55 / 111
魔王様はアイドル!?
55話 エマージェンシーコール
しおりを挟む
「さ、ササブリ――!」有り得ない事態に、慌てて彼女の元へと駆け寄ろうとした。
「ちょい、待ちな……」俺の服の袖を引っ張ったのはワカモトさんだ。
「一体、どうゆう―――」言葉を出し切る前に、彼女はメイデンちゃん、こと魔製石斧の砕けた破片を歪んだ空間へと弾き飛ばした。
占い師の魔法によって飛ばされた破片がササブリ同様に空間の奥へと沈んでゆく。
「これで、分かったかい? 近づくとアンタもああなるよ」
「だからといって、見捨てるわけには……」
「こういう時こそ、冷静さが求められるんさ。アンタまで、相手の術中にはまったら、誰がササちゃんを助けるんだい?」
その通りだ……。
ここで感情のまま、行動すれば被害が大きくなるだけだ。
落着け、俺……まずは、深呼吸だ。
そうすれば、翼だって授かるかもしれない!
んな、わけあるか!? ダメだ、情報が不足している中であれこれ探っても、時間の無駄だ。
なら、アプーチの仕方を変えるまでのことだ。
「マイトちゃん。おやめ!!」
ワカモトさんの忠告を聞かず、俺は前に飛び出した。
鞘から、宝剣を引き抜き一直線に庭園を中央まで駆ける。
そして、十字の道の中心にいるホロモン、目掛けて刃を突きつけた。
押し潰されそうな衝撃が全身を貫いた。
意識が飛びそうになる寸でのところで、持ちこたえる。
身体が鉛のように重い……そうか、俺は蹴られたのか。
片膝を上げたまま立っている爺さん。
その様子を見て自分はあの膝を喰らったのだと知った。
知性のない本体とは、比べ物にならないほどの強敵。
どれほど、優れた武器を持っていても使い手が弱ければこんなモノだ。
一太刀も浴びせられず、叩きのめされてしまう。
正攻法じゃ無理だ……なにか手を打たねば……。
強力な一撃を御見舞いされ、今になって頭が冷えてきた。
ワカモトさんが危惧していたのは、こういう事だ……しゃにむにやっても状況は進展しない。
「しっかりしな。今、回復してやるからね……」
今回も物の見事にワカモトさんの治癒魔法にお世話になってしまった。
我ながら情けないと思いつつも治療を受けていつと、シャルが傍へとやってきた。
見るからにご機嫌斜めといった感じで俺を冷たく直視してくる。
「ロビー君、相手は先ほど戦った魔王ですよね? リンさん同様、あの魔王とお知り合いのようですけど、どういう事か? きちんと経緯を説明してもらえませんか? でなければ、私も先生もどう立ち回れば良いのか分かりません」
彼女がそう言うのも頷ける。
いきなり、ここに移動させられた上、魔王同士で勝手にやり始めたせいで、ホロモン爺さんについて詳しく話すタイミングを逃していた。
これは先走って動いた俺にも責任はある。ちゃんとそこに触れるべきだったのだ。
「ただの顔見知りよ、シャル。お爺ちゃ……ううん。あの魔王は、ササブリを人質に取って、本体の封印を解くようにアタイら脅してきた悪い魔王なんだよ」
俺に代わって、リンが二人に説明した。
元々、ホロモン爺さんとは深い関わりがあるわけじゃない。
二人とも、話を聞くなり、すんなりと状況を飲み込んでくれた。
彼女たちが「ササブリの救出に手を貸す」と言ってくれたのは、とても有難い。
嬉しさのあまり、何度も聞き返していたら、リンに耳を引っ張られた。
皆のバックアップは本当に心強い……だが、ササブリは魔王だ。そう簡単にはくたばらない。
それに、まだ俺たちの近くにいる。
彼女が、スキルブックから離れすぎれば強制力が働き自動で本の方へと引き戻される仕様だ。
万が一、不足な事態が発生すれば、自動でスキルが解除されるようにもなっている。
ただ、それができていればすぐにでもササブリを戻すことができた。
爺さんに斬りかかる以前から何度も試していたが、スキルを強制解除することができない状態に陥っている。
多分、爺が持つスキルブックの影響だ。
物が出たり、移動したりするのは、爺さんの能力内での事。
こちらから、干渉することはできないという事だ。
よって結論は、ササブリが自力で脱出するしかないということだ。
「スキルブック! フォトグラファー!」
『5000ポイントを使用して、衣装を購入します。宜しいですか?』
購入ボタンを迷わず押した。
彼女を助けられるのは、このオプションだけだ。
一度に大量のポイント消費、これにより何が起きるのか? 想像もつかない……。
それでも、ササブリを助けると決めたんだ。後悔はしない!
『2000ポイント購入特典 スキャニングシステム解放……。
3000ポイント購入特典 イベント 果実の王からの挑戦状、解放……。
5000ポイント購入特典 リストルームが解放されました……』
「ちょい、待ちな……」俺の服の袖を引っ張ったのはワカモトさんだ。
「一体、どうゆう―――」言葉を出し切る前に、彼女はメイデンちゃん、こと魔製石斧の砕けた破片を歪んだ空間へと弾き飛ばした。
占い師の魔法によって飛ばされた破片がササブリ同様に空間の奥へと沈んでゆく。
「これで、分かったかい? 近づくとアンタもああなるよ」
「だからといって、見捨てるわけには……」
「こういう時こそ、冷静さが求められるんさ。アンタまで、相手の術中にはまったら、誰がササちゃんを助けるんだい?」
その通りだ……。
ここで感情のまま、行動すれば被害が大きくなるだけだ。
落着け、俺……まずは、深呼吸だ。
そうすれば、翼だって授かるかもしれない!
んな、わけあるか!? ダメだ、情報が不足している中であれこれ探っても、時間の無駄だ。
なら、アプーチの仕方を変えるまでのことだ。
「マイトちゃん。おやめ!!」
ワカモトさんの忠告を聞かず、俺は前に飛び出した。
鞘から、宝剣を引き抜き一直線に庭園を中央まで駆ける。
そして、十字の道の中心にいるホロモン、目掛けて刃を突きつけた。
押し潰されそうな衝撃が全身を貫いた。
意識が飛びそうになる寸でのところで、持ちこたえる。
身体が鉛のように重い……そうか、俺は蹴られたのか。
片膝を上げたまま立っている爺さん。
その様子を見て自分はあの膝を喰らったのだと知った。
知性のない本体とは、比べ物にならないほどの強敵。
どれほど、優れた武器を持っていても使い手が弱ければこんなモノだ。
一太刀も浴びせられず、叩きのめされてしまう。
正攻法じゃ無理だ……なにか手を打たねば……。
強力な一撃を御見舞いされ、今になって頭が冷えてきた。
ワカモトさんが危惧していたのは、こういう事だ……しゃにむにやっても状況は進展しない。
「しっかりしな。今、回復してやるからね……」
今回も物の見事にワカモトさんの治癒魔法にお世話になってしまった。
我ながら情けないと思いつつも治療を受けていつと、シャルが傍へとやってきた。
見るからにご機嫌斜めといった感じで俺を冷たく直視してくる。
「ロビー君、相手は先ほど戦った魔王ですよね? リンさん同様、あの魔王とお知り合いのようですけど、どういう事か? きちんと経緯を説明してもらえませんか? でなければ、私も先生もどう立ち回れば良いのか分かりません」
彼女がそう言うのも頷ける。
いきなり、ここに移動させられた上、魔王同士で勝手にやり始めたせいで、ホロモン爺さんについて詳しく話すタイミングを逃していた。
これは先走って動いた俺にも責任はある。ちゃんとそこに触れるべきだったのだ。
「ただの顔見知りよ、シャル。お爺ちゃ……ううん。あの魔王は、ササブリを人質に取って、本体の封印を解くようにアタイら脅してきた悪い魔王なんだよ」
俺に代わって、リンが二人に説明した。
元々、ホロモン爺さんとは深い関わりがあるわけじゃない。
二人とも、話を聞くなり、すんなりと状況を飲み込んでくれた。
彼女たちが「ササブリの救出に手を貸す」と言ってくれたのは、とても有難い。
嬉しさのあまり、何度も聞き返していたら、リンに耳を引っ張られた。
皆のバックアップは本当に心強い……だが、ササブリは魔王だ。そう簡単にはくたばらない。
それに、まだ俺たちの近くにいる。
彼女が、スキルブックから離れすぎれば強制力が働き自動で本の方へと引き戻される仕様だ。
万が一、不足な事態が発生すれば、自動でスキルが解除されるようにもなっている。
ただ、それができていればすぐにでもササブリを戻すことができた。
爺さんに斬りかかる以前から何度も試していたが、スキルを強制解除することができない状態に陥っている。
多分、爺が持つスキルブックの影響だ。
物が出たり、移動したりするのは、爺さんの能力内での事。
こちらから、干渉することはできないという事だ。
よって結論は、ササブリが自力で脱出するしかないということだ。
「スキルブック! フォトグラファー!」
『5000ポイントを使用して、衣装を購入します。宜しいですか?』
購入ボタンを迷わず押した。
彼女を助けられるのは、このオプションだけだ。
一度に大量のポイント消費、これにより何が起きるのか? 想像もつかない……。
それでも、ササブリを助けると決めたんだ。後悔はしない!
『2000ポイント購入特典 スキャニングシステム解放……。
3000ポイント購入特典 イベント 果実の王からの挑戦状、解放……。
5000ポイント購入特典 リストルームが解放されました……』
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】捨てられ令嬢は王子のお気に入り
怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」
そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは、強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って…
リリーアネの正体とは
過去に何があったのか
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる