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Chapter.2:黄昏の戦乙女と第一回イベント

16話:新たな武装

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『ミオンは あらたなぶそうを てにいれた!▽』
「君はまた、随分と器用なことしてるね……」

 第一回イベントの開催を現実時間で一週間後に控えた今日、私は〈ノースディア廃鉱山〉から採掘した鉱石を使い、新しい武装を製作していた。

 そう、前から作りたかったビーム……もといマギアライフルと大型のマギアソードだ。
 新しい鉱石を手に入れたことで、より高レベルの合金を作れるようになったからね。作らない理由はない。

 ただ、新しい鉱石が採れるようになったとはいえ、未だに貴重な素材なことには変わりない。無駄にしないようにしないとね。

 とりあえず【アーティファクト・ソードマン】のダンジョンを周回して、アーティファクトの残骸を手に入れる。ここはマギアサーベルがあれば、かなり楽に周回ができるね。まぁ、こちらの装備が整ってきたからか、相手も最初に比べたら結構強くなってるんだけども。

 使ってくるアーツの種類が増えたり、実弾の威力が上がったり……まぁ、ソロなら負ける相手じゃないね。複数人で挑むと補正がとんでもないことになって勝てなくなるんだ。

 十分なくらいにアーティファクトの残骸を集めたら、それをアーティファクト・インゴットに加工し、量産していく。
 その後は用途に合わせた合金を作る作業に入る。鉄や銅、廃鉱山で掘り出したアルタイト鉱石とイルタイト鉱石にアーティファクト・インゴットを組み合わせていく。

 合金ができたら、いつもの魔力処理を終えた後に《パーツクリエイト》に突っ込んで、形を整える。ここもパーツを作る時と同じで、プラモデル式に各パーツを作っていく。魔力処理をしてれば、それなりの耐久値はあるからね。

 この方法以外の方法も試そうと思ってはいるんだけど、まだ試行錯誤できるだけの素材が余ってないんだよね。私の個人的な素材集めに、みんなを駆り出すわけにもいかないし。

 ライフルは私のお気に入りのロボットのライフルに似せている。完全に同じってわけじゃなくて、ところどころ違う意匠が入ってる感じというか。

 拡張性を持たせるために、ジョイントは多めに作ってある。パーツの組み合わせ次第で、ロングビームライフルとかゲロビ……極太ビームを放てるキャノンとかにできたらいいなって思ってるけど。

 【ブラッドライン】の腕パーツにも新たにジョイントを作り、ライフルを固定できるようにする。場所的には手首の下辺りだね。
 さらにライフルの持ち手下から伸びるようにパーツを作っていき、さっき作った【ブラッドライン】の新ジョイントに固定し、接続。そこから射撃に必要なENを供給しつつ、サーベルを使う際には肘側に回転して近接戦闘の邪魔にならないようにした。

 ライフル本体にも、ENを貯蔵できる簡易コンデンサを取り付けてある。これで非戦闘時の余剰ENを溜め込んでおけるってわけだね。
 ……まぁ、生産作業中とかはアイテムボックスの中にしまっちゃうけど。
 そんな感じで、完成したのが以下のものとなる。

[武装・兵器]マギアライフル レア度:EX 品質:B 魔力伝導率:A 最大魔力蓄積量:3000
 固定ダメージ:2800 消費EN:1500
 有効射程:100m
 スキル:《光属性》《反動・中》《威力減衰》《ロックオン》

〈《初級鍛冶》のレベルが上がりました〉
〈《パーツクリエイト》のレベルが上がりました〉

 なんか、ゲーム間違えてない? って感じのステータスしてるね。有効射程が100mっていうのは、短いのか長いのか……いや、FPSゲームならともかく、これMMOだった。普通に射程長いよね?
 消費ENはサーベルとは比べ物にならないくらいに高い。それでも、これだけのダメージを叩き出せる遠距離武器とか、完全にバランスブレイカーだ。

 ……まぁ、それなりに高価な素材も使ってるんだけどね。魔導石の粉末とか。
 一番レア度の低い魔導石とはいえ、これから先どこで手に入るかも分からないアイテムだ。砕くのに小一時間くらい悩んだよ。
 いくつもの魔導石を砕いた結果、これだけの武装が作れたんだから、まぁよかったのかな。
 さて。恒例の知らないスキルチェックといこうか。

 《反動・中》:この武装の使用時、一回使用する毎ごとに腕部耐久値に5%のダメージが入る。
 《威力減衰》:距離によって威力が低下する。射程最大で半分ほどのダメージ。
 《ロックオン》:ライフルを構えると視界内にレティクルが現れるようになる。

 ふむ。反動は結構痛いけど、それくらいなら許容範囲かな?
 減衰に関しては、そう美味い話はないって感じだね。
 ロックオンは、射撃のサポートのためのスキルかな。

 100m先の相手にライフルを当てても、入るダメージは1400ってことか。いや、それでも十分なダメージだけどね?
 有効射程ってことは、100.1m以上にはダメージが入らないって認識でいいのかな。スナイパーライフルじゃないし、妥当なところかもしれないね。

 よし。次は大型のマギアソードだね。ギリギリ片手剣ですってくらいの長さにしたいけど……最悪《刀剣》スキルをもう一回取ってもいいかもね。派生スキルに比べてダメージ補正は低いけど、マギア系は固定ダメージだし、装備できるか否かが重要になってくるかな。

 あ、マギアライフルは武装スキルさえ持ってれば装備できるよ。つまり、魔機人マギナ専用だね。はっはっは!
 っと、笑ってる場合じゃない。さっさと作って〈散華の森・中層〉のボスで試運転しないと。

 以前作った研磨魔導石を二つ用意し、魔導ケーブルでその二つを繋いでいく。
 魔力が通ったことを確認したら、お次は持ち手と刀身が出現する部分の作成ね。

 インゴット化した鉱石を熱して柔らかく加工しやすいようにして、鎚を振るう。持ち手はマギアサーベルよりも長く、両手でも握りやすく加工しないとね。

 何度か形を修正しつつ、希望通りの持ち手が完成した。
 別のインゴットを取り出し熱し、鎚を振るい形状を整えていく。マギアサーベルの時よりも大きく、刀身が太くなるように。

 あと研磨魔導石を連結させるスペースも作らないとね。それと……マギアサーベルみたいに装飾もなにもないのも味気ないし、明らかに威力が高いですよーと言わんばかりの装飾にしよう。

 そうやって鎚を振るうこと一時間。できたパーツを《パーツクリエイト》にぶち込み、組み上げていく。
 持ち手といくつかのパーツを繋げ、小型の両刃斧ラビリュスのような形状の鍔を持つビームソードが完成した。

 ENを流せばサーベルのようなビームの刀身部分だけでなく、両刃斧の部分にもビームの刃が現れる仕様にしてみたよ。その分予想以上に大型化してしまい、左肩に取り付けるための専用のジョイントを作る羽目になったのはご愛嬌かな。

 その性能はマギアサーベルを遥かに凌ぐものになった。というわけで完成品のステータスがこちらになります。


[武装・両手剣/片手剣]大型マギアソード レア度:EX 品質:B 魔力伝導率:A+ 魔力保有量:5000
 固定ダメージ:3000
 スキル:《魔力自動吸収》《光属性》《状態変化・バスタードソード》《消費魔力増・大》《魔力収束》

 そういえば片手剣にも両手剣にもなる剣の種類があったような……という朧気な記憶を掘り出して、バスタードソードって形に落ち着いた。こうすれば、《片手剣》スキルを持ってる私にも使えるわけだね。

 《消費魔力増・大》:この武器を使用する際の消費魔力がかなり増大する。一秒間に500の魔力を消費する。
 《魔力収束》:自身の魔力をこの武器に流し、一撃の威力を上昇させる。上限値はカテゴリーによって異なる。上限値以上に魔力を流した場合、攻撃の後に自壊する。

 マギアサーベルよりも威力が高い分、ちょっと使いにくい性能になってるね。圧倒的にマギアサーベルの方が取り回しがいいけど、マギアソードにはその欠点を補って余りある「瞬間火力」がある。

 下のスキルでどれだけダメージが増えるのかは検証が必要だけど、限界値によってはとんでもないダメージを一撃で叩き出せるかもしれない。やっぱ兵器にはロマンがないとね。

 早速、左肩に取り付けたジョイントにマギアソードを接続する。引き抜く際に邪魔にならないようにジョイント部分を引き出し可動式にしたのは正解だった。少し体勢か崩れていても引き抜けるし。
 
 うーん、こうなると実体剣も欲しくなるね。マギアサーベルもマギアソードも光属性の剣だ。もし相手に光属性を無効化するスキルがあったら、戦うことすらできない。耐性くらいだったら、ぶち抜けるかもしれないけどね。

 ただ実体剣を作るには、持っている鉱石のランクが低い。手持ちの素材だと満足のいく剣は作れなさそうた。
 そうなると、新たな素材を求めて散華の森・下層まで足を運ぶことになるわけだけど……。

『行けなくはない、かも?』

 今回の生産活動で強力な武装が手に入った。パーツも申し分ないくらいの性能をしている。これなら、下層の攻略に踏み出してもいいんじゃないかな?

 行けそうならみんなで、行けなさそうなら一人で向かってみるのも悪くない。勝てなさそうなら逃げればいいし。幸い、遠くから当てられる遠距離武器は作ったしね。

『思い立ったが吉日! 早速みんなに話を聞いてみよう!』

 私は同じガレージで生産活動をしているであろうレンとアイちゃんに話を聞きに行く。
 どうやら二人とも新たなパーツを作れたみたいで、その試運転もしたいとのこと。〈散華の森・下層〉への挑戦は二つ返事で了承された。

 その後三人でヴィーンの元へと行くと、

「三人が行くって言うのに、私だけお留守番なのもね」

 と、苦笑気味に了承してくれた。
 準備は万端整ってる! 士気もそれなりに良し! 調子は……私は良し! 他は知らん!
 いざ、最前線のその先へ!
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