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恋するコペルニクス
34話 スメルサムライ
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「小賢しいわい!」発射された弾丸は魔王の拳により弾かれた。
襲撃に失敗した人影は、そそくさと上へと移動している。
顔は、よく分からなかった。けれど、男なのはハッキリと見えた。
「ササブリ、追ってくれ! 俺はポメオを手当てしてから向かう」
「駄目じゃ、我は主のスキルブックから離れすぎると強制的に引き戻されてしまう」
「カァ――、そう上手くはいかないわけか! すまない、ポメオ。応急処置はするが、しばらくここで待ってくれ」
素早く、スキルブックを取り出し、水とファーストエイドKITを購入した。
これで残りのポイントは590。
ヤブ――の治療成功率が心もとないが、不安がっていても物事は解決しない。
今は、出来るだけのことをするだけだ。
「いいぞ! 手当ては済んだ。けど、今から走って追いつけるのか?」
「追いつくのじゃない。追い越すのじゃ―――我の手を取れ!」
「えっ……? 本当にいいの?」
「マジ、キショイ! モジモジしおってからに……そんなに恥ずかしいんなら、こうしてやるわ」
ササブリが俺の左腕に抱きついた。
ヤバイ! 横乳が腕に当たっている……これが、当てているのよ効果か。
宇宙の神秘が俺にも伝わってく―――――
余計な事は考えない方がいい。
突如、思考がブラックアウトした。
身体に奇妙な浮遊感を得た直後、顔面を殴りつけるような風圧が俺を襲ってきた。
「あばばあばあああああぱぁ―――」
まともに話せるわけがない。呼吸すらままならないのだから。
俺は打ち上げられたロケットのごとく、一直線に上昇していた、
こんな、クソ長い螺旋階段をこしらえた職人さんには悪いが、今回はパスで。
階段よりエレベーターの方が早いし疲れない。
まぁ、箱なしなんですけどね。
卵だって黄身を守るために殻でおおっているのに。
黄身自身が、殻を無視して飛び出せば火傷じゃ済まされないぜ。
「まるで、陸に打ち上げられた魚のようじゃな……口をパクパクさせおって」
「だあああががああごごごごぎ――!!」
「それ以上、喋ろうとすると頭が逝かれるぞ。そら、最上階に到着じゃあ~!」
魔王に首根っこをつかまれながら、階段の終点である部屋に雪崩込んだ。
彼女がブレーキをかけてくれなければ、俺の身体は壁際でジャムのように飛び散っていたはずだ。
「襲ってきた奴はまだ、ここまで来てないようじゃ―――汚っ!! 主、顔がヤバイことになっておるぞ」
時間を短縮しすぎた代償が、俺に降りかかってきた。
涙と鼻水とよだれがドバッとファウンテンする様は、自分でも吃驚する。
鏡がないので確認できないが、ササブリの反応からして見るに耐えないようだ。
慌てて、俺は懐から手ぬぐいを取り出した。
こんな時のために、つねに温めていたのだ。
手ぬぐいで顔をおおうと、鼻を突き刺すような刺激がガツンと来た。
「くさぇえええ!! おえぇぇえっ」その場で悶絶しながら、手ぬぐいを投げ捨てた。
「誰? 誰かいるの?」
広間の奥にある屏風の向こうからガタガタと床を鳴らす音が聞こえた。
聞き覚えのある声に、俺は急ぎ広間の奥へと向かった。
そこで見たのは、全身を縄で縛り上げられ目隠しをさせられたリンの姿だった。
目立った外傷はなさそうだが、シャルがいないことが俺の気を焦らせる。
とりあえず、リンの目隠しを外した。
「ま、マイト? まさかアンタ、一人でここまで来たの?」
「途中までワカモトさんとグゼンの三人で来たんだ。リンこそ、怪我はないのか? オメガの奴に変なことを要求されなかったか?」
「大丈夫……脇のニオイを嗅がれたぐらいだから……」
「なん……だと。そういえば、シャルの奴はどこにいる? ここにはいないようだが……」
「分からない。けど、本殿の方に連れてゆくってオメガの手下が話していたわ」
俺は密かに喉をならした。
話を聞けば、敵は予想以上に頭数を揃えてきている。
槍使いの方でもそうだったが、ハンターは決して単独で狩りをしない。
獲物を逃がさないだけではなく、仲間を守るためでもる。
奴らの厄介なところは人海戦術ができるというところだ。
大人数を投入されたら、それこそ消耗戦となる。
手下が時間稼ぎしているうちにオメガ自身が戦線離脱することもあり得なくはない。
それ以上に問題なのが……オメガが、ニオイフェチだという新事実だ。
ニオイマイスターの俺を差し置いて、女子の脇のニオイを嗅ぐという荒業をやり遂げる姿勢は本物だ。
女子に嫌われようが構わず、自分の信念を貫き通す。
これぞ、スメルサムライ。
もはや、狂気の域を達しているニオイへの執着心は異常でしかない。
成仏できない前世代の亡霊を眠りにつかせるのがニオイマイスターとして使命なんだと思う。
「主よ! 奴が来たぞ」
背後でササブリが叫んだ。
銃を持ち歩く危険な男との対峙。想像するだけで緊張感が高まってくる。
襲撃に失敗した人影は、そそくさと上へと移動している。
顔は、よく分からなかった。けれど、男なのはハッキリと見えた。
「ササブリ、追ってくれ! 俺はポメオを手当てしてから向かう」
「駄目じゃ、我は主のスキルブックから離れすぎると強制的に引き戻されてしまう」
「カァ――、そう上手くはいかないわけか! すまない、ポメオ。応急処置はするが、しばらくここで待ってくれ」
素早く、スキルブックを取り出し、水とファーストエイドKITを購入した。
これで残りのポイントは590。
ヤブ――の治療成功率が心もとないが、不安がっていても物事は解決しない。
今は、出来るだけのことをするだけだ。
「いいぞ! 手当ては済んだ。けど、今から走って追いつけるのか?」
「追いつくのじゃない。追い越すのじゃ―――我の手を取れ!」
「えっ……? 本当にいいの?」
「マジ、キショイ! モジモジしおってからに……そんなに恥ずかしいんなら、こうしてやるわ」
ササブリが俺の左腕に抱きついた。
ヤバイ! 横乳が腕に当たっている……これが、当てているのよ効果か。
宇宙の神秘が俺にも伝わってく―――――
余計な事は考えない方がいい。
突如、思考がブラックアウトした。
身体に奇妙な浮遊感を得た直後、顔面を殴りつけるような風圧が俺を襲ってきた。
「あばばあばあああああぱぁ―――」
まともに話せるわけがない。呼吸すらままならないのだから。
俺は打ち上げられたロケットのごとく、一直線に上昇していた、
こんな、クソ長い螺旋階段をこしらえた職人さんには悪いが、今回はパスで。
階段よりエレベーターの方が早いし疲れない。
まぁ、箱なしなんですけどね。
卵だって黄身を守るために殻でおおっているのに。
黄身自身が、殻を無視して飛び出せば火傷じゃ済まされないぜ。
「まるで、陸に打ち上げられた魚のようじゃな……口をパクパクさせおって」
「だあああががああごごごごぎ――!!」
「それ以上、喋ろうとすると頭が逝かれるぞ。そら、最上階に到着じゃあ~!」
魔王に首根っこをつかまれながら、階段の終点である部屋に雪崩込んだ。
彼女がブレーキをかけてくれなければ、俺の身体は壁際でジャムのように飛び散っていたはずだ。
「襲ってきた奴はまだ、ここまで来てないようじゃ―――汚っ!! 主、顔がヤバイことになっておるぞ」
時間を短縮しすぎた代償が、俺に降りかかってきた。
涙と鼻水とよだれがドバッとファウンテンする様は、自分でも吃驚する。
鏡がないので確認できないが、ササブリの反応からして見るに耐えないようだ。
慌てて、俺は懐から手ぬぐいを取り出した。
こんな時のために、つねに温めていたのだ。
手ぬぐいで顔をおおうと、鼻を突き刺すような刺激がガツンと来た。
「くさぇえええ!! おえぇぇえっ」その場で悶絶しながら、手ぬぐいを投げ捨てた。
「誰? 誰かいるの?」
広間の奥にある屏風の向こうからガタガタと床を鳴らす音が聞こえた。
聞き覚えのある声に、俺は急ぎ広間の奥へと向かった。
そこで見たのは、全身を縄で縛り上げられ目隠しをさせられたリンの姿だった。
目立った外傷はなさそうだが、シャルがいないことが俺の気を焦らせる。
とりあえず、リンの目隠しを外した。
「ま、マイト? まさかアンタ、一人でここまで来たの?」
「途中までワカモトさんとグゼンの三人で来たんだ。リンこそ、怪我はないのか? オメガの奴に変なことを要求されなかったか?」
「大丈夫……脇のニオイを嗅がれたぐらいだから……」
「なん……だと。そういえば、シャルの奴はどこにいる? ここにはいないようだが……」
「分からない。けど、本殿の方に連れてゆくってオメガの手下が話していたわ」
俺は密かに喉をならした。
話を聞けば、敵は予想以上に頭数を揃えてきている。
槍使いの方でもそうだったが、ハンターは決して単独で狩りをしない。
獲物を逃がさないだけではなく、仲間を守るためでもる。
奴らの厄介なところは人海戦術ができるというところだ。
大人数を投入されたら、それこそ消耗戦となる。
手下が時間稼ぎしているうちにオメガ自身が戦線離脱することもあり得なくはない。
それ以上に問題なのが……オメガが、ニオイフェチだという新事実だ。
ニオイマイスターの俺を差し置いて、女子の脇のニオイを嗅ぐという荒業をやり遂げる姿勢は本物だ。
女子に嫌われようが構わず、自分の信念を貫き通す。
これぞ、スメルサムライ。
もはや、狂気の域を達しているニオイへの執着心は異常でしかない。
成仏できない前世代の亡霊を眠りにつかせるのがニオイマイスターとして使命なんだと思う。
「主よ! 奴が来たぞ」
背後でササブリが叫んだ。
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