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二章、後編 聖地の落とし物

49話 真実の代償

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 考えているだけでは話は進まない。
 百聞は一見にしかず、私は思い切って、お婆様に精霊のことについて尋ねてみることにした。

「お婆様、加護の精霊について知っていることを教えていただけますか?」

「シルヴィよ。そうね、ここにいる精霊様は昔から、この遺跡に住み着いているわ。私が子供だった頃は、遺跡の森のあちらこちで見かけることができたのだけど、最近ではめっきり数が減り見かけなくなったわね~」

 記憶を辿る、彼女の眼差しは、とても優しく遠くを見つめていた。
 ノスタルジックな感傷にふけっているのだろうか? このヴィンセント遺跡に関する思い出話をいくつか語ってくれた。
 シルヴィさんにしか見えない光景が、そこには広がり、話を聞いているうちに私も、そこにいるような気分になってきた。
 過去、この遺跡は村の神聖な場所として、メボの人々に大事にされ護られ続けていた。
 しかし、時代の移り変わりともに人々の興味は遺跡から離れ、精霊たちとの共存関係は薄れていった。
 その一端が、村の手前にあった広大な麦畑である。
 季節によっては観光客の目を引くこともできるかもしれないけれど、もとは農作には向いていない土地。
 野を焼き払い、森林を伐採して緑をへらせば、精霊だってその場所に居られなくなる。

「どうして、加護の精霊と呼ばれているんですか?」

「私たちケモ耳が獣人害を発症した時、皆してこの遺跡にこもることに決めたの。村から離れているし、ここでなら他の人たちにも危害が及ばないと踏んでね。私を含め、ここに越してきた途端、皆が獣人害の症状が緩和されたと言っていたわ」

「それで、精霊様の力だと皆さんは考えたわけですか」

「そうね。そうとしか、思えないもの……ここには聖域だってあるからねぇ」

 シルヴィさんは精霊のおかげだと信じて疑わなかった。
 彼女だけではない、獣人害という得体の知れない病魔に侵された人々とっては、希望の象徴が必要だったのだ。
 真実を告げるべきかで本当に悩む
 本当は存在すらしない病、彼らが狂人と化したのには別の理由がある。
 病を発症しなくなったのも、皆で森の中へと移動したのが幸いしたからだ。
 
 教会が世間にひた隠し通してきた罪を、白日の下にさらすのには大きなリスクを伴う。
 もし、外部へ漏らしたことがバレれば、私でも……神官の資格剥奪にくわえ、教会本部に幽閉されてしまうだろう。
 それでも、いつかは真実を公表することなる……そう遠くない未来に必ず。
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