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Chapter.2:黄昏の戦乙女と第一回イベント
18話:【アーティファクト・ゴーレム】
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『こっちに気付いた!』
「フォーメーションはさっきの通りに! みんな、頑張ろう!」
『やってやるぜ!』
『ん!』
【アーティファクト・ゴーレム】のモノアイが光り、その身体がゆっくりと動き出した。頭上に現れたHPゲージは三本。さて、どうくるかな?
とりあえず私は側面に回って――うおわ!? 視界が赤い!
『うわぁっ!』
スラスターを噴かせつつ地面を蹴り、その場でヘッドスライディングすると、私の頭上を何かが高速で通り過ぎていった。
姿勢を整えつつ確認すると、【アーティファクト・ゴーレム】の腕が私の頭のあったところに浮遊していた。あれ射出できるの!? ロケットパンチ的な?
『ぐあっ』
私の方に射出されたのは左腕だったようで、右側に向かったレンに右腕が射出され、大剣で腕をガードしていた。
それでもダメージが抜けてくるあたり、このゴーレムの攻撃力の高さが感じられる。受けるよりも避けた方が良さそうだ。
射出スピードが結構早いから、避け切れるかはわからないけどね。《直感》スキルに頼るしかない。
『チャンス』
しかし、両腕が離れた今がチャンスだ! アイちゃんもそう思ったのか、凶悪バットを片手に【アーティファクト・ゴーレム】へと近づいて行く。
『なんと』
瞬間、アイちゃんに向けて発射される右足。アイちゃんはそれをバットで打ち返し、地味なダメージを【アーティファクト・ゴーレム】に与えていた。
ロケットパンチならぬロケットキックってところか。てかおい! やっぱり足は飾りじゃないかぁ! 偉い人は何やってんの!
……本体が普通に浮いてるからね! そりゃそうだって感じだ。あ、左足もアイちゃんに飛んでった。打ち返されてるけど。バットって結構強いんだね……絵面は完全にバッティングセンターに遊びに来た子どもなんだけど。
え? バットのスパイク? 知らんなぁ。
【アーティファクト・ゴーレム】の攻撃方法は単純で、まず四つの手足を射出して攻撃した後、一直線にゴーレムに戻っていく。この際、射線上に立つと背中にブローをくらうから注意。
もしくは、射出した手足を操ってターゲットを追尾するか。うん、ファ○ネルだね。もしくはドラ○ーン?
この場合、射出した部位の魔力が尽きる直前まで追ってきて、その後に身体にゆっくりと戻っていく感じかな。この2パターンになる。
パターンさえ分かれば、攻略は楽……だと言えたらどれだけよかっただろうか。
まず一つとして、やはりと言うべきか属性耐性を持っていた。明らかにマギアライフルのダメージの通りが悪かったからね。
その上物理にも強いようだ。まぁ、見た目硬そうだし。つまり、こちらのダメージはあまり通っていないことになる。それでも、そのHPを少しずつ削ることはできていた。
私は《直感》スキルで事前に回避、アイちゃんはホームランバッター顔負けの打率で、ロケットパンチとキックを打ち返してダメージを与えている。
レンはマシンブレイカーのスキル、《機鋼破壊》を使って一番ダメージを稼いでいた。ENを消費することになるけど、私たち魔機人には《自動供給》スキルがあるから問題はないかな。
どっちかと言えば、私の方が問題だったりする。やっぱり、マギアライフルとサーベルのダメージの通りが悪い。
光属性の耐性だけだと説明が……あ、もしかしてマギアライフルもサーベルも、魔法攻撃扱いだったりする?
【アーティファクト・ゴーレム】に魔法攻撃の耐性があって、その上で属性耐性を持ってるなら……うん、このダメージ量にも頷けるかも。
ヴィーンは《弓》スキルの派生、《狩弓》スキルのアーツで着実にHPを削っている。時に私やレンに飛んでくる腕や足に矢を当てて、その軌道を変えてるんだから凄いものだ。
うーん。そろそろライフルに回せる腕部のENがなくなってきた。時間経過で回復するとはいえ、むやみやたらと使い続けるのもよくない。ここはマギアサーベルでの近距離戦に移行かな!
『近付くよ!』
「分かった。援護は任せてもらおうか!」
私を狙う右腕をヴィーンにはじき飛ばしてもらいつつ、私は両手にマギアサーベルを握って【アーティファクト・ゴーレム】へと近付いて行く。
本体は宙に浮いてるけど、飛べるのはそっちだけじゃないんだよ!
『ふっ!』
スラスターを噴かせて跳躍、バーニアで姿勢制御を行いつつ【アーティファクト・ゴーレム】の本体に切りかかる。
ゴーレムの脇腹を切り裂き、スラスターで離脱。地面に着地した瞬間に再びスラスターを噴かせて胴体へと接近する。
攻撃を受けないようにしつつ、こちらの攻撃を押し付けていく。各パーツの消費ENが回復を上回っているけど、微々たる差だ。どうやら、ここは《魔力自動吸収》で吸収できる魔力が多いらしい。これなら、長時間跳び回っていられるね。
基本は地面を、時には射出された腕や足を足場に、攻撃を重ねていく。
そうして一本目のHPバーを削りきった時、【アーティファクト・ゴーレム】の行動パターンが変わった。
腕や足を射出するのに変わりはないけど、それに加えて本体から光の粒のようなものが射出されるようになった。その光の粒にはきちんとダメージ判定があり、当たればダメージを受けるようだ。
……完っ全にビッ○兵器ですよねぇ!? くそぅ! 私も使いたい! イン○ムでもいいから!
などと言っていても敵は待ってくれない。容赦なく光の粒が当たってくる。
ん? これ、魔法攻撃扱い? マギアライフルとかと同じかな? 無視できる程度のダメージ量……哀れ、ビッ○兵器。
「くっ……」
魔機人三人は無視できるレベルの威力だったけど、ヴィーンにとってはそうじゃない。
一撃で目に見えるほどのダメージをくらっている。光の粒のヘイト取りたいけど、本体攻撃すればこっちに飛んでくるかな?
さっきと同じように空を跳び回りながらマギアサーベルでちくちくしていると、周りの光の粒が私に集中するようになった。これでヴィーンへのちょっかいも減るだろう。
レンとアイちゃんは……うん、スキルレベル上げるチャンスだ! ってむしろウェルカム状態だね。大きい一撃はくらいたくないけど、自動回復で補えるレベルのチクチク攻撃は大歓迎です。
続いて二本目のHPバーも粉砕。残り一本になった。
さて、ボスの行動パターンは変わるかな?
様子見のために一度下がると、レンやアイちゃんも一緒に下がってきた。
『こいつ、結構しぶといな』
『まぁ、ゴーレム系って硬いししぶといイメージあるよね』
『ん』
「ほらほら。無駄口はそこまでだよ」
『『はーい』』
眺めていると、【アーティファクト・ゴーレム】の背中から何かがパージされて、宙に浮かび始めた。
宙に浮く腕が二本追加されて、計四本に。足も合わせると六本か。
全部で一人を狙われると厄介だけど……っ!
『やっぱり私かぁ!』
六本全てが私を目指してすっ飛んできたので、スラスターを駆使して逃げる。流石に六本全部を処理するのは無ー理ー!
でも、これはチャンスだ。六本の手足が私を狙っている間に、本体に攻撃できれば!
『レン! アイちゃん! ヴィーン! 任せた!』
『おう! アタシに任せな!』
『ん』
「そのまま腕を引き付けておいてくれ! 頼んだよ、ミオン!」
『なるべく頑張ってみます!』
とは言ったもののどうするか。
一応マギアライフルのENも少しは回復してるけど……焼け石に水だよねぇ。
このままスラスターぶっぱで逃げ続けるのも、EN的に不安だし……それに、私の与えたヘイトを向こうの三人が上回ったら戻っていっちゃうしなぁ。
うーん、どうするか。
チラリと横目でゴーレムの様子を見れば、三人はそれぞれの武器で攻撃を開始していた。三人の中だと、ゴーレム相手に火力が出ているのはレンだ。武装のスキルの相性がいいってのもあるけど。
というか、そろそろ戻らなくていいのかい、腕さんや。飛ぶのにも魔力を使うじゃろうて。ほっほっほ。さっさと本体へと戻って、もう一度こちらに来てくれても構わんのじゃよ?
……あ、はい。戻る気はないんですね。あれかな。第三段階だと魔力の供給なしでずっと飛び続けていられるとかそんな感じか。
『ん?』
どうしようかと考えていると、アイちゃんがゴーレムの本体から離れていくのが分かった。一体何を……あれ? 私の事呼んでる?
パーティーチャットは……繋がってるか。
『どうしたの、アイちゃん?』
『ミオン、こっちくる』
『……えっと、おまけでゴーレムの腕や足も付いてくるけど?』
『おっけー。全部打ち返す』
『打ち返す……ああ!』
なるほど! その手があった! 何で忘れてたんだ私は!
私は背後を追ってくる足と腕に、マギアライフルでダメージを与える。
ダメージを受けた腕や足は一瞬動きが止まるから、これで順番を調整すれば……!
私がアイちゃんの元にたどり着くまでに、ゴーレムの手足はほぼ一直線に並んだ。後はバトンタッチするだけ!
『アイちゃん!』
『ん!』
私とのすれ違いざまにアイちゃんはバットを振るう。
カキーン! と快音を響かせながら、ゴーレムの本体に向けて腕や足を打ち返していく。
『これでラスト』
ガッキィーン! と芯を捉えた一振りで打ち返された腕は、ゴーレムの本体にクリーンヒットして更なるダメージを与えた。
今の攻防でかなりのHPが削れてる! 後は押し切るだけ!
『レン! 全部のENを剣に!』
『お、おう! 分かった!』
レンが《機鋼破壊》にありったけのENを込めている間に、左肩のジョイントから大型マギアソードを取り外し、両手で持って構える。
こっちも、限界ギリギリまでENをぶち込む!
『うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
『はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
私とレンはスラスターを噴かせ、【アーティファクト・ゴーレム】の本体に突撃する。
マギアソードの横薙ぎがゴーレムの脇腹から切り裂き、レンの大剣の振り下ろしがゴーレムの胴体を真っ二つにした。
頭上のHPバーは全て削りきれており、消滅していた。
宙に浮いていた腕や足は力を失い、地面に落下していく。四等分にされたゴーレムの本体と共に、光の粒子へと変わっていった。
〈ボスモンスター【アーティファクト・ゴーレム】を討伐しました〉
〈《魔機人》スキルのレベルが上がりました〉
〈《武装》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動修復》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動供給》スキルのレベルが上がりました〉
〈《直感》スキルのレベルが上がりました〉
〈《敏捷強化》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動修復》スキルと《自動供給》スキルのレベルが30を超えました。新たなスキルを獲得可能です〉
『やったー!』
『よっしゃあ!』
『ん!』
「勝てたか……」
色々とログが……おっと? 何か新しいスキルを覚えられるみたいだね。
でも確認は後にしよう。流石に疲れたよー。
「この先にセーフティーエリアがあるみたいだ。そこで一度休憩をとろう」
『さんせーい』
『おう』
『ん』
セーフティーエリアで順番にログアウト休憩をとった私たちは、ボスが守っていた〈散華の森・最奥〉を見るために先へと進むのだった。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.39(6up↑)
《武装》Lv.35(6up↑)《パーツクリエイト》Lv.33(6up↑)
《自動修復》Lv30(8up↑)《自動供給》Lv.34(6up↑)
《片手剣》Lv.9(8up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.19(5up↑)《直感》Lv.29(4up↑)《敏捷強化》Lv.36(9up↑)《採掘》Lv.28(7up↑)《初級鍛冶》Lv.9(5up↑)《裁縫》Lv.17
残りSP30
「フォーメーションはさっきの通りに! みんな、頑張ろう!」
『やってやるぜ!』
『ん!』
【アーティファクト・ゴーレム】のモノアイが光り、その身体がゆっくりと動き出した。頭上に現れたHPゲージは三本。さて、どうくるかな?
とりあえず私は側面に回って――うおわ!? 視界が赤い!
『うわぁっ!』
スラスターを噴かせつつ地面を蹴り、その場でヘッドスライディングすると、私の頭上を何かが高速で通り過ぎていった。
姿勢を整えつつ確認すると、【アーティファクト・ゴーレム】の腕が私の頭のあったところに浮遊していた。あれ射出できるの!? ロケットパンチ的な?
『ぐあっ』
私の方に射出されたのは左腕だったようで、右側に向かったレンに右腕が射出され、大剣で腕をガードしていた。
それでもダメージが抜けてくるあたり、このゴーレムの攻撃力の高さが感じられる。受けるよりも避けた方が良さそうだ。
射出スピードが結構早いから、避け切れるかはわからないけどね。《直感》スキルに頼るしかない。
『チャンス』
しかし、両腕が離れた今がチャンスだ! アイちゃんもそう思ったのか、凶悪バットを片手に【アーティファクト・ゴーレム】へと近づいて行く。
『なんと』
瞬間、アイちゃんに向けて発射される右足。アイちゃんはそれをバットで打ち返し、地味なダメージを【アーティファクト・ゴーレム】に与えていた。
ロケットパンチならぬロケットキックってところか。てかおい! やっぱり足は飾りじゃないかぁ! 偉い人は何やってんの!
……本体が普通に浮いてるからね! そりゃそうだって感じだ。あ、左足もアイちゃんに飛んでった。打ち返されてるけど。バットって結構強いんだね……絵面は完全にバッティングセンターに遊びに来た子どもなんだけど。
え? バットのスパイク? 知らんなぁ。
【アーティファクト・ゴーレム】の攻撃方法は単純で、まず四つの手足を射出して攻撃した後、一直線にゴーレムに戻っていく。この際、射線上に立つと背中にブローをくらうから注意。
もしくは、射出した手足を操ってターゲットを追尾するか。うん、ファ○ネルだね。もしくはドラ○ーン?
この場合、射出した部位の魔力が尽きる直前まで追ってきて、その後に身体にゆっくりと戻っていく感じかな。この2パターンになる。
パターンさえ分かれば、攻略は楽……だと言えたらどれだけよかっただろうか。
まず一つとして、やはりと言うべきか属性耐性を持っていた。明らかにマギアライフルのダメージの通りが悪かったからね。
その上物理にも強いようだ。まぁ、見た目硬そうだし。つまり、こちらのダメージはあまり通っていないことになる。それでも、そのHPを少しずつ削ることはできていた。
私は《直感》スキルで事前に回避、アイちゃんはホームランバッター顔負けの打率で、ロケットパンチとキックを打ち返してダメージを与えている。
レンはマシンブレイカーのスキル、《機鋼破壊》を使って一番ダメージを稼いでいた。ENを消費することになるけど、私たち魔機人には《自動供給》スキルがあるから問題はないかな。
どっちかと言えば、私の方が問題だったりする。やっぱり、マギアライフルとサーベルのダメージの通りが悪い。
光属性の耐性だけだと説明が……あ、もしかしてマギアライフルもサーベルも、魔法攻撃扱いだったりする?
【アーティファクト・ゴーレム】に魔法攻撃の耐性があって、その上で属性耐性を持ってるなら……うん、このダメージ量にも頷けるかも。
ヴィーンは《弓》スキルの派生、《狩弓》スキルのアーツで着実にHPを削っている。時に私やレンに飛んでくる腕や足に矢を当てて、その軌道を変えてるんだから凄いものだ。
うーん。そろそろライフルに回せる腕部のENがなくなってきた。時間経過で回復するとはいえ、むやみやたらと使い続けるのもよくない。ここはマギアサーベルでの近距離戦に移行かな!
『近付くよ!』
「分かった。援護は任せてもらおうか!」
私を狙う右腕をヴィーンにはじき飛ばしてもらいつつ、私は両手にマギアサーベルを握って【アーティファクト・ゴーレム】へと近付いて行く。
本体は宙に浮いてるけど、飛べるのはそっちだけじゃないんだよ!
『ふっ!』
スラスターを噴かせて跳躍、バーニアで姿勢制御を行いつつ【アーティファクト・ゴーレム】の本体に切りかかる。
ゴーレムの脇腹を切り裂き、スラスターで離脱。地面に着地した瞬間に再びスラスターを噴かせて胴体へと接近する。
攻撃を受けないようにしつつ、こちらの攻撃を押し付けていく。各パーツの消費ENが回復を上回っているけど、微々たる差だ。どうやら、ここは《魔力自動吸収》で吸収できる魔力が多いらしい。これなら、長時間跳び回っていられるね。
基本は地面を、時には射出された腕や足を足場に、攻撃を重ねていく。
そうして一本目のHPバーを削りきった時、【アーティファクト・ゴーレム】の行動パターンが変わった。
腕や足を射出するのに変わりはないけど、それに加えて本体から光の粒のようなものが射出されるようになった。その光の粒にはきちんとダメージ判定があり、当たればダメージを受けるようだ。
……完っ全にビッ○兵器ですよねぇ!? くそぅ! 私も使いたい! イン○ムでもいいから!
などと言っていても敵は待ってくれない。容赦なく光の粒が当たってくる。
ん? これ、魔法攻撃扱い? マギアライフルとかと同じかな? 無視できる程度のダメージ量……哀れ、ビッ○兵器。
「くっ……」
魔機人三人は無視できるレベルの威力だったけど、ヴィーンにとってはそうじゃない。
一撃で目に見えるほどのダメージをくらっている。光の粒のヘイト取りたいけど、本体攻撃すればこっちに飛んでくるかな?
さっきと同じように空を跳び回りながらマギアサーベルでちくちくしていると、周りの光の粒が私に集中するようになった。これでヴィーンへのちょっかいも減るだろう。
レンとアイちゃんは……うん、スキルレベル上げるチャンスだ! ってむしろウェルカム状態だね。大きい一撃はくらいたくないけど、自動回復で補えるレベルのチクチク攻撃は大歓迎です。
続いて二本目のHPバーも粉砕。残り一本になった。
さて、ボスの行動パターンは変わるかな?
様子見のために一度下がると、レンやアイちゃんも一緒に下がってきた。
『こいつ、結構しぶといな』
『まぁ、ゴーレム系って硬いししぶといイメージあるよね』
『ん』
「ほらほら。無駄口はそこまでだよ」
『『はーい』』
眺めていると、【アーティファクト・ゴーレム】の背中から何かがパージされて、宙に浮かび始めた。
宙に浮く腕が二本追加されて、計四本に。足も合わせると六本か。
全部で一人を狙われると厄介だけど……っ!
『やっぱり私かぁ!』
六本全てが私を目指してすっ飛んできたので、スラスターを駆使して逃げる。流石に六本全部を処理するのは無ー理ー!
でも、これはチャンスだ。六本の手足が私を狙っている間に、本体に攻撃できれば!
『レン! アイちゃん! ヴィーン! 任せた!』
『おう! アタシに任せな!』
『ん』
「そのまま腕を引き付けておいてくれ! 頼んだよ、ミオン!」
『なるべく頑張ってみます!』
とは言ったもののどうするか。
一応マギアライフルのENも少しは回復してるけど……焼け石に水だよねぇ。
このままスラスターぶっぱで逃げ続けるのも、EN的に不安だし……それに、私の与えたヘイトを向こうの三人が上回ったら戻っていっちゃうしなぁ。
うーん、どうするか。
チラリと横目でゴーレムの様子を見れば、三人はそれぞれの武器で攻撃を開始していた。三人の中だと、ゴーレム相手に火力が出ているのはレンだ。武装のスキルの相性がいいってのもあるけど。
というか、そろそろ戻らなくていいのかい、腕さんや。飛ぶのにも魔力を使うじゃろうて。ほっほっほ。さっさと本体へと戻って、もう一度こちらに来てくれても構わんのじゃよ?
……あ、はい。戻る気はないんですね。あれかな。第三段階だと魔力の供給なしでずっと飛び続けていられるとかそんな感じか。
『ん?』
どうしようかと考えていると、アイちゃんがゴーレムの本体から離れていくのが分かった。一体何を……あれ? 私の事呼んでる?
パーティーチャットは……繋がってるか。
『どうしたの、アイちゃん?』
『ミオン、こっちくる』
『……えっと、おまけでゴーレムの腕や足も付いてくるけど?』
『おっけー。全部打ち返す』
『打ち返す……ああ!』
なるほど! その手があった! 何で忘れてたんだ私は!
私は背後を追ってくる足と腕に、マギアライフルでダメージを与える。
ダメージを受けた腕や足は一瞬動きが止まるから、これで順番を調整すれば……!
私がアイちゃんの元にたどり着くまでに、ゴーレムの手足はほぼ一直線に並んだ。後はバトンタッチするだけ!
『アイちゃん!』
『ん!』
私とのすれ違いざまにアイちゃんはバットを振るう。
カキーン! と快音を響かせながら、ゴーレムの本体に向けて腕や足を打ち返していく。
『これでラスト』
ガッキィーン! と芯を捉えた一振りで打ち返された腕は、ゴーレムの本体にクリーンヒットして更なるダメージを与えた。
今の攻防でかなりのHPが削れてる! 後は押し切るだけ!
『レン! 全部のENを剣に!』
『お、おう! 分かった!』
レンが《機鋼破壊》にありったけのENを込めている間に、左肩のジョイントから大型マギアソードを取り外し、両手で持って構える。
こっちも、限界ギリギリまでENをぶち込む!
『うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
『はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
私とレンはスラスターを噴かせ、【アーティファクト・ゴーレム】の本体に突撃する。
マギアソードの横薙ぎがゴーレムの脇腹から切り裂き、レンの大剣の振り下ろしがゴーレムの胴体を真っ二つにした。
頭上のHPバーは全て削りきれており、消滅していた。
宙に浮いていた腕や足は力を失い、地面に落下していく。四等分にされたゴーレムの本体と共に、光の粒子へと変わっていった。
〈ボスモンスター【アーティファクト・ゴーレム】を討伐しました〉
〈《魔機人》スキルのレベルが上がりました〉
〈《武装》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動修復》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動供給》スキルのレベルが上がりました〉
〈《直感》スキルのレベルが上がりました〉
〈《敏捷強化》スキルのレベルが上がりました〉
〈《自動修復》スキルと《自動供給》スキルのレベルが30を超えました。新たなスキルを獲得可能です〉
『やったー!』
『よっしゃあ!』
『ん!』
「勝てたか……」
色々とログが……おっと? 何か新しいスキルを覚えられるみたいだね。
でも確認は後にしよう。流石に疲れたよー。
「この先にセーフティーエリアがあるみたいだ。そこで一度休憩をとろう」
『さんせーい』
『おう』
『ん』
セーフティーエリアで順番にログアウト休憩をとった私たちは、ボスが守っていた〈散華の森・最奥〉を見るために先へと進むのだった。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.39(6up↑)
《武装》Lv.35(6up↑)《パーツクリエイト》Lv.33(6up↑)
《自動修復》Lv30(8up↑)《自動供給》Lv.34(6up↑)
《片手剣》Lv.9(8up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.19(5up↑)《直感》Lv.29(4up↑)《敏捷強化》Lv.36(9up↑)《採掘》Lv.28(7up↑)《初級鍛冶》Lv.9(5up↑)《裁縫》Lv.17
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スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる
狙うは頭か核のどちらか
私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった
狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた
だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう
そう思っていたが...
これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である
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ファンタジー
平凡な女子高生【下御陵 美里】が異世界へ転生する事になった。
せっかく転生するなら勇者?聖女?大賢者?いやいや職種よりも激レア種族を選んでみたいよね!楽しい異世界転生ライフを楽しむぞ〜
【異世界転生 幼女編】
異世界転生を果たしたアリス.フェリシア 。
「えっと…転生先は森!?」
女神のうっかりミスで、家とか家族的な者に囲まれて裕福な生活を送るなんていうテンプレート的な物なんか全く無かった……
生まれたばかり身一つで森に放置……アリスはそんな過酷な状況で転生生活を開始する事になったのだった……アリスは無事に生き残れるのか?
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