42 / 54
二章、後編 聖地の落とし物
41話 隠れ家
しおりを挟む
道なき道を突き進む。ほどなくして、私たちの目の前にお社が現れた。
教会が誕生する以前に、人々によって信仰されていた神様の家。
両脇には縦一列に石灯篭が並んでいる。
「あれ、キィーナは?」
先頭にいた彼女の姿が見えないことに気づくと一瞬、慌てふためいてしまった。
ソフィーが無言で灯篭の一つを指差した。
よく見ると白い尻尾が生えている。
頭隠して尾を隠さずとはこういうことだろう。
本人は隠れながらも、私たち見つけて欲しくてわざと証拠をさらしている。
無邪気な子供のちょっとした遊びだ。
「キィーナ、どこ? 出ておいで~!」
「ディ、ここだよー!!」
たまには、こういう遊びに付き合うのも悪くない。
わざと探すふりをしながら、辺り見回す。
苔むした灯篭のそばで、彼女の尻尾が揺れている。
こんなやり取りを何度か繰り返し「見ぃつけた!」と隠れていた彼女の背に飛びつく。
キャキャ、言いながらキィーナははしゃいでいた。
その手を取り皆でお社の前へと向かうと両手を合わせ軽くお辞儀をした。
いくら神官である私でも、お社についてはさほど詳しくない。
なので正しい礼儀作法も曖昧である。
あまりにスッキリしないので、そこは御愛嬌と笑ってみせた。
ソフィーもちゃんと神様に挨拶しようとする心があれば問題ないと言ってくれたので、気に留めておく程度で済ませた。
「この横道を進んだ所に、私たちの隠れ家があります」
左側の脇道を見ながらソフィーは頷いた。
この先にある道は、木々の枝葉がアーチ状に伸びて、新緑の小トンネルを造っていた。
「そんでもって、反対の道を進めば結界が張られている聖域ね」
右側に視線を移し、森林を眺める。まったくもって静けさだけが辺りを支配している。
本当に遺跡の中で大型魔物が暴れているのか、怪しい。
「どうしますか? さきに聖域の方へ行って調査を開始しますか?」
「いいや、ソフィーのおばあ様に会うのが先決だよ。村に滞在する時間はまだあるから急がなくて問題ないよ」
今度はソフィーを先頭にしてトンネル小路を渡ることになった。
長さ、数十メートルのトンネルをくぐり抜けた先に、あったのは隠れ家どころか集落だった。
教会が誕生する以前に、人々によって信仰されていた神様の家。
両脇には縦一列に石灯篭が並んでいる。
「あれ、キィーナは?」
先頭にいた彼女の姿が見えないことに気づくと一瞬、慌てふためいてしまった。
ソフィーが無言で灯篭の一つを指差した。
よく見ると白い尻尾が生えている。
頭隠して尾を隠さずとはこういうことだろう。
本人は隠れながらも、私たち見つけて欲しくてわざと証拠をさらしている。
無邪気な子供のちょっとした遊びだ。
「キィーナ、どこ? 出ておいで~!」
「ディ、ここだよー!!」
たまには、こういう遊びに付き合うのも悪くない。
わざと探すふりをしながら、辺り見回す。
苔むした灯篭のそばで、彼女の尻尾が揺れている。
こんなやり取りを何度か繰り返し「見ぃつけた!」と隠れていた彼女の背に飛びつく。
キャキャ、言いながらキィーナははしゃいでいた。
その手を取り皆でお社の前へと向かうと両手を合わせ軽くお辞儀をした。
いくら神官である私でも、お社についてはさほど詳しくない。
なので正しい礼儀作法も曖昧である。
あまりにスッキリしないので、そこは御愛嬌と笑ってみせた。
ソフィーもちゃんと神様に挨拶しようとする心があれば問題ないと言ってくれたので、気に留めておく程度で済ませた。
「この横道を進んだ所に、私たちの隠れ家があります」
左側の脇道を見ながらソフィーは頷いた。
この先にある道は、木々の枝葉がアーチ状に伸びて、新緑の小トンネルを造っていた。
「そんでもって、反対の道を進めば結界が張られている聖域ね」
右側に視線を移し、森林を眺める。まったくもって静けさだけが辺りを支配している。
本当に遺跡の中で大型魔物が暴れているのか、怪しい。
「どうしますか? さきに聖域の方へ行って調査を開始しますか?」
「いいや、ソフィーのおばあ様に会うのが先決だよ。村に滞在する時間はまだあるから急がなくて問題ないよ」
今度はソフィーを先頭にしてトンネル小路を渡ることになった。
長さ、数十メートルのトンネルをくぐり抜けた先に、あったのは隠れ家どころか集落だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる