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一章 神官とケモ耳娘

13話 登頂

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 ここまで、かなり歩いてきたと思う。
 私の人生で、ここまで気力、体力を振り絞ったことは記憶にない。

 登山の最中、上の方で獣のような悲鳴が聞こえたかもしれない。
 剣戟が鳴り響く中で、黒い影が斜面を下ってゆく光景を目にした気もする。

 ラグース氏が護衛として活躍してくれていることは分かっている。
 彼がいなければ、ここまで来ることもなかっただろう。

 けれど、今の私は無心の境地に至っていた。
 己が苦痛を取り除くため、前に進むことだけに専念していた。

「早く来て! 山小屋を見えたよ」

 辺りが薄暗くなり始めた頃、ようやく山頂にある山小屋に到着した。
 疲れしらずの、キィーナはまだまだ元気一杯だ。
 初めての登頂成功に両手を上げてはしゃいでいる。

 私はというと……すでに燃えカスになろうとしていた。
 あと、もう少し遅ければ頂上到達前にリタイヤしていたかもしれない。

「ちかれたぁぁ……」

 山小屋に入るなり、私はベッドに飛び込んだ。
 簡素ではあるが、ないよりはマシなどと思ってはいけない。
 ベッドがあるのは、私とっては救いだった。

「ディ、お腹すいた―。ご飯、ご飯」

「うーん。ゴメン……今は動けそうにないから、適当にすませておいて。バッグの中にバゲットや……干し肉……缶詰が入っているから食べて――――いいよ」

 どれくらい、眠っていたのだろうか?
 目覚めると、寝室は真っ暗になっていた。

 ベッドから起き上がろうとすると腕に何かが触れている感触がした。
 暗闇に目が慣れてくると、私の腕を抱き枕にして眠るキィーナがいた。

「んー、ふぁ~! おはよー、ディ」

「起こしちゃったね、ゴメン。キィーナ、ちゃんとご飯は食べたの?」

 答える来るよりも先に、彼女の腹の虫がグウゥゥ~と鳴き出していた。
 どうやら、この子は夕食も摂らずに私に付き添っていてくれたようだ。
 寝ぼけまなこを手でこする彼女の頭をやさしく撫でてあげる。

「ご飯にしようか!?」

 そう言ってあげるとキィーナは目を細めながら、うなずいた。
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