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二章、後編 聖地の落とし物

40話 銀の匙

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 私たちの日常において、謎とは絶えず存在するモノである。
 例えば、どうして空から水が落ちてくるのか? その時、天を羽ばたく鳥たちはどこにいるのか? 降り注いだ水は最終的にどこに流れゆくのか?
 一つのことを熟考するだけでも、様々な謎が飛び出してくる。

 普段は目にしている当たり前も、当然という枠を取り除けば、たちまちミステリーに早変わりする。
 私は、これを探偵のシルバースプーンと呼んでいる。

 銀の匙という名の意味合いは、裕福や魔除けといったものが含まれる。
 生まれたばかりの赤子に銀の匙を贈る風習は、その子の成長を見守る周囲の願いから生まれたものだ。

 探偵にとってそれは、スプーンではなくである。
 難解な謎を解いた時、得も言われぬ幸福感が私の心を満たす。

 ソフィーと出会って、彼女の一言一言が謎解きのピースでもあった。
 薬、仲間、神官、祖母、そして黄金の畑。

 すでに出題は出ていた。問題は、それに意識を向けていたのか? どうかだ。
 これらを繋ぎ合わせれば、この村の裏側に辿りつく。
 どうして獣人害が発生したのか? 村を出ていたソフィーの仲間はどこにいるのか? どうして私を村に呼ぼうとしたのか?
 すべては一点に帰結する。

 彼女がどこまで、明かそうとしていたのかは私にも分からない。
 けれど、ずっと救援して欲しいという合図は送っていた。

 あとは、答え合わせだ。そのために私は、ヴィンセント遺跡に向かわなければならない―――。

 一夜が明けて、私たち三人は遺跡あるという村奥の森林へと足を運んだ。
 一見すると獣道すら見当たらない茂みの中をかい潜ると急に、石畳の通路が現れた。
 だいぶ、昔に整備されたであろう、小路は雑草と苔に混じり、所々が途切れかけていた。

「私について来てください。今から、祖母たちのもとへと案内します……あの、本当に宜しいのですか? ディズ様」

「平気だよ。賢明な貴女のことだ、すでに獣人害が空気感染タイプの病ではないことは分かっているでしょう?」

「ええ、まあ。どの道、ディズ様には祖母の容態を診てもらえたらなぁ、と思っていたところです。応じていただけるのでしたら、私としても願ったり叶ったりです」
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