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Chapter.1:錆び朽ちた魔機人《マギナ》
7話:勝利者への褒美①
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〈エクストラボスモンスター【アーティファクト・ソードマン】を倒しました〉
〈〈刀剣〉スキルのレベルが上がりました。〉
〈《刀剣》スキルのレベルが成長限界に到達しました〉
〈一部スキルの派生先が解放されました〉
〈パーツ[錆び朽ちた]シリーズに情報が追加されました〉
〈武装[錆び朽ちたソード][錆び朽ちたブレード]に情報が追加されました〉
〈エクストラアーツ【スパイラル・ブレイカー】を習得しました〉
しばらく座りこんでHPとENを回復させた私は、戦闘後のログを確認していた。
それによると、どうやらあのボスロボットの名前は【アーティファクト・ソードマン】というらしい。《刀剣》スキルのアーツを使用するその姿は、正しくソードマンだね。
さらに私の《刀剣》スキルがカンスト、つまりはレベル30になったようだ。《刀剣》スキルの派生先のスキルも開放された。これは後で確認かな。
パーツに情報追加……これも要確認ね。とりあえず後回しで。
それにしても、エクストラアーツ? 普通のアーツとは違うのかな。エクストラアーツは、兄さんからも聞いたことがない。
とりあえず詳細を確認してみよう。エクストラアーツについてのヘルプも追加されてるね。
【スパイラル・ブレイカー】
エクストラアーツ
自身に回転を加えて空中から突撃する。【スパイラル・アタック】の空中版アーツであるが、その威力は全くの別物と言っていい。
※エクストラアーツとは
プレイヤーの行動によって解放されることがある特殊なアーツ。エクストラアーツはアーツが使えない種族でも解放することが可能で、使用することも出来る。
なるほど。元々【スパイラル・アタック】っていうアーツがあって、それを空中で行うアーツが【スパイラル・ブレイカー】ってことか。
空中からの突撃だから地上版より威力も高い。 空中に飛ぶ手段と空中で回転する手段、その上相手に突撃できる手段がないと覚えられないアーツなのかな?
で、エクストラアーツは魔機人でも使えるアーツと。うん、これは素直に嬉しいね。
んー、今の私だと一発打つのが限界だろうなぁ。スラスターとバーニアに使うENが洒落にならない。
それでも、私が使える唯一のアーツだ。顔がニヤけてきちゃう。ニヤける顔できないけどね!
それで、パーツと武装になにか情報が追加されたんだっけ? 前は【武装収納】だったけど、今回はなんだろう?
[パーツ・頭部]錆び朽ちた頭部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・胴部]錆び朽ちた胴部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・腕部]錆び朽ちた腕部・右(左) レア度:EX
STR+1 VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・腰部]錆び朽ちた腰部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3 AGI-2
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・脚部]錆び朽ちた脚部・右(左) レア度:EX
VIT+1 MIND-3 AGI-2
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[武装・剣]錆び朽ちたソード
ATK+1
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[武装・刀]錆び朽ちたブレード
ATK+1
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
新しく増えてるのは魔力伝導率……かな。軒並みF-だけど、つまりこれってENの消費効率ってことだよね? 伝導率が高ければ高いほど、少ない消費でENが使えるって理解でいいかな。
スラスターとかバーニアとかほんの少し動かしただけですごいEN使ったもんなぁ。
F-ってのが最低ランクだとして、最高ランクはどこまで高いんだろう? S? SS? 少なくともA以上だよね。
何にせよ、新しいパーツなんかを作る際には魔力伝導率にも注目しておきますか。まだ作れないけどね!
さて、お次はドロップアイテムだ。ロボット系だし、《パーツクリエイト》に使えるような素材が出てくれればいいけど。《鑑定》さん頼むよ!
[素材・アイテム]壊れた装甲板 レア度:R
[素材・アイテム]壊れたフレーム レア度:R
これは……素材アイテム! しかも見た目からして魔機人のパーツの素材としてピッタリじゃない!
早速、《パーツクリエイト》起動!
しかし、この素材アイテムたちも《パーツクリエイト》の素材庫には入らなかった。お決まりの素材の条件を満たしていません、だね。
んー、なにがいけないんだろう。
条件? でもソードマンはちゃんとしたロボットだ。少なくともさっきまでは動いてたわけだからね。
それなのに弾かれる? 壊れてるのがいけないのかな。
なにか見落としてる気がするんだよね。んーなんだろう。
……もしかして、素材庫に入れるにはなにか下準備みたいなのをしないといけないとか? ほら、料理に下ごしらえが必要なみたいに。
だとしたら、なにをしたら下ごしらえになるのかな。魔機人は魔力を動力源に動くロボット。で、さっき魔力伝導率っていう新しい情報が追加されたわけだね。
……よし、魔力ならぬENを通してみよう。このENだって元を正せば魔力だし。魔機人のパーツの素材にするために、魔力に親和性のある素材じゃないといけないってのも頷ける話ね。
私はインベントリから壊れた装甲板を取り出して、スラスターにENを送った時のようにエネルギーの流れを感じとる。そして、ゆっくりと、満遍なく染み渡るように装甲板へENを注ぎ込んでいく。
……これ、結構EN持ってかれるね? まぁ注ぎ込むんだけども。
さて、《鑑定》さんお願いします!
[素材・アイテム]魔力装甲板・低 レア度:R
『キタ――――――ッ!』
やりました! やってやりましたよ私は! 素材に魔力を注げばそれが魔力の籠った素材に変質するわけね!
ちなみにこっちがフレームに魔力を通したアイテムの方だ。
[素材・アイテム]魔力フレーム・低 レア度:R
よしよし。低とはいえ、やっと《パーツクリエイト》で使えそうな素材に出会えたぞう!
これは早速、手持ちの素材に魔力を込めなければ!
……と思ったのはいいんだけど、壊れた装甲板とフレームを魔力のこもったアイテムに変えるだけで最大ENの8割を使ってしまった。
んー、これはかなりENを食う作業だね。ガレージに戻ってゆっくりとやった方がよさそうだ。
多分だけど、魔力伝導率が低いからこんなにENを消費するってことだよね。つまり、魔力の籠った素材を量産するのに、魔力伝導率の高いパーツを作成するのは急務だ。
私はインベントリに装甲板とフレームをしまい、元来た道を戻ろうとして、止まる。その視線は、壊れたままのソードマンの残骸に向いていた。
んー、おかしい。モンスターは倒したら光の粒子になって消えてしまうはず。それなのに、この場にそのまま残ってる?
恐る恐る近づき、残骸に向かって《鑑定》する。
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(上) レア度:SR
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(下) レア度:SR
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(剣) レア度:SR
あっぶなーーー! 鑑定しておいて良かった!
しかしまた、とんでもないものだね。これ自体が魔機人のパーツとしてとても優秀なものじゃないですか。
ソロでダンジョンボスを倒したとはいえ、こんなものを貰っていいのかな? 貰うよ? 私、貰えるものはなんでも貰っちゃう主義だよ?
見た目は錆び付いてるように見えるけど、あくまでも表面が錆び付いているだけで、素材として使う部分には特に問題はさそうだ。
他に何も起こらなさそうなので私はアーティファクトの残骸たちをインベントリへしまい込む。うぇへへへ、涎が止まりませんなぁ。
『さて、帰って《パーツクリエイト》でも……うん?』
ほくほく顔(ロボットだから表情はないけど)でボス部屋を後にしようとした私だけど、ふと違和感を覚えて周囲を見渡す。
壁には相変わらずよくわからない機械類が取り付けられ、明かりであろうランプが不思議な光を放っている。
ちなみにこれらの機械類はオブジェクト扱いで持っていくことができなかった。
何度かこのダンジョンに挑戦してる中で「壁の機械を持っていけたらパーツ作成に使えるんじゃね?」と思った私は、剣を使って壁の機械を剥がそうとしたり壊そうとしたわけだ。
結果は言わずもがな失敗で、まあそうだよねと納得した。
でも、この部屋にはなにかある。ボス部屋に隠し部屋が存在していた、なんてRPGではあるあるだし、もしかしたらもしかしちゃう?
んー、違和感……違和感……どこがおかしい? 今までと明らかに違う箇所があるはず……。
『……なんで気づかなかったんだろう?』
私はダンジョンの出口とは反対側に歩きだす。
ボス部屋の一番奥の壁際、そこに明らかにボスを倒す前には存在しなかった扉がポン、と置いてあったからだ。
見たところ、なんの変哲もない木製の扉なんだけど……。
『明らかに周囲と浮いてるよね、これ』
周りが機械に溢れた近未来チックな内装なのに、そこにぽつねんと置かれているのは木製の扉。グラフィック置き忘れたのかな? それともバグ?
んー、今日サービス開始だから、バグだとしてもおかしくはないけど……でも、VRMMOのバグって致命的じゃない? とりあえず運営にメールだしとこっと。
それはそれとして扉に近づくと、ドアノブになにかメモのようなものが貼ってあるのが見えた。なんて書いてあるのかな?
『たった一人でこの試練に打ち勝った者に、この部屋の中身の全てを譲渡する。我らの希望、どうか受け取って欲しい。我らが作り上げた魔機人の未来に幸があらんことを』
ふむ。つまりこれはバグでもなんでもなく、このダンジョンをソロでクリアした私に対するご褒美? この書き方からするにこの部屋の主は魔機人の製作者? 幸があらんことを……って私、錆び朽ちてたけどなぁ。
あ、運営から返事きた。バグではなく仕様です、おめでとうございます……よし、なら入っても大丈夫だね!
ドアノブを軽く捻ると、キィという音を立てて扉が開く。ちょっと雰囲気あるなぁ。周りとのギャップがすごいけど……ええい、女は度胸! いざ突入!
〈〈刀剣〉スキルのレベルが上がりました。〉
〈《刀剣》スキルのレベルが成長限界に到達しました〉
〈一部スキルの派生先が解放されました〉
〈パーツ[錆び朽ちた]シリーズに情報が追加されました〉
〈武装[錆び朽ちたソード][錆び朽ちたブレード]に情報が追加されました〉
〈エクストラアーツ【スパイラル・ブレイカー】を習得しました〉
しばらく座りこんでHPとENを回復させた私は、戦闘後のログを確認していた。
それによると、どうやらあのボスロボットの名前は【アーティファクト・ソードマン】というらしい。《刀剣》スキルのアーツを使用するその姿は、正しくソードマンだね。
さらに私の《刀剣》スキルがカンスト、つまりはレベル30になったようだ。《刀剣》スキルの派生先のスキルも開放された。これは後で確認かな。
パーツに情報追加……これも要確認ね。とりあえず後回しで。
それにしても、エクストラアーツ? 普通のアーツとは違うのかな。エクストラアーツは、兄さんからも聞いたことがない。
とりあえず詳細を確認してみよう。エクストラアーツについてのヘルプも追加されてるね。
【スパイラル・ブレイカー】
エクストラアーツ
自身に回転を加えて空中から突撃する。【スパイラル・アタック】の空中版アーツであるが、その威力は全くの別物と言っていい。
※エクストラアーツとは
プレイヤーの行動によって解放されることがある特殊なアーツ。エクストラアーツはアーツが使えない種族でも解放することが可能で、使用することも出来る。
なるほど。元々【スパイラル・アタック】っていうアーツがあって、それを空中で行うアーツが【スパイラル・ブレイカー】ってことか。
空中からの突撃だから地上版より威力も高い。 空中に飛ぶ手段と空中で回転する手段、その上相手に突撃できる手段がないと覚えられないアーツなのかな?
で、エクストラアーツは魔機人でも使えるアーツと。うん、これは素直に嬉しいね。
んー、今の私だと一発打つのが限界だろうなぁ。スラスターとバーニアに使うENが洒落にならない。
それでも、私が使える唯一のアーツだ。顔がニヤけてきちゃう。ニヤける顔できないけどね!
それで、パーツと武装になにか情報が追加されたんだっけ? 前は【武装収納】だったけど、今回はなんだろう?
[パーツ・頭部]錆び朽ちた頭部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・胴部]錆び朽ちた胴部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・腕部]錆び朽ちた腕部・右(左) レア度:EX
STR+1 VIT+1 MIND-3
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・腰部]錆び朽ちた腰部 レア度:EX
VIT+1 MIND-3 AGI-2
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[パーツ・脚部]錆び朽ちた脚部・右(左) レア度:EX
VIT+1 MIND-3 AGI-2
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[武装・剣]錆び朽ちたソード
ATK+1
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
[武装・刀]錆び朽ちたブレード
ATK+1
魔力伝導率:F-
【譲渡不可】【売買不可】【破壊不可】
新しく増えてるのは魔力伝導率……かな。軒並みF-だけど、つまりこれってENの消費効率ってことだよね? 伝導率が高ければ高いほど、少ない消費でENが使えるって理解でいいかな。
スラスターとかバーニアとかほんの少し動かしただけですごいEN使ったもんなぁ。
F-ってのが最低ランクだとして、最高ランクはどこまで高いんだろう? S? SS? 少なくともA以上だよね。
何にせよ、新しいパーツなんかを作る際には魔力伝導率にも注目しておきますか。まだ作れないけどね!
さて、お次はドロップアイテムだ。ロボット系だし、《パーツクリエイト》に使えるような素材が出てくれればいいけど。《鑑定》さん頼むよ!
[素材・アイテム]壊れた装甲板 レア度:R
[素材・アイテム]壊れたフレーム レア度:R
これは……素材アイテム! しかも見た目からして魔機人のパーツの素材としてピッタリじゃない!
早速、《パーツクリエイト》起動!
しかし、この素材アイテムたちも《パーツクリエイト》の素材庫には入らなかった。お決まりの素材の条件を満たしていません、だね。
んー、なにがいけないんだろう。
条件? でもソードマンはちゃんとしたロボットだ。少なくともさっきまでは動いてたわけだからね。
それなのに弾かれる? 壊れてるのがいけないのかな。
なにか見落としてる気がするんだよね。んーなんだろう。
……もしかして、素材庫に入れるにはなにか下準備みたいなのをしないといけないとか? ほら、料理に下ごしらえが必要なみたいに。
だとしたら、なにをしたら下ごしらえになるのかな。魔機人は魔力を動力源に動くロボット。で、さっき魔力伝導率っていう新しい情報が追加されたわけだね。
……よし、魔力ならぬENを通してみよう。このENだって元を正せば魔力だし。魔機人のパーツの素材にするために、魔力に親和性のある素材じゃないといけないってのも頷ける話ね。
私はインベントリから壊れた装甲板を取り出して、スラスターにENを送った時のようにエネルギーの流れを感じとる。そして、ゆっくりと、満遍なく染み渡るように装甲板へENを注ぎ込んでいく。
……これ、結構EN持ってかれるね? まぁ注ぎ込むんだけども。
さて、《鑑定》さんお願いします!
[素材・アイテム]魔力装甲板・低 レア度:R
『キタ――――――ッ!』
やりました! やってやりましたよ私は! 素材に魔力を注げばそれが魔力の籠った素材に変質するわけね!
ちなみにこっちがフレームに魔力を通したアイテムの方だ。
[素材・アイテム]魔力フレーム・低 レア度:R
よしよし。低とはいえ、やっと《パーツクリエイト》で使えそうな素材に出会えたぞう!
これは早速、手持ちの素材に魔力を込めなければ!
……と思ったのはいいんだけど、壊れた装甲板とフレームを魔力のこもったアイテムに変えるだけで最大ENの8割を使ってしまった。
んー、これはかなりENを食う作業だね。ガレージに戻ってゆっくりとやった方がよさそうだ。
多分だけど、魔力伝導率が低いからこんなにENを消費するってことだよね。つまり、魔力の籠った素材を量産するのに、魔力伝導率の高いパーツを作成するのは急務だ。
私はインベントリに装甲板とフレームをしまい、元来た道を戻ろうとして、止まる。その視線は、壊れたままのソードマンの残骸に向いていた。
んー、おかしい。モンスターは倒したら光の粒子になって消えてしまうはず。それなのに、この場にそのまま残ってる?
恐る恐る近づき、残骸に向かって《鑑定》する。
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(上) レア度:SR
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(下) レア度:SR
[素材・アイテム]アーティファクトの残骸(剣) レア度:SR
あっぶなーーー! 鑑定しておいて良かった!
しかしまた、とんでもないものだね。これ自体が魔機人のパーツとしてとても優秀なものじゃないですか。
ソロでダンジョンボスを倒したとはいえ、こんなものを貰っていいのかな? 貰うよ? 私、貰えるものはなんでも貰っちゃう主義だよ?
見た目は錆び付いてるように見えるけど、あくまでも表面が錆び付いているだけで、素材として使う部分には特に問題はさそうだ。
他に何も起こらなさそうなので私はアーティファクトの残骸たちをインベントリへしまい込む。うぇへへへ、涎が止まりませんなぁ。
『さて、帰って《パーツクリエイト》でも……うん?』
ほくほく顔(ロボットだから表情はないけど)でボス部屋を後にしようとした私だけど、ふと違和感を覚えて周囲を見渡す。
壁には相変わらずよくわからない機械類が取り付けられ、明かりであろうランプが不思議な光を放っている。
ちなみにこれらの機械類はオブジェクト扱いで持っていくことができなかった。
何度かこのダンジョンに挑戦してる中で「壁の機械を持っていけたらパーツ作成に使えるんじゃね?」と思った私は、剣を使って壁の機械を剥がそうとしたり壊そうとしたわけだ。
結果は言わずもがな失敗で、まあそうだよねと納得した。
でも、この部屋にはなにかある。ボス部屋に隠し部屋が存在していた、なんてRPGではあるあるだし、もしかしたらもしかしちゃう?
んー、違和感……違和感……どこがおかしい? 今までと明らかに違う箇所があるはず……。
『……なんで気づかなかったんだろう?』
私はダンジョンの出口とは反対側に歩きだす。
ボス部屋の一番奥の壁際、そこに明らかにボスを倒す前には存在しなかった扉がポン、と置いてあったからだ。
見たところ、なんの変哲もない木製の扉なんだけど……。
『明らかに周囲と浮いてるよね、これ』
周りが機械に溢れた近未来チックな内装なのに、そこにぽつねんと置かれているのは木製の扉。グラフィック置き忘れたのかな? それともバグ?
んー、今日サービス開始だから、バグだとしてもおかしくはないけど……でも、VRMMOのバグって致命的じゃない? とりあえず運営にメールだしとこっと。
それはそれとして扉に近づくと、ドアノブになにかメモのようなものが貼ってあるのが見えた。なんて書いてあるのかな?
『たった一人でこの試練に打ち勝った者に、この部屋の中身の全てを譲渡する。我らの希望、どうか受け取って欲しい。我らが作り上げた魔機人の未来に幸があらんことを』
ふむ。つまりこれはバグでもなんでもなく、このダンジョンをソロでクリアした私に対するご褒美? この書き方からするにこの部屋の主は魔機人の製作者? 幸があらんことを……って私、錆び朽ちてたけどなぁ。
あ、運営から返事きた。バグではなく仕様です、おめでとうございます……よし、なら入っても大丈夫だね!
ドアノブを軽く捻ると、キィという音を立てて扉が開く。ちょっと雰囲気あるなぁ。周りとのギャップがすごいけど……ええい、女は度胸! いざ突入!
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