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心絵マシテ

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泡沫ノ邂逅

議決

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星の女性が淡々と話す過去の歴史。
おかげで、ニーぜル通貨以外の通貨が、いかに金銭として認められにくいのかという実体を知れた。
けれど、アルバとラズ両名の話し合いに折り合いはつかず、最早いがみ合うだけになってしまっている。

「そこまで揉めるなら、もうの交換で良くないですか? あっ!」

一向に収まらない、やり取りに気疲れしてきた私はうっかり失言をらしてしまった。
それで、解決するならとっくに話は進んでいるはずだと、また指摘されてしまう。
不味いと身構える私の隣からパチパチとアルバの拍手が上がった……何故に?

「悪くない、素晴らしいよルルーチェ。考えてみれば、無意識のうちにを選択肢から除外していた。よくよく考えれば、そういう手もありだな」

「解かりかねぬな。貴殿は、あれほど物々交換を嫌がっていたのにどうして心変わりする?」

満足そうに頷くアルバにラズの追求が飛ぶ。

「そうではない。俺が言いたいのは、何も支払いを金銭で済ますことはないという事だ。あるだろう? ニーゼルに代わる信頼と価値を持ち、如何なる国も必要としているものが!」

「何の事だ? 本当にあるというのならば、勿体ぶらずさっさと申してみせよ!」

「エネルギーだよ!! レイラインから流れるエネルギーを抽出し保存する魔法技術がすでに確立されているのは知っているかい!? それは極小サイズのチップでニーゼル通貨よりも一回りも小さいが一枚でも大容量エネルギーを確保できる。どうだい? これなら、偽造できないし感覚的に物々交換と相違はないはず、連合の連中も納得させられるはずだ。悪くない条件だろっ?」

「戯れもほどほどにしておけ、そのエネルギー自体が希少なモノだろう! 貴殿は自国を滅ぼすおつもりか!? それにレイラインのエネルギーを操作できるという話も、にわかに信じ難い」

「供給面での問題は別個で対処しているから心配いらない。よ――く、考えてみなよ。ドルフィームはレイラインから外れたせた土地だ、君たちも散々エネルギー不足で悩まされていたはずだ」

「た、確かに……魅力的な案には違いない」

「それに、このチップは俺達にとっても価値がある品だ。だから、君たちが物を売り得たチップはエネルギーとして使うのも有りだし、他の交易品を購入する際の通貨としても機能する!」

「都合が良過ぎる……だからこそ、恐れている。何か、裏があるのではないかと」

「ふぅーん。意外と臆病なんだね、ドルフィーム随一の剣士も。いいさ、すぐに決断する必要はないよ。一旦、戻ってトゲツと相談するがいい、それでいいよね? シュトゥ」

「結論が出たようだな。それで進めるがラズ、返答期日は追って通達するとトゲツに通達してくれ――――他に何か報告がある者はいないか? なければお開きにしよう、時間が押してる。ルルーチェ、今回は急遽参加してもらい感謝する。これにて、十星者の定例会を終了とする、一同解散!!」

終わった――わけのわからない会議が終わった。
一時はどうなるかと肝を冷やした。
ギリギリ、アーカイブスの更新が入ってくれなければ、これまでの経緯すらも掴めず何も返答できなかっただろう。
今はこうして椅子にもたれかかり天井を眺める余裕すらある。
私もいい加減、ここから脱出してジップ村に戻らないと……。

「少し、宜しいか?」

席を立とうとする私を呼びとめてきたのはラズさんだった。
他のメンバーはすでに帰ったのか? 気づけば、私たち二人きりにされていた。

「はい、大丈夫ですけど?」

「まずは、すまぬ。おぬしを不要なイザコザに巻き込んでしまった……おぬしが、それがしと同様に巫女だと神託を授かっていたのに、この体たらく重ねてお詫び申し上げる」

「いえ、滅相もございませんっ! アーカイブスに、定例会の過去データを送ってくれたの、ラズさんなんですね。おかげで助かりました。なんか嬉しいです」

「嬉しい? 驚いたり怪しんだりしないのか?」

「えへへ、やっぱ嬉しいですよ! 同じ力を持つ人と出会えるのは。何か、秘密を共有できる仲間ってカンジで。そもそも、嘘をつく為に自分の能力を明かす人なんていませんよ」

「そうか、おぬしも同じなのだな……ルルーチェ、詫びとはいかぬかもしれんが、これを受け取ってくれ」

ラズさんは懐に忍ばせておいた包みを取り出し広げて見せた。
中には銀色の鈴と蝶々をあしらった髪留めが入っていた。

「魔除けの鈴はそれがし、髪留めはシュトゥ殿から預かったものだ。シュトゥ殿の話では、この蝶が、おぬしを外へと導いてくれる鍵だそうだ。魔除けは……できれば肌身離さず持っていて欲しい。今後、必ずやルルーチェの力になる」

「ありがと、ラズさん。じゃあ、お返しにこのリボンを。そのかんざしも素敵だけど、これもきっとあなたに似合うと思うよ」

「……かたじけない。去る前に一つだけ忠告しておく。これ以上はそれがしや、ここの者たちに関わってはならぬ。すでに何人かは、おぬしに目をつけた者がいるようだが、寄りつく虫は、このラズ・カヌレが払うゆえ安心めされよ」
「では機会があらば、いずれまた」

「ラズさんも、お元気で」

遠ざかるほど、透けていく彼女を背中。
ラズさんと話せたおかげで、欠けていた自身の記憶がわずかに呼び起された。
あの時と同様、私はしばらくの間、手を振り続け彼女を見送った。
いずれ友と呼べる日が来るのを願って。
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