【1000P】
チャリン♪【10000P】
チャリン♪【2000P】

 この後。画面が揺れたかのように思えるくらいコメントで溢れかり、スパチャが飛びかいロビンが消すまで、画面がずっと金色に輝いていたのは言うまでもない。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

新たな婚約者は釣った魚に餌を与え過ぎて窒息死させてくるタイプでした

恋愛
猛吹雪による災害により、領地が大打撃を受けたせいで傾いているローゼン伯爵家。その長女であるヘレーナは、ローゼン伯爵家及び領地の復興を援助してもらう為に新興貴族であるヴェーデル子爵家のスヴァンテと婚約していた。しかし、スヴァンテはヘレーナを邪険に扱い、彼女の前で堂々と浮気をしている。ローゼン伯爵家は援助してもらう立場なので強く出ることが出来ないのだ。 そんなある日、ヴェーデル子爵家が破産して爵位を返上しなければならない事態が発生した。当然ヘレーナとスヴァンテの婚約も白紙になる。ヘレーナは傾いたローゼン伯爵家がどうなるのか不安になった。しかしヘレーナに新たな縁談が舞い込む。相手は国一番の資産家と言われるアーレンシュトルプ侯爵家の長男のエリオット。彼はヴェーデル子爵家よりも遥かに良い条件を提示し、ヘレーナとの婚約を望んでいるのだ。 ヘレーナはまず、エリオットに会ってみることにした。 エリオットは以前夜会でヘレーナに一目惚れをしていたのである。 エリオットを信じ、婚約したヘレーナ。それ以降、エリオットから溺愛される日が始まるのだが、その溺愛は過剰であった。 果たしてヘレーナはエリオットからの重い溺愛を受け止めることが出来るのか? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

夫に離縁が切り出せません

えんどう
恋愛
 初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。  妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...