13 / 34
変な奴
しおりを挟む
俺のクラスメートにヤナギっていう変な奴がいた。
クラスに一人や二人変な奴はいるものだが、ヤナギは物凄く変な奴だった。
「戦後の闇市で買った豚肉の味が豚肉の味じゃなかったんだ」
ヤナギの口癖だった。朝、学校に登校する。クラスメートに挨拶をする。
「おはよう」
すると定型文通りに
「おはよう」
って返ってくる。普通のクラスメートならば。でも、ヤナギの"おはよう"はまだイントロで、アウトロが存在する。
「おはよう」
「おはよう。でもさ戦後の闇市で買った豚肉の味が豚肉の味じゃなかったんだ」
なにがでもさなんだろうか。分からない。ヤナギに言葉の意味を問いただしても、首を傾げるばかりだ。
ヤナギは隙があれば、この謎な言葉を埋めてくるので、最初はクラスメートに嫌われていた。
しかし最近はギャグ扱いだ。
当初は気味悪がっていたクラスメートも、ヤナギがあまりにも真面目に繰り返す内にツッコミをいれるようになっていた。
いやお前何歳だよ!とかヴァンパイアかお前!とかタイムトラベラーかお前!とかとか。
今やクラスメートもヤナギの言葉待ちみたいなところがあるぐらいである。
ただ女子にはまだキモがられているけども、それはアイツらのノミみたいに小さい感性を思えば致し方ない。
ある日の社会の授業中
「この少年は、敵兵から命からがら逃げてきたんだ。逃げてきたのはいいけど、日本は敗戦。戦後の日本は廃墟の遊園地みたいだった。元々は楽しかったモノが今は全て錆びている。そんな目に見える絶望の中、少年は一人歩みを進めていった...」
先生がジェスチャーを加えながら、熱弁を振るっている。
有名人ではなく、一人の普通の人間の話をする。これが最近の授業の傾向かもしれない。誰でも知っているが、雲の上な存在で現実感がない有名人の話をするよりも、一人の何気ない人間の話をするほうが現実感があり、感情移入しやすいからだろう。
ヒートアップしてきたのか、先生のジェスチャーが大きくなってきたところで
「がバマギブメニザボボヤンゥビァワガァンンンン」
ヤナギが急に訳の分からない叫び声をあげた。
「ザバミタナカヤハラヌンァー」
クラスの皆が口を開けながら丸い目でヤナギを見ている。先程までジェスチャーを披露していた先生も動かなくなっている。
「ガダノビジガラァァー...ハァ...ハァ...こ、こいつは...俺だった」
"パァーン"ヤナギが爆発した。血で満たされた水風船みたいに。
クラスに一人や二人変な奴はいるものだが、ヤナギは物凄く変な奴だった。
「戦後の闇市で買った豚肉の味が豚肉の味じゃなかったんだ」
ヤナギの口癖だった。朝、学校に登校する。クラスメートに挨拶をする。
「おはよう」
すると定型文通りに
「おはよう」
って返ってくる。普通のクラスメートならば。でも、ヤナギの"おはよう"はまだイントロで、アウトロが存在する。
「おはよう」
「おはよう。でもさ戦後の闇市で買った豚肉の味が豚肉の味じゃなかったんだ」
なにがでもさなんだろうか。分からない。ヤナギに言葉の意味を問いただしても、首を傾げるばかりだ。
ヤナギは隙があれば、この謎な言葉を埋めてくるので、最初はクラスメートに嫌われていた。
しかし最近はギャグ扱いだ。
当初は気味悪がっていたクラスメートも、ヤナギがあまりにも真面目に繰り返す内にツッコミをいれるようになっていた。
いやお前何歳だよ!とかヴァンパイアかお前!とかタイムトラベラーかお前!とかとか。
今やクラスメートもヤナギの言葉待ちみたいなところがあるぐらいである。
ただ女子にはまだキモがられているけども、それはアイツらのノミみたいに小さい感性を思えば致し方ない。
ある日の社会の授業中
「この少年は、敵兵から命からがら逃げてきたんだ。逃げてきたのはいいけど、日本は敗戦。戦後の日本は廃墟の遊園地みたいだった。元々は楽しかったモノが今は全て錆びている。そんな目に見える絶望の中、少年は一人歩みを進めていった...」
先生がジェスチャーを加えながら、熱弁を振るっている。
有名人ではなく、一人の普通の人間の話をする。これが最近の授業の傾向かもしれない。誰でも知っているが、雲の上な存在で現実感がない有名人の話をするよりも、一人の何気ない人間の話をするほうが現実感があり、感情移入しやすいからだろう。
ヒートアップしてきたのか、先生のジェスチャーが大きくなってきたところで
「がバマギブメニザボボヤンゥビァワガァンンンン」
ヤナギが急に訳の分からない叫び声をあげた。
「ザバミタナカヤハラヌンァー」
クラスの皆が口を開けながら丸い目でヤナギを見ている。先程までジェスチャーを披露していた先生も動かなくなっている。
「ガダノビジガラァァー...ハァ...ハァ...こ、こいつは...俺だった」
"パァーン"ヤナギが爆発した。血で満たされた水風船みたいに。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
TRACKER
セラム
ファンタジー
2590年代後半から2600年代初頭にかけてサイクス(超常現象を引き起こすエネルギー)を持つ超能力者が出現した。 生まれつき膨大な量のサイクスを持つ主人公・月島瑞希を中心として心理戦・策略を張り巡らせつつ繰り広げられる超能力バトル/推理小説
ホシ降る街角
海善紙葉
青春
広域指名手配犯(ホシ)が夜空から降ってくる?!
┅┅なんの前触れもなく、
〈ホシ〉
がその辺鄙な里村の記念塔公園に降ってくるようになったのは三か月前の夜のことだ。
なぜ、真夜中にホシが降ってくるのか、次に降ってくるホシは誰なのか、規則性はあるのかないのか、それは誰にも分からない。
総務省と警察庁、防衛省の合同科学検証チームが調査中だが、いまだ結論は出ていない。けれど真っ先に飛び上がって歓喜の声をあげたのは村長だった。
ホシ降る里村としての知名度がアップ、観光名所化をめざして、地元出身の元コピーライター、佐木邑子を村役場の臨時職人として雇用、広報室を新設し特命室長に抜擢する。
佐木邑子は独身で、村営住宅に一人暮らし。
そして、里村に迷い込んだ一人の少年の世話を頼まれたのだが……?
はたして、少年は身内の逃亡犯が降ってくるのを待っているのか、それとも……?
アラフォー・シングル女史と身元不明の少年の交流が意外な結末へ……!
✱現在、アルファポリスだけの公開です(´∀`
悲願花
海善紙葉
歴史・時代
島流しのおとうが帰ってくる…あたいに託した黒花の種。その「特別な一日」のために咲かせたいのに…どうしても咲いてくれないの(´;ω;`)ウッ…
新種のナデシコに執念を燃やす育種職人の娘と、藩主より娘の護衛を命じられた少年との交流と、育種の秘密を狙う他藩の隠密との攻防!
若がえる“老夫” と 老いてゆく“少女”は
すみれ
恋愛
ある日、老夫の家の前に赤ん坊が捨てられていた。赤ん坊は 白い肌で栗色の髪を持ち、葵色の目と小さな紅い唇で咲っている。
訳あって赤ん坊を託せる人も無く、自ら育てることにした。
赤ん坊は可憐な少女へと成長するにつれ、老夫に淡い恋心を抱くようになる。未来ある少女の気持ちを受け入れることはできない...というのに、老夫も少女を愛してしまった。
愛しあっているが故に、一緒になれない二人。
そんな矢先、老夫の身に信じがたいことが起こる。
老夫は、若がえり始めていたのだ。
ーーー
ゆっくりと更新する予定です。
物語の展開速度はのんびりしておりますが、お付き合い頂けると嬉しいです。
爵位の生前贈与は比較的できやすい設定にしていますのでご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる