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十話 アニキ、徘徊する
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「なぁ、レッドさんよ。何でコイツがライオンで俺様がシャチなんだよ!」
地球防衛機関、その特務性ゆえに正式名称は誰も知らない。
まぁ、ヒーロー施設とか、イキリの檻とか言えば大体ドウナッテンジャーの本部がある場所だと地元民にも伝わる。
懐かしのミーティングルーム、そこで大声をまくし立てていたのはドウナンブルーの山本。
本名がありきたりなのを気にしてトウヤ・F・アブソリュートと名乗っているが、ボクにはドラえもんの作者みたいにしか思えない。
どうやら、ボクは過去の夢を見ているらしい。
この一件はよく覚えている。
オニキス指令から初めて汎用型決戦ロボ、ソレデインジャーの使用許可を貰った時だ。
各メンバー、担当マシーンが何か指令の独断で決められていた。
青いからという理由で、シャチ型マシンを渡されたブルーは大人気なく不服を漏らしていた。
これには、レッドも苦笑いをしながらなだめていた。
が……ブルーのくせにちっとも冷静ではないトウヤは、ボクに怒りの矛を向けてきた。
イエロー=ライオン。この法則は誰に打ち破れない。
日頃から役立たずと罵られ、周囲から厳しい目を向けられていたボクにとっては、イメージアップにつながる最高の相棒だった。
ブルーがボクに嫉妬していたのは、傍からみても分かりやすかった。
譲れと言われても指令の命令は絶対だ。それを理解しているブルーは、直接ぼくに何かを言うことはない。
ただ、正義のヒーローとは思えないほど鬼ような形相でコチラを睨んできた。
「オイラなんか、サイだよ。グリーンとかの関係ない灰色だよ!」
「私なんてサーモンよ、いくらピンクっぽい赤身だからって適当すぎるのよ。サーモンでどう戦えばいいのよ! ドウナッテンジャーって言いたいのはコッチの方よ……」
皆がブルーをフォローしようとしていた。
グリーンはともかく、ピンクは鮭どころか、ニジマス……サーモントラウトの方だ。
文句ばかり言っているが、ロボットに変形した時、この二人はわりかし安全な脚部担当になる。
レッドはというと、バトルコングというオラウータン型のマシンだが、強そうだからそれでいいらしい。
別にライオン特別な思い入れはない。
ボク的には、シャチでも構わないけれど、胴体部を担当するガゥライザーは一番、危険な目にさらされる可能性が高い。下手をすれば二階級特進してしまう。
リーダーであるレッドは、皆を良くまとめようとはしていてくれた。
セコイヤの大幹部を討ち果たし世界が平和になると、彼はいきなりボクたちの下を去った。
あれから五年……彼らは元気でやっているのだろうか?
ガゥライザーのことも気になる……激戦により正常に機能しなくなったと聞いたけど、最後の最後に一目、見ておけば良かったと後悔している。
『――――駅、お降り方は右手のドアに注意してください』
プッシュウゥゥゥと耳をつく音によってボクはふと目覚めた。
麺次郎にいたはずなのに、何故か電車に乗っている。
これはマズイと開いたドアに飛び込むようにして下車した。
そこは改札すらない無人の駅で、下りたのはボクだけだった。
とんでもないド田舎に来てしまったようだけど、ちゃんと店の制服を着ているんだ。
麺次郎からはそう遠くない場所のはずだ……。
駅から出て周囲を散策しようと思ったけれど……茶畑ばかりで何もない。
さっそく、途方に暮れ何でこんな事になったのか? 思い出そうとするが、まったく記憶にはない。
「取り敢えず、民家を探して麺次郎に連絡しないと……お爺さんとお婆さんが心配しているかもしれないし」
真っ暗な夜道を一人で進む。
変身ブレスレットのライト機能で辺りを照らすが人気がない上、田畑や緑が多い。
こんな時間に女の子が一人で外出していたら、間違いなく怪しまれる。
それどころか、犯罪者や幽霊に出くわす危険だってあり得る。
イヤな予感に苛まれると不安ばかりが先行してゆく。
無言のまま、早歩きで明るい所を探そうとするボクは、やはりビビりなのか?
自問自答しても、肌が粟立つのだから仕方ない。
『――――そのまま、進むとまた捕まるぞい』
当然、近くから声をかけられ息が詰まりかけた。
恐る恐る、周囲を見渡すが……誰かが傍にいるような気配はしない。
イケない、あまりに怖がるばかり、幻聴を聞いてしまったようだ。
気を確かにしないと、泣き出してしまいそう。
『聞こえておるのだろう! 返事せよ、新庄ヒサカズ』
本名を呼ばれて、ボクはようやく冷静さを取り戻した。
すっかり、女の子の部分に気持ちが飲みこまれていた。
音声は腹部から聞こえている……それが何んなのか確認するためボクはスカートをたくし上げた。
『ようやっと、吾輩を認識できるようになったな。吾輩は……ん?』
「ガッ、ッガガガアアア―――タ―――ベルトが喋っている! やっぱ、中の人がいたんだ!」
『そんなに興奮して失禁するなよ。一時は、この業界に身を置いていたのだろう? ベルトが喋るのもよくある設定だ』
ヤバイ、設定って言っている所が本物の業界関係っぽい。
地球防衛機関、その特務性ゆえに正式名称は誰も知らない。
まぁ、ヒーロー施設とか、イキリの檻とか言えば大体ドウナッテンジャーの本部がある場所だと地元民にも伝わる。
懐かしのミーティングルーム、そこで大声をまくし立てていたのはドウナンブルーの山本。
本名がありきたりなのを気にしてトウヤ・F・アブソリュートと名乗っているが、ボクにはドラえもんの作者みたいにしか思えない。
どうやら、ボクは過去の夢を見ているらしい。
この一件はよく覚えている。
オニキス指令から初めて汎用型決戦ロボ、ソレデインジャーの使用許可を貰った時だ。
各メンバー、担当マシーンが何か指令の独断で決められていた。
青いからという理由で、シャチ型マシンを渡されたブルーは大人気なく不服を漏らしていた。
これには、レッドも苦笑いをしながらなだめていた。
が……ブルーのくせにちっとも冷静ではないトウヤは、ボクに怒りの矛を向けてきた。
イエロー=ライオン。この法則は誰に打ち破れない。
日頃から役立たずと罵られ、周囲から厳しい目を向けられていたボクにとっては、イメージアップにつながる最高の相棒だった。
ブルーがボクに嫉妬していたのは、傍からみても分かりやすかった。
譲れと言われても指令の命令は絶対だ。それを理解しているブルーは、直接ぼくに何かを言うことはない。
ただ、正義のヒーローとは思えないほど鬼ような形相でコチラを睨んできた。
「オイラなんか、サイだよ。グリーンとかの関係ない灰色だよ!」
「私なんてサーモンよ、いくらピンクっぽい赤身だからって適当すぎるのよ。サーモンでどう戦えばいいのよ! ドウナッテンジャーって言いたいのはコッチの方よ……」
皆がブルーをフォローしようとしていた。
グリーンはともかく、ピンクは鮭どころか、ニジマス……サーモントラウトの方だ。
文句ばかり言っているが、ロボットに変形した時、この二人はわりかし安全な脚部担当になる。
レッドはというと、バトルコングというオラウータン型のマシンだが、強そうだからそれでいいらしい。
別にライオン特別な思い入れはない。
ボク的には、シャチでも構わないけれど、胴体部を担当するガゥライザーは一番、危険な目にさらされる可能性が高い。下手をすれば二階級特進してしまう。
リーダーであるレッドは、皆を良くまとめようとはしていてくれた。
セコイヤの大幹部を討ち果たし世界が平和になると、彼はいきなりボクたちの下を去った。
あれから五年……彼らは元気でやっているのだろうか?
ガゥライザーのことも気になる……激戦により正常に機能しなくなったと聞いたけど、最後の最後に一目、見ておけば良かったと後悔している。
『――――駅、お降り方は右手のドアに注意してください』
プッシュウゥゥゥと耳をつく音によってボクはふと目覚めた。
麺次郎にいたはずなのに、何故か電車に乗っている。
これはマズイと開いたドアに飛び込むようにして下車した。
そこは改札すらない無人の駅で、下りたのはボクだけだった。
とんでもないド田舎に来てしまったようだけど、ちゃんと店の制服を着ているんだ。
麺次郎からはそう遠くない場所のはずだ……。
駅から出て周囲を散策しようと思ったけれど……茶畑ばかりで何もない。
さっそく、途方に暮れ何でこんな事になったのか? 思い出そうとするが、まったく記憶にはない。
「取り敢えず、民家を探して麺次郎に連絡しないと……お爺さんとお婆さんが心配しているかもしれないし」
真っ暗な夜道を一人で進む。
変身ブレスレットのライト機能で辺りを照らすが人気がない上、田畑や緑が多い。
こんな時間に女の子が一人で外出していたら、間違いなく怪しまれる。
それどころか、犯罪者や幽霊に出くわす危険だってあり得る。
イヤな予感に苛まれると不安ばかりが先行してゆく。
無言のまま、早歩きで明るい所を探そうとするボクは、やはりビビりなのか?
自問自答しても、肌が粟立つのだから仕方ない。
『――――そのまま、進むとまた捕まるぞい』
当然、近くから声をかけられ息が詰まりかけた。
恐る恐る、周囲を見渡すが……誰かが傍にいるような気配はしない。
イケない、あまりに怖がるばかり、幻聴を聞いてしまったようだ。
気を確かにしないと、泣き出してしまいそう。
『聞こえておるのだろう! 返事せよ、新庄ヒサカズ』
本名を呼ばれて、ボクはようやく冷静さを取り戻した。
すっかり、女の子の部分に気持ちが飲みこまれていた。
音声は腹部から聞こえている……それが何んなのか確認するためボクはスカートをたくし上げた。
『ようやっと、吾輩を認識できるようになったな。吾輩は……ん?』
「ガッ、ッガガガアアア―――タ―――ベルトが喋っている! やっぱ、中の人がいたんだ!」
『そんなに興奮して失禁するなよ。一時は、この業界に身を置いていたのだろう? ベルトが喋るのもよくある設定だ』
ヤバイ、設定って言っている所が本物の業界関係っぽい。
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