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二章、前編 聖地への訪問

33話 人として

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「出来れば、明日から遺跡の調査を執り行いたいのですが……」
 実際に遺跡とおもむけば、不可解な点も明らかになるかもしれない。
 そう思い立つと自分で勝手に話を進めてしまった。

 推理小説の影響も多分に含まれていると思う。
 一度、気になってしまったことは、ハッキリとさせたくなってしまう性分、こういうところが私の駄目なところだ。
 普段、仕事を引き受けないのもそのためである。なるべく、興味を持たないよう、依頼書に目を通さないこともしばしある。

 もちろん道中、苦労してここまで来たのだから、トンボ返りなどできないという気持ちも否めない。
 報酬だって、それなりには頂けるだろう。
 けど、それ以上にミステリーという言葉が思考の中で過って仕方がない。
 ある意味もれは禁断症状かもしれない……。

「やや、そう言って頂けるとこちらとしても助かります。ですが……申し訳ない。ワタシは再調査には立ち会えません。かくゆう、この村の者も協力はできないでしょう」

「何故です? 村を守護するのも、我々の仕事ではありませんか?」

「あなたも見たでしょう、この村の前にある広大な麦畑を」

「はい、見事な物ですね。あんなに豊かな実りは、なかなかお目にかかれません」

「もうすぐ麦の刈り入れ時なのです。村人たち総出でやっても人手が足りないぐらいです。ワタシも収穫祭の準備を始めないといけません」

 あなたにも分かるでしょ? たるんだ頬を弾ませる神官の眼がそう訴えていた。
 確かに、どう対処すればいいのか? 分からない事に関わるより、通例の儀式を優先したいという気持ちも分からないわけでもない。
 魔物を放置するか、どうかは神官の判断にゆだねられている。
 現状、遺跡から出てこないのであれば、気にするべきではないというのがムッグ殿の考えらしい。

「構いません、調査はこちらの方で行いますので、ムッグ神官はなすべきことを進めてください」

「ええ、そうさせて貰います。ログワークに依頼を出したのも、そのためですからな」 

 人として、何におもきを置くのかは個人個人でかわる。
 違いはあれど、結局は利己的でしかない……私も彼もただ自分にとっての利益を求めているだけである。
 そう思うと、ムッグ殿の考えを無責任だと否定する気にはなれなかった。
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